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専門コラム 第218話 建築業界が目指さなくてはいけないものとは?

    

前回の記事では詐欺、また詐欺の常套手段という、何やら物騒な言葉が飛び出してきました。
書いている本人も、少し引いてしまうような内容だったと反省しています。

では、こうしたことに繋がらないよう、我々建築業界が目指さなくてはいけないものは何なのでしょう。

勿体ぶらず答えを言いうと、それは小まめなアフターケアだと筆者は考えています。

どんなにお粗末な工事を施した場合でも、アフターが小まめな会社に施主さまは、それほど悪い評判はたてないものです。
逆に概ね満足いく工事だったのに、肝心のアフターが予定期日を過ぎても進まなければ、お客さまは内心「ああ、騙された」と呆れることでしょう。

このことは、自分が逆の立場に立てば自ずと分かります。

大多数の施主は、業界の事情まで把握していません。
なのにこの業界の人たちは、相手の感情の動きにどういう訳か疎過ぎる。他の業界を経験した人からみたら、そういう方が多いように思います。

ではどうすれば、小まめなアフタースケジュールを組めるのでしょうか?

  

建築業界が目指さなくてはいけないものとは?

1 注文住宅は難しい買い物

 

その話に進む前に、ひとつ大事な話をせてください(急ぐ方は、このチャプターを飛ばし第二項から読み進めてください)。

それは、注文住宅は難しい買い物だということです。

私たちが扱う注文住宅は、現物を確認しないで購入を決めます。しかも家の値段は、個人で買うモノの中でもっとも高額な部類に入ります。こういう買い物は、住宅以外にあまり見かけません。

さらに言うと、契約が済んでも、使うものが確定していなければ、物を決めなければいけません。そして設置する内外装やキッチン等に妥協できない場合は、標準品以外の物を選択することになります。そしてそれはたいていの場合、値段が高くなります。

そのことを喜ぶ会社、営業なら問題ないでしょうが、一般の人からしたら、このような買い物を普通の買い物と同等なものと納得されるでしょうか?

筆者にはどうもそのようには思えません。

そして選べるモノの範囲は多岐に亘ります。

それこそ高いものは外壁材、比較的安価なもでいうとクロスの種類、
コンセントの数というもにも関係します。
特に会社によっては必要な標準のコンセント数やスイッチの数(またブースターの設置など)が少な過ぎるため、必要十分な数に設置しようとすると、これも予定外に金額が上がります。

当然このことも「はじめに言っていたのと違う」、「騙された」と言った声に繋がると思うのです。

これを避けるため、筆者は現役の頃、前もって必要な数を上乗せしておく、水まわりの設備のグレードアップを仕込んでおくといった根回しをした上で、工事請負契約にのぞんでいました。

まともな神経をもつの営業マンなら、特別な事情がなければ、工事請負契約後に新たな追加工事が発生することを望んでいないでしょう。それなのに、未だに請負契約後に追加工事を少しでも多く取ることを、良しとするムードがこの業界にはあります。

そんな中、最近ではモデルハウスの展示場仕様と標準仕様との差が狭まりつつあるようで、これは喜ばしい傾向だと思います。

しかしいずれにせよ、住宅業界は契約されたお客様から誤解を招きやすいと言う点で、他業界より大きく遅れている。このことは否定できないと思うのですが、いかがでしょうか。

   

2 小まめなアフターをスムーズに行う方法とは?

  

話しを戻しましょう。

ではどうすれば、小まめなアフターが行えるかですが、
たいていのアフターは、担当者に任せっきりになっていませんか。

これをたとえば、工務店の全員がアフターの担当者としてランダムに訪問するようにすれば、却ってスムーズなスケジュールが組めると思うのです。この仕組みをもう 15 年も(今年で 17 年目を迎えるそうです)やっている会社があります。それは鹿児島県のベガハウスです。

ベガハウスはこのコラムでも有名な工務店として紹介していますし、皆さんの方がよく知っている方も多いのではと思います。そしてベガハウスでは取締役から新人まで、OB客のアフター担当者として持ち回りで点検に当たるようです。

一般の工務店では、新人さんといえば、自分が入社してからのお客さま宅は訪問することはあっても、築 15 年の古いお客さまの家にはそうそう出向くことはないと思います。しかしベガハウスは違います。そうした古いお客さまの家にも、今年入ったばかりの新人にも行かせます。

とういうことで、入ったばかりの新人も、築 15 年ベテランOB客と仲良くなれることがあるそうです。このアフターの仕組みをベガハウスでは「ベガイク」と言います。

また工事担当者でなくても、簡単な工具を使った作業が誰でもできるように教育しているのでしょう。電ドラを使ったビス打ちや、植栽の剪定作業も自分たちでやってしまうみたいです。

こうすることで、8 ヶ月周期で各お客さま宅の訪問や点検が終了するようです。
実に素晴らしい仕組みですが、これに似たことが、皆さんの工務店でも出来ることではないでしょうか。

   

3 おちおちしていると今年も一年が終わってしまう!

 

なお、ベガハウスでは実践しているアフターの仕組み「ベガイク」ですが、お客さまの暮らし方を知るという面でもいろいろ学ぶことがあるようです。それは、お客さまの「暮らし方・住まい方」の変化を学べる、垣間見られるという利点です。

この辺のことを知りたい方は、『暮らしを建てる ベガハウスの家づくり』(建築資料研究社 2020/9/30)を読んでみると、「ベガイク」が単なるアフターの仕組みではないことがわかると思います。

筆者は営業云々の前に、今年あらためて自分たちの売る商品のことを見直すべきと、数記事ほど前のコラムで書いています。そして保証体制や自社のアフターの仕組みも万全か見直してほしいと書きました。

それは全て、あなたやあなたが所属している会社を信じて契約したお客さまを裏切らないようにするためです。

この記事が皆さんの目に届く時期まではわかりませんが、のんびり構えていると今年も一年棒に振ることになるでしょう。 特に工務店経営について指揮を取られている方は、営業が安心して毎日の活動に取り組めるよう、体制づくりを強化して欲しいと願っています。

 

 

  

  

 

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。