専門コラム 第173話 新時代の「心が豊かになるビジネス」とは?
先回に引き続き、ワクワク系マーケティング実践会を20年来主宰する、小坂裕司氏について話そうと思います。
それにしても、なぜいま小坂裕司氏なのでしょう。
ひとつにニュースレターについて、彼ほど分かりやすく伝える人はいないと思うから。
特に私のような古い世代の読者はそう思うでしょう。
ただ久しぶりに彼の動画に触れてみたところ、印象が違っていました。
彼はニュースレターだけではなく、いまの時代に必要な商売に対する知見を、惜しげもなく表出できる人。
そんなインパクトを再発見できたといいましょうか。
そして実に 8 年ぶりに出版した『「顧客消滅」時代のマーケティング〜ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方』(PHPビジネス新書 2021/2/26)という書籍も、駆け足ですが読ませていただきました。
そんななか、新刊についてはまた別の機会に触れるとして、本記事では新たな小坂氏のキーワードとして出てくる「選別消費」、「心が豊かになるビジネス」についてみていきたいと思います。
本コラムから幾らか内容は逸脱しそうですが、住宅営業にも大事な情報がいっぱい詰まっています。
参考にしていただければ嬉しく思います。
新時代の「心が豊かになるビジネス」とは?
1 コロナだろうとなかろうと、誰の時間も減っていない!
小坂氏の動画に久しぶりに触れて、真っ先に飛び込んできたのは「誰の時間も減っていない」という提言。
これは今年で 2 年目を迎える、新型コロナで変わり果てようとする日本経済に対し、彼が放った言葉です。
確か zoom を通して実践会メンバーに語ったものが、「長引くコロナ時代、今、あなたの商売で一番、大切なこと」というタイトルで、一部 YouTube でも配信されています。
そして無くなったように見える時間を、どうやって自分のお店で使っていただくかを考える。
これは「ポジティブ論」や「根性論」等で言っているわけではありません。
彼の実践会では——何ならコロナ以前から——新しい時代のビジネスのカタチとして、ずっとテーマとなっていること——特にここ5年ぐらいは、ものすごく注力しているようです。
そしてこうも言っています。
コロナがあろうがなかろうが、世の中全体が新しい時代に向かって変化している。
つまり、こうした変化というのは、たまたまコロナによって前倒しされたに過ぎない。
確かに新しい息吹は感じます。
都内に別注のイージーパンツやショートパンツを、完全な手作りにより製作・販売している 5 坪ほどのお店があります——このお店は実際に店主がミシンを踏む様子も見学できます。
もちろんスタッフは彼ひとりで、商品ラインナップも小さなシングルハンガーに数点掛かっているだけです。
これなども、これまでにあまりなかった「ビジネスのカタチ」でしょう。
そんな類いを挙げたら、恐らく都内あたりではキリがないのでは。
小坂氏はこうした新しい時代の変化を、実践会のメンバーに伝えています。
同様に、実践会員が経営する新大阪の「バーキース」は、昨年はおつまみの通販やテイクアウトに始まり、次はアクセサリーの販売にも乗り出すようです。
確かに数字的に見たらまだ厳しいかもしれません。
しかし、そのトライ・アンド・エラーから逃げたら元の木阿弥です。
きっとこのバーも、新しいビジネスの形態に合わせて変化していく過程なのでしょう。
ただ、世の中全体がコロナに関係なく、新しい時代に向かって変化していることだけは間違いないようです。
もちろんですが、ここから後戻りはできません。
2 「選別消費」とは顧客からどう選ばれるかだけ
また新しい変化と同時に、「選別消費」という考えも無視できません。
「選別消費」とは
“自分がコスト(お金、時間、労力)をかけるべきもの、使うべき先をシビアに選択・選別する消費”
のこと。
『「顧客消滅」時代のマーケティング』より抜粋
一般に増税や災害時に強まるのが「選別消費」です。
今回はコロナによって、一層「選別消費」の意識が高まりました。
そしてコロナ以前にも増して、アマゾンなどの EC サイトが展開する通販が相変わらず好調です。
しかしコロナ時代の物販店が、みな EC サイトなどの通販に集約されるわけではありません。
またそこばかりが、好調だということもありません。
新潟の片田舎に「エスマート」という小さなスーパーマーケットがあります。
店舗面積は45坪と言いますから、通常の「道の駅」より、さらに小さな売り場です。
ただ「エスマート」ファンは、ここを単にスーパーとしては捉えておらず、言わば子どもたちにとってのディズニーランドのように、地元の人から愛されています。
実は「エスマート」も、ワクワク系マーケティング実践会で成功しているお店。
2020 年、初めての緊急事態宣言解除後、多くの「エスマート」ファンが押し寄せ、お店を賑わせました。
もちろん近くには、ここより品数も多く買い物に便利な大型スーパーが存在します。
それでも「エスマート」の顧客は、この小さなスーパーを大型スーパーと区分け——つまり「選別消費」——して、買い物を楽しんでいます。
お陰でコロナ禍でも、売上は好調に推移しています。
言ってしまうと「選別消費」とは、どう顧客から選ばれるお店となるかが鍵のようです。
代表の鈴木氏も「日々やることは『たのしい』かどうかを軸にした改善」と言っています。
詰まるところ「選別消費」とは、このコラムでも続けている「選ばれる営業」と、より近いニュアンスを感じます。
3 「心が豊かになるビジネス」とは「不要不急」と真逆のビジネス
小坂氏の実践会に限らず、いま各方面で言われていることが、「新しい時代はこれまでとは違い、より精神性を大事にする時代になる」と言うこと。
ビジネスや商売も同じで、まさに「心が豊かになるビジネス」の到来を予感させます。
「コロナがあろうがなかろうが、世の中全体が新しい時代に向かって変化している。つまり、こうした変化というのは、たまたまコロナによって前倒しされたに過ぎない」
日本では 1965 年11月から 1970 年 7 月まで続いた好景気を「いざなぎ景気」と言います。
時代はまさに1964 東京オリンピック明けであり、この時期は日本の高度成長期にもあたります。
同じように2020東京オリンピック・パラリンピック。
実際には 2021 年に延期されましたが、その翌年の 2022 年から、本格的に新しい時代に入ると言われています。
しかしながら日本経済は、1964 の時と同じ好景気ではなく、時代の変化に伴う痛みを経験することになりそうです。
ただこうした変化を事前に直感していたビジネスオーナーは、コロナ禍でも売り上げを落とさず堅調に自分のビジネスを進めています。
もちろんこのコラムで紹介した、個人経営のバーや地方資本の小さなスーパー、また別注だけをお店で縫製する都会の小さなパンツショップ、これらはいずれも「心が豊かになるビジネス」を目指し、小さくても確実な成功の種を蒔いています。
このような新しい展開に、心踊らない人がいるでしょうか?
また「心が豊かになるビジネス」とは、世界的に否定される側の「不要不急」のビジネスだということを忘れてはいけません。
同じ視点で新時代の建築営業や工務店経営を考えた時、これまでとは違う風景が心によぎります。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。