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専門コラム 第320話 天照大神が命じた「国を知らせ」と教育コンテンツの関係

 

作家で政治評論家の竹田恒泰氏は、時折見せる「歯に衣着せぬ」物言いで、賛否を呼ぶこともありますが、根はかなり真っ当な意見の持ち主とお見かけします。

そんな竹田氏が講師として招かれ、自民党主催の中央政治大学院が行った——学院長は元防衛大臣の中谷元氏——【第2期まなびと夜間塾開講講座】(2021.2.19)での第一回目の講説(テーマ:「日本を楽しく学ぼう 公家の政権700年」)が、結構心に残りました。

筆者はこれをYouTube動画で偶然拝見したのですが、この一部を皆さんと共有したいと思います。

ちょうどその頃、「教育」また「知る」ことについて継続中のコラムを、ひと段落つけたいと考えていた所でした。そして竹田氏の講説は、それにピタリとはまる内容だったのです。 動画で見ていただくのが早いのですが、しばし駄文を弄するかもしれません。しばらくお付き合いくだされば幸いです。

  

天照大神が命じた「国を知らせ」と教育コンテンツの関係

憲法草案メンバーが行き着いた「知らす」という文言

竹田恒泰氏が中央政治大学院で行った講義の内容は、端的にみると、日本国は天皇を「知らす」国であり、これにより、国民は天皇を見ると、そこに日本国の象徴を感じ取ると言うことだと理解します。

そして、今回その講義で注目したワードが「知らす」という言葉です。

実は「知らす」という言葉は、大日本帝国憲法の草案をした明治期にあっても、あまり使われない言い方でした。

では、どうして「知らす」という言葉を、わざわざ用いたのでしょう。

時代を明治政府の憲法草案時にまで遡ると、当時どの国の憲法も、第一条にその国で大事なことを記載するのが世界の常識です。そして、日本の場合は、国の象徴である天皇の役割について、誰もが理解できる内容、また文言を選びたかったようです。

このとき伊藤博文を中心に、選ばれた憲法草案メンバーには、井上毅(いのうえこわし)、伊東巳代治、金子堅太郎らがいました。そしてこれら草案メンバーの中心的役割を担ったのが井上毅でした。

そして井上は、古事記、日本書紀の何遍もの精読から、古事記、日本書紀が言おうとしていることを一言で表すと、次のようになったということです。

「日本帝国は万世一系の天皇、これを知らす所なり」

つまり井上は大日本帝国憲法の草案に、日本国は天皇を「知らす」国と書こうとしました。

これは、高天の原から天照大神の孫——瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)。瓊瓊杵尊の曽孫が神武天皇——が降りてくる「天孫降臨」の際、天照大神が命じた「あなたは地上世界に降り、国を知らせ(知ろしめせ)[1]」という言葉に由来します。

そして当時の日本国内は戦争に明け暮れた時期にあたり、詳しい話は動画の方に譲りますが、当時平和にこの国を統治する策として考えられたのが「国を“知らせ”」ということだったようです。

「知らす」という言葉の意味は、「知る」の丁寧形・命令形。つまり「あなたは地上世界に降り、国を知らせ」は、「国を(国民を)徹底的に理解しなさい」とも受け取れます。

また、国の隅々、国民の隅々まで知り尽くすというのが、この「国を知らせ」であったわけです。


[1] 「今、葦原中国(地球のこと)を平け訖へぬと白す。かれ、言依し賜りしまにまに、降りまして知ろしめせ」とのりたまひき。『古事記』より

 

知ると人間は「祈り」たくなる

ただ「知らす」という言い方は、当時すでに一般的な言い方ではありませんでした。そこで憲法では「知らす」を「統治」に置き換えます。

「日本帝国は万世一系の天皇、これを統治する所なり」

しかし「統治」の置き換えられはするも、伊藤博文は「統治」は「知らす」の意味で用いていることを、憲法の解説書で説明しています。もちろん、これは「統治」の正確な意味を、後世にも伝える配慮があったと思われます。

そしてこの、いわゆる明治憲法で使われた「統治」(知らす)の意味は、現在の日本国憲法にも受け継がれています。

それは天皇が、ただひたすら「知らす存在」であり、私たち国民は、天皇という存在を通して「日本国」「日本国民の統合」を見るということにつながります。また私たちが天皇のお姿を見たとき、そこに「日本」を感じるとしたら、天皇は日本国を象徴していると言えます。

上皇陛下も天皇陛下もそうです。ひたすら国民のことを知ろうと努力していますよね。

そして竹田氏もこの講義の途中で「知るとどうなります?」と、皆に問いかけるシーンがあります。そして「人間は知ると祈りたくなるんですよ!」と力説しています。

たとえば、普段ならそれ程気に留めないあるスポーツ選手がいたとしましょう。そのスポーツ選手のことをテレビで偶然見かけ、その人となりを知りました。つまり、少し彼を知ったことで、その選手のことに興味を抱いたわけです。

そんな折、その選手がプレー中の怪我で、しばらく故障者リストに登録されたとしましょう。そうすると、彼の復帰に期待を込めて応援し「祈る気持ちを抱くようになる」と、竹田氏はこの動画で伝えています。

天皇陛下が、スポーツ選手や文化人などの活躍や、未曾有の災害に被災された国民や自治体の動きにも、逐一気に留めるご様子は、あまりテレビを見ない人でも、朧げながら知っていることではありませんか。

また障害者の生活について、「まるで専門家のように詳しくお知り」だったと、一日天皇に同行した女性の元官僚の方がこの動画で感想を述べています。

そしてなぜ天皇は「国を知らせ(理解せよ)」る努力を続けておられるのか。それは、天皇は国(国民)を知れば知るほど「祈り」の気持ちが湧き上がるから、そしてこうした他者理解は、かならずや平和な統治へとつながるからです。 日本という国が、他国から羨ましがられる理由があるとしたら、おそらくここにあります。つまり天皇とは、国や国民の現状を、徹底的に知ろうとする、理解しようと努める存在にほかないということです。

  

「知らす」「教育」で誘導等を目的に“ウソ”を伝えてはいけない!

筆者はこの動画で、天照大神が命じた神勅「国を知らせ」という言葉が、我々が発信するコンテンツにも通じるところがあると感じました。

またそれと同時に「知らす」「教育する」ということが、営業以外にも、さまざまな場面で使われていることです。

当たり前のことのようですが、教育とは何も教育の現場だけのものではないこと。このことを、新たに感じました。

そして営業で注意しなければいけないことは、誘導等を目的に“ウソ”を伝えては、何にもならないということです。間違いと分かっているなら、最低限、発信するコンテンツに載せることはやめたほうがいいでしょう。

営業だから「嘘も方便」という時代は、そろそろ終わりを迎えています。

「教育」、また「知る」ことに話を戻すと、結局は次のようなことが言えるのではないでしょうか。

 

  • 顧客の知的好奇心を満たすと、購買意欲が高まる(詰まるところ、商売とはまさにこれの繰り返しです)。
  • コンテンツの発信者に興味を抱くと、顧客は発信者の「信者」または「ファン」となり得る。

 

そして「教育」に取り組むなら、営業であれば、やはりニュースレターではないでしょうか。

これで「教育」について、一旦ここで一区切りをつけるつもりです。

また新しい切り口が出てきたら、同じテーマでまた再開を考えています。

 

  

   

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。