専門コラム 第14話 総予算の調整
総予算の調整
要望のヒアリング前後など、プランの打ち合わせを始める際、お客様と取り決めるのが総予算の確認、設定です。
総予算の設定では、諸費用(住宅ローンの借り入れや請負契約・登記伴う費用)と建物部分に掛かる費用を算出し、本計画に掛かる総費用を計算します。
つまり総費用とは、主に固定費用として掛かる諸費用群と、要望によって変わる住宅の建築費に大別されるとも言えます。
このように分けることで、総費用をコントロール出来る大半が、住宅の建築費であることが自ずと理解できます。
そして後に続くプランの打ち合わせは、最初にお客様と取り決めた「総予算との擦り合わせ」なのだと分かるでしょう。
ここでは総予算を調整できる、プラン(間取り)の組み方の基本を解説してみます。
総予算を調整できるプラン(間取り)の組み方とは?
総予算は最初に設定した範囲内で収めるべき
総予算についてはこのコラムでも度々触れているとおり、住宅の打ち合わせの中でも大事なテーマの一つです。
何故なら、予算感覚を欠いた設計パートナーとコンビを組むと、営業は受注できたであろうお客様を、みすみす逃してしまいかねないからです。
これは営業がプランを作る場合も同じで、良いプランとは「難しく手の込んだ設計」ではなく、過剰提案に陥らない「地に足の付いた予算通りのプラン」書けてこそ、優秀なプランナーなのです。
そこでプラン作成のエクササイズをする機会があれば、設定予算を必ず設けて訓練することが大事です。
とはいえ、一度お客様とプラン打ち合わせを始めると、すぐ300万から500万ぐらいオーバーしてしまいます。
またお客様も、最初に見せた“ゆったりした提案”に、どうしても引っ張られてしまいます。
それを防ぐ意味でも、プラン打ち合わせは「最初に決めた予算設定」を守ることです。
このことは、たとえ新人であっても覚えておきましょう。
予算オーバーしたなら、まず建物の坪数を抑える
仮に総予算をオーバーしたり、あるいはオーバープランになりそうな時は、そのまま放置せず、建物の坪数をあらためて見直します。
他にもオーバー分を下げる方法に、仕様を落とすことも考えられます。
ただし床面積の縮小こそ、予算コントロールの順番です。
42坪が38坪までプランを縮小すれば、単純計算で240万ほど削れます。
まず手を入れるのはここからです。
幸にして(?)以前はゆったりとした大きなプランが好まれることが多かったのですが、時代も変わり今では地方も、都市部並みに床面積の小さなプランが人気です。
また最近の住宅は、一年を通じ、比較的温度差が少なく過ごせます。
そのため寝具はもちろんのこと、衣類の種類や数も圧倒的に減らせることをすでにお気づきの方もいるはずです。
つまり細かくプランニングしていけば、収納量も少なくすることが十分可能なのです。
そしてどちらの提案がより親切かは、推して知るべしです。
シンプルなキューブ型プランが好まれるのは何故?
これも本コラムで強調していることの一つですが、総予算をコントロールするため、プランは出来るだけシンプルなキューブ型を目指すということ。
間取りの傾向は、以前よりシンプルなキューブ型が好まれているということもありますが、キューブ型プランはコストダウンにも貢献するばかりか、構造的にも理にかなっていることは、業界人なら周知のことと思います。
たまにキューブ型プランでは、フォルム的に陰影に欠けると指摘する方もいます。
ただキューブ型プランは、屋根の屁を標準より深くすることで、建物に陰影を付加できます。
もちろん屋根の屁を深く取れば金額は掛かりますが、壁に凹凸を設けるより却って安上がりです。
しかも屋根の庇を深く取れば、夏場の日射遮蔽にも貢献します。
屋根の庇を深く取ることは、豪雪地域を除く日本のあらゆる地域に、もっと採用されるべき設計手法のひとつなのです。
これまでの住宅は、無意識のうちに、子に土地や建物を引き継ぐことを前提とし、間取りが考えられてきました。しかしこれからは子どもが巣立ち、夫婦二人が老後豊に住める家を見越し、間取りを考えた方が良いのです。