専門コラム 第31話 営業マンの数が減っている!
それほど多くはありませんが、ネットニュースを見ると「ここ十数年の間に100万人規模で営業マンの数が減少している」など、ややショッキングなニュースの見出しを目にする機会に遭遇します。
ただ記事をよく見ると、営業マンの種別や実態に言及するかと思いきや、介護職の増加やアマゾンや楽天など、ネットを利用した新しい流通形態に焦点を合わせたのが記事の内容のよう。
「何をいまさら…」と、いささか鼻白んでしまいます。
ただ人口減少などにより、保険外交員の数は減っていますし、住宅業界の人員も言うまでもなく減少しています。
また産業構造の変化から、従来型の職種に従事する方の数はこぞって少なくなっています。
つまり、何も「営業職の数が減った」のではなく、これまで普通にみられた職種さえ無くなる可能性があります。
営業マンの減少が、住宅業界の未来にどのような変化をもたらすか考えてみましょう。
営業マンの数が減っている!住宅業界の未来はどうなるの?
住宅業界の市場規模は慢性的な縮小均衡にある
住宅業界に関わらず、営業マンの数が減少したのは、市場規模が小さくなったことが主な原因と考えられます。
ひとまず住宅業界に目を向けてみると、いまから10年も前の2009年(平成21年)に、住宅着工数は80万戸を割っています。
この前年の2008年(平成20年)にはリーマンショックが発生します。
そしてこれと同時に、1億2,808万人と言われた国内の人口は、2008年を境に減少に転じました。
その後も2010年から景気も回復し、着工数はやや上昇します。
しかし少子高齢化、人口減少はもはや止められません。
住宅着工数が今後拡大することは、おそらく無いと考えられます。
営業マンの数が減少したのは、リーマンショックなどの経済的な要因も無視できません。
しかし根本的には、人口減少が本格的に始まったことが何より大きいでしょう。
ただ住宅業界の着工数のピークアウトは、実はもっと以前に遡ります。
税率5%の消費増税を翌年に控えていた1996年(平成8年)は、バブル期を除き最も住宅着工数が多かった年でした(新築着工数が約163万戸)。
そのため1997年から今日まで、住宅産業はまさに定常的とも言える「冬の時代」を経験します。
バブル期の負の遺産を解消する住宅会社もあった
そしてこの「冬の時代」には、主にバブル期の多角経営から、多額の負債を抱える会社も幾つかありました。
今後売り上げは右肩下がりで減少するのに、傷口を放置したままでは、後で取り返しの付かない事態になることは必定です。
そして2000年代に入ると負債を抱えたメーカー各社は、自社の支店・営業所の統廃合をはじめ、主に集客力が乏しい住宅展示場を順次閉鎖していきます。
あるメーカーのなかには、トップの実感として「ピーク時の半分にまで縮小した」との涙ぐましいインタビューを読んだ記憶があります。
その後この会社は完全に経営を立て直し、東証一部上場を果たすのですが、相当覚悟を据えたリストラだったことは間違いありません。
またこの他にも、某プレハブ大手が中堅ハウスメーカーの子会社となった例も、まだ記憶に新しいところです。
ただこれらのハウスメーカーが、経営の立て直しを比較的早期に進めたことで、大怪我を避けられたのです。
各社の血の滲むような経営努力は、住宅産業にとって正しい選択でした。
やるべきことはまだ多く残されている!
注文戸建を中心とする住宅産業は、自動車業界や家電業界のような、大手による寡占がありません。
つまり住宅産業は、規模は違えど、大手ハウスメーカーにも地場工務店にも、等しく成功するチャンスがあります。
確かに住宅産業の着工戸数は減少しますので、従来のままではジリ貧です。
しかしこの業界の市場規模は、リフォーム関連等を含めると約45兆円にも上ります。
この数字は国家予算の半分近い金額です。
慢性的な縮小均衡とはいえ、まだまだやるべきことは多く残っています。
例えば後進国にも後れを取ると言われる、日本の住宅の性能レベル(温熱環境)の引き上げです。
どういうわけか分かりませんが、強い岩盤規制によってか、日本の住宅の性能レベルは一向に向上しません。
この部分が解消することで、リフォームやリノベーション事業が、より堅調なビジネスとして安定してきます。
もちろんユーザーの健康増進にとっても、性能レベルの引き上げは重要なテーマです。
また営業技術という面でも、一層のレベルアップが望まれます。
このコラムでも引き続き営業について、発信していきますのでよろしくお願いします。