専門コラム 第15話 銀行とのやり取り
銀行とのやり取り
ここ数年というわけではなく、もっと長いスパンで見た時、昔に比べて住宅営業が直接銀行とのやり取りを進めていくことは少なくなりました。
これは個人情報を保護する通念が、法的にも社会意識的にも広まったことが大きいでしょう。
そのことで住宅営業の仕事の範囲は狭まったように感じますが、銀行とのやり取りが減った分、他に意識を向けられる時間が増えたことで、営業活動は良い意味で楽になったとも言えます。
またお客様にとっても、年収や職域情報といった個人情報を、営業マンから無理に詮索されずにすみます。このことはお客様にとって、好ましいことではないでしょうか。
ただ、銀行とのやり取りや個人情報の取り扱いが厳しくなったからと言って、顧客の資金計画に営業マンが決して無関心であってはなりません。
銀行とのやり取りの変化と顧客の個人情報について
新しいタイプの住宅ローン破綻も出てきている!
例えば好景気とされる現在も、住宅ローンが払えなくなる家庭は依然として増えているようです。
任意売却という新たな債務整理が出てきたことで、住宅ローン破綻の実態はわかりにくくなっていると言われています。
ただ総じて見た場合、ローン破綻は増加傾向にあります。
住宅ローン破綻の原因には、従来型の「転職による収入減」や「教育費の増加」も相変わらず数えられるようです。ただそれに加えて、
- 働き方改革に伴う残業代カット
- 親族の介護
といった、新しいタイプの破綻要因が出てきています。
人手不足と騒がれ、すでに景気は回復したかのようにメディアは伝えています。
ところが住宅ローン破綻の実態は、前政権時代と大して差はないのだとも言えます。
特に残業代カットの傾向は今後も進むでしょう。
残業代をアテに資金計画を組んだ家は要注意です。
年収の中身によって借りられる額が変わる
年収や職業情報の他にも、私たち業界の人間ができれば取得したいと考える顧客の個人情報には、
- 年齢・家族構成
- 自己資金(贈与資金を含む)
- 住所・電話番号(メールアドレス)
などがあります。
そもそも何故、私たちは顧客の個人情報を把握しておきたいのか?
それは詰まるところ、営業活動を効率よく運ぶためです。
まずその人の年収やどこに勤務しているかを知ることで、住宅計画に掛けられる予算が分かります。
これにより顧客の個人情報を把握することは、無駄な営業労力を掛けないことにもなります。
しかしながら、借り入れが可能な収入があっても、それが残業代に依存した収入だとしたら、いつ破綻するかは分かりません。
他にもこれに似ているものに営業コミッションの比率が高い場合も、一般的に年収は低く判断されます。
また住宅ローンの返済を家族で合算して負担する場合、金融機関によって、全額合算を認めないケースがあります。
ローン破綻の原因が残業代カットや親族の病気や介護まで広がっている今、そうせざるを得ないことが現実味を帯びてきます。
もちろん銀行によって判断は異なると考えられますが、年収の中身によっては、借りられる額が少なく判断される場合があること、またその比率によっては、借入額を減らさなければ計画できないことは、覚えておく必要がありそうです。
住宅営業は職業で人を判断するという現実
いっぽう顧客の個人情報のもう一つの考え方として、ある程度、職業情報が掴めていれば、個人情報を慌てて聞き出さなくて良いと判断する場合もあります。
この「職業情報が掴めていれば」とは、その方の勤め先が例えば有名企業の社員であるとか、公務員といったケースです。
軽率な判断はできませんが、当該者が上場企業の社員や公務員など、一般的に銀行からの信用度が高い職種の方だと判断できれば、顧客の個人情報を無理に追わなくても大丈夫だろうという判断です。
例えば夫婦共公務員という恵まれた世帯では、貯蓄額も年収も十分あるといったことや、病気や出産で休職しても復帰できることが確実です。
住宅ローンという返済が長期にわたる融資商品を考えたとき、銀行の融資担当者はもとより、私たち住宅や不動産の営業も、職業で人を判断するということを心に留めておきましょう。