専門コラム 第133話 営業マンが「売り込む・説得する・自慢する」の3つを避けなければいけない理由とは?
筆者はいまでも営業本を購入しています。
特に現在は現役を退いていますから、「無理して営業本など読まなくても良いのでは」と思う方もいるでしょう。
でも良い本に出会うと、人生は確実に豊かになります。
そして読みたい本があれば営業本であろうと、何であろうと買ってしまいます。
先日もコラムで紹介した田中敏則氏の『日本一住宅を売っている営業マンの営業の手帳』(あさ出版 2011/7/15)という本も、コンパクトで実に良い本でした。
(文章が短いので、営業活動の合間に読むのに最適です)
そして以前読んだときより、共感できる箇所が多くてハマってしまいました。
ここのところ、営業とは「心の所業」という一寸変わったテーマで記事を書いていますが、そうしたコラムを書いてみようと思い立ったのも、田中氏の営業本との出会いが少なからず影響しています。
今回のコラムでは、田中氏自身も語っている「営業マンがやってはいけないこと」して掲げる「売り込む・説得する・自慢する」の3つ
––このコラムを読んで下さっている方には、もうお馴染みのワードも見つかるでしょう––
に焦点を当ててみます。
そして、これらを避けなければいけない理由をまとめてみましょう。
営業マンが「売り込む・説得する・自慢する」の3つを避けなければいけない理由とは?
「売り込む・説得する・自慢する」の共通点は、どれも人が嫌うこと
先ほどもいいましたが、「売り込む・説得する・自慢する」はこのコラムでも、もしかしたらライティングに次いで頻出度の高いワードです。
ところで「売り込む・説得する・自慢する」
この 3 つは共通しています。
「自慢する」ことは他の 2 つとは違うように思いますが、流れとしては同じです。
「自慢する」ことは、「売り込む・説得する」したことで商談に成功したように感じ、結果営業マンは自慢気に振る舞うからです。
また「自慢」は上記以外に、提供する商品やサービスの優位性からも起こります。いわゆる「自社自慢」というものです。
筆者は「自己自慢」も「自社自慢」も、営業は控えるべきと考えています。
なぜなら多くの人は、「自慢」を嫌うからです。
そして「売り込む・説得する・自慢する」の共通点は、どれも人が嫌うことです。
だから人を相手に商売する営業マンは、この 3 つをお客様に強要する姿勢はいただけません。
田中敏則氏という日本のトップクラスの住宅営業マンが、10年程前に、営業がやってはいけないのは「売り込む・説得する・自慢する」の3 項目であることを書籍に記してしてくくれています。
これがどこまで浸透しているか定かではありません。
ただ、少なくとも筆者クラスの平凡な営業が語るより、説得力は高いはずです。
営業は一体「何」で売っているの?
では「売り込み」や「説得」はもちろん、「自慢」もしないで、営業は何で売っているのでしょう。
これもこのコラムで何度か触れていることですが、筆者は、それは「教育」だと考えています。
「教育」という言葉が重ければ、「共感」という言葉ほうが、ニュアンスとして相応しい気もします。
先回あげたコラムでも
これは推測レベルの話ですが、住宅営業はほかのセールスと比べ、顧客への教育は大きな割合を占めていると思います。
ニュースレターを使うようになってから、いわゆるセールス職らしい言葉を発した記憶がほとんどありません。
と、筆者は自己開示しています。
話を変えましょう。
昨年ユニクロは、赤耳と呼ばれる「セルビッジ」を採用したテーパードのデニムパンツを出しました。
これを購入したお客様から「ぜひ定番化してほしい」と、デニムファンの間で、かなり盛り上がったアイテムとなりました。
結果、大ヒットしたわけです。
ただこのアイテムをヒットさせた裏側に、多くの「教育」があります。
街中で見かけるジーンズの 2 本に 1 本は、カイハラが製造したデニム生地を使用していると言われる「カイハラデニム」。
筆者の記憶では、こことのコラボレーションを元に、大々的にストーリー形式で特集記事を組んだことも[1]、一種の「教育」ではなかったかと思います。
つまりユニクロは、「カイハラデニム」とのストーリーを仕立てることで、ファンの知識欲をより刺激させたのですね。
その結果、リーバイスと比較しても何の遜色もない、逆にユニクロのほうが、超格安価格で本格的なセルビッジジーンズを世に届けたのです。
[1] [UNIQLO INVISIBLE QUALITY](https://www.uniqlo.com/jp/ja/contents/invisible-quality/pc/jeans/)
知識が豊かになるほど、人はその商品を使いたくなる!
またこの商品はオンラインショップ限定で、デニムパンツの裾上げ方法を、好みの 3 パターンから(通常のミシン仕上げ、カットオフの他、なんとチェーンステッチも!)選べる方式を採用しています。
僅か数百円プラスするだけで、チェーンステッチで裾補修してくれるので、ジーンズを甲にノークッションで穿きたい「こだわり派」には、堪えられないサービスとなったはずです。
「カイハラデニム」はGAPも採用しています(カイハラ高品質セルビッジデニムを使用)が、確かチェーンステッチ仕様はなかったと思います。
これによりユニクロは、近年のジーンズの傾向と言われる、丈の仕様を細かく指定できるようにしています(こだわりの具現化)。
これもユニクロジーンズの「教育」の一環と、筆者は見ています。
言い換えれば、たかが3990円のデニムにユニクロはこれだけの「知恵」と「工夫」を使っています。
もちろん「売り込む・説得する・自慢する」は、一切やっていません。
「自慢する」箇所はたくさんありますが、ユニクロはこれらをまったく行っていないのです。
それよりデニムやファッションに関する知識が豊かになるほど、人はその商品を使いたくなるものです。
知識や情報、また「教育」が、顧客の“買う意欲”をより引き出すというわけです。
それなのに住宅業界は「売り込む・説得する・自慢する」の三拍子を、いまだに推奨しています。
筆者が“顧客への教育は大きな割合を占める”と感じたのは、現役の頃、そういう流れがすでに来ていると思ったからです。
田中氏のようなNo.1のセールスマンが書いた書籍を読むと、そのようなことに自然と気付かされていきます。
皆さんの健闘を心から祈っております。