専門コラム 第172話 手付かずの顧客リストが私たちに教えること
先回、記事の後半で、リストビジネスの重要性について触れています。
それと同時に、久々に小坂裕司氏のことを紹介しました。
そのついでと言っては大変失礼ですが、小坂氏の YouTube チャンネルを拝見し、彼が語るリストビジネスの話題にとても惹きつけられました。
(そして図らずも、彼の新刊も一緒に購入してしまいました……)
ただ、氏の新刊本については次回に譲るとして、今回は私たちが扱うリスト(=顧客名簿)について書いてみることにします。
住宅営業なら、誰もが無視できないリストビジネス。
小坂氏の動画記事を絡めながら、おもに顧客リストの「意外な見落とし」についてまとめてみます。
(結論をお急ぎの方は、二つ目のチャプターから読んでいただくと良いでしょう)
手付かずの顧客リストが私たちに教えること
1 もしあなたが「手付かずのリスト」を引き継ぐことになったら?
ある地方都市に、とある小さな建設会社があります。
この会社は自治体の公共工事と並行して、個人の注文住宅を年に2、3棟程度——もっと少ない年度もあるようです——細々と受注しています。
こんな数字でも住宅事業が続けられるのは、メインの公共工事が相当安定しているからです。
その代わりここで働く大工など職人さんは、みなフリーランス。
要は外注です。
だからこのようの事業が成り立っているのかもしれません。
またこの会社では、住宅部門の営業を常時募集しています。
営業があまり根付かないのは、巷でよく聞く「社長が数字に厳しいから」ではありません。
住宅事業が続けられるだけの体制が、この会社に揃っていないからです。
そのため、いつも営業から去っていきます。
言い方が難しいのですが、請負契約書や約款の類もこの会社には揃っていません。
検査や保証体制についても同じです。
しかも必ずいておかしくない現場監督も、この建設会社にはいません。
確認申請を通すだけの設計業務も全て外注です。
これでは、新人の営業マンではとても務まりません。
ただ、メインの話はここではなく、この会社が管理する顧客リストです。
この会社は不幸なことに、営業がすぐ辞めていく会社です。
あるとき、残った営業がついに最後の一人となりました。
そこで専務の奥さんが、よもや取り出したのが、この会社にしては夥しい数の顧客名簿です。
恐らくこの専務は、残った営業が辞めないでいてくれると願って、この顧客リストを営業に使ってもらおうとしたのかもしれません。
しかし会社のリストを一任された彼も、たまったものではありません。
というのも、そのリストは最低でも 1 年以上、なかには数年も手付かずのものが、相当数含まれているからです。
専務には悪いですが、渡した顧客リストは、ほとんどが“死にリスト”です。
営業がどんなに卯建(うだつ)が上がらなくても、リストがどのようなものか、見れば想像がつきます。
2 お客さまは自然にゼロになるという事実
冗談のようですが、本当の話です。
ただ私たち営業も、お客さんやリストの特性を知らないと、似たような間違いを起こすことは十分考えられます。
例えば、商品に目立った違いがなく、購入した商品も概ね満足していても、販売側が何ら手を打たなければ、お客さまは自然にゼロになるという事実。
これをはじめて耳にする営業は、意外に多いのではないでしょうか?
この話は、特にマーケティングの世界では、ほぼ常識としてよく引っ張り出されます。
小坂氏の動画でも、同じことが言われています。
ちなみに動画では「通販だと何もせずお客さまが消えるのが、大体半年」のようです。
これが本当なら、先ほどの古いリストは、ほとんどが使い物になりません。
目敏い営業が古いリストの引き継ぎをあまり喜ばないのは、リストが使い物にならないことを、直感的に分かっているから。
もちろんプロの工務店や営業も、リストにも寿命があることを無意識に察知しています。
だから新しいお客さまに出会ったら、初期対応に何をどうするのか、自分なりに決めているのです。
そのため取得動機も不明な他人の名簿を、無闇に引き継がないのです。
もちろん名簿数は多いほうが、いいに決まっています。
しかし幾ら多くても、そして期間が開くほど、一度死んだリストを生き返らせることは困難になりなす。
3 顧客リストで大事なのは“生きているか死んでいるか”
リストの重要性については、当然分かっているはず。
ただ肝心なことは、つい忘れてしまうもの。
それが、リストにも賞味期限があり、お客さまは自然にゼロになるという事実。
これに知らないとどうなるか?
例えば、半年も放置したリストにニュースレターを出すという失態さえ演じてしまいます。
小坂氏が主催するワクワク系マーケティング実践会でも、二十数年来、ニュースレターの効力を伝えています。
しかしニュースレターを送っても、何故か効果に差が出るのは、リストが新鮮かどうかです。
顧客リストが死んでいれば、どんなにユニークなニュースレターを送ったところで、効果どころか、反応も出ないでしょう。
だからリストを管理したら、台帳が“生きているか死んでいるか”を確認することです。
特に営業は、新規客の対応に追われ、半年もほったらかしにしていたリストもあるはず。
なかには数年もの間、何も手を打っていないリストがあったりして?
こうなると、先の専務のことを笑えなくなります。
あなたは、半年も手付かずのリストに、ニュースレターを出してはいませんか?
そんな間違いを起こしていないか、自分のリストをチェックしてみましょう。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。