専門コラム 第66話 営業も高断熱高気密住宅についてもっと学んでおこう!
営業を続けていると、一体何が良くて住宅の受注を続けているのだろうと、思うことがないでしょうか。
もちろん答えは人それぞれだと思います。
ただ、これからの住まいを考えた時、営業にとって高断熱高気密住宅という視点は、住宅の耐震性能と共に外せないテーマではないでしょうか。
ただ高断熱高気密住宅は、「金額が高い」「数値計算が難しい」ということで、鼻から敬遠している会社もあるようです。
また、もうかれこれここ10年、壁の中の断熱仕様は、全く変えていない会社もあると聞きます。
国も2018年の年末、あれだけ懸命に進めていた省エネ基準義務化からあっさり手を引いています。
そんなことで「高性能住宅のブームはもう終わったのでは」と、ある種のんびり構えている会社もあるようです。
しかしながら、ここのところ本コラムでもよく取り上げるクオホーム然り、最近YouTubeチャンネルを立ち上げた松尾設計室然り、コロナ時代でも多数のお客様からプランの打ち合わせで待たせているのは、高断熱高気密住宅を得意とする住宅会社ばかりです(決して、ローコスト住宅を得意とするパワービルダーではありません)。
このことは住宅会社も営業マンも、認識しておくべきことではないでしょうか。
営業も高断熱高気密住宅についてもっと学んでおこう!
いまの高性能住宅ブームは温暖な地域のユーザーにも受け入れられている
高断熱高気密住宅とは今に始まったことではありません。
北海道や北東北の一部では、もう30年も前から高断熱住宅の取り組みが始まっていました。
しかしここで認識しておくべきことは、今起きている高性能住宅のブームは、そのむかし北海道などの寒冷地で始まった高性能住宅ブームとは別な物だということです。
むかしの高断熱高気密住宅は、基本的に寒冷地のユーザーにしか響かないものでした。
しかし今回の第2波は、東京、大阪、福岡といった、今まで高性能住宅に無関心だった温暖な地域の住宅ユーザーに、強い興味をもって迎えられています。
そしてこれには「stay home」や「with corona」で増大する在宅時間も、少なからず影響しています。
つまりコロナで長くなった家にいる時間を、少しでも快適に過ごそうという動きが、これから広がりつつあるのです。
分かりやすくいうと、トイレや洗面室など家のどこにいても、きれいで新しい病院にいるような均一な温度環境が「気持ちいい」「快適だ」ということ。
そしてそのようなストレス・フリーな高性能住宅に住むことで、健康寿命にも影響するということに、ようやく本気で気付き出したのです。
こうした流れは、おそらく誰にも止められないでしょう。
高性能住宅をつくるうえでの優先順位とは
それでは新しい高断熱高気密住宅を計画する上で、何か注意点はあるでしょうか。
まずよく言われるのは、優先順位を間違えず、住宅部分に投資しましょうということです。
ここで言う住宅部分とは建物の躯体のことを意味します。
逆に言えば、躯体に伴う高効率な設備や創エネ(太陽光発電)部分について、予算がなければ後回しにしても良いのですね。
これを理解するのに役に立つのは「高性能住宅をつくるうえでの優先順位のつけ方※1」という動画です。時間があればぜひご視聴ください。
高断熱高気密住宅の計画で大切なのは、熱の入れ物である躯体の性能です。これを「足らないところは後でリフォームするから」ということで、十分な断熱気密スペックにしていないと、後で膨大な費用が掛かります。
例えばサッシを入れ替えとした場合、日本の住宅は外側から交換しなければなりません。
また窓の入れ替え枚数にもよりますが足場の設置が必要になったり、外壁部分にも手を掛けなければいけなくなる可能性が出てきます。
さらに断熱材を付加するとなれば、壁を壊し修復しなければなりません。
費用が余計に掛かると言うのはそういうことです。動画では4倍ものコストが掛かるとも言っています。
もちろんお金があれば、そのようなことも可能です。しかし賢い方法ではありませんよね。
ZEHがまだ生きていた頃は、原則として創エネ部分がないと、ZEH住宅として認められない仕組みがありました。
そのため希望する断熱グレードより、太陽光パネルを優先して載せていた住宅もあるのではないでしょうか。
省エネ基準義務化から国が手を引いて良かったことは、たとえ太陽光パネルを後回しにしても、躯体の費用(断熱スペック)を適切に検討できることです。
※1(参考サイト) 高性能住宅をつくるうえでの優先順位のつけ方 (https://www.youtube.com/watch?v=BuOWoLBjePE)
住宅の適切な断熱スペックいついて
また上の記述と絡めて、適切な断熱スペックはどのぐらいが妥当かも検討しておきたいところです。
これについてはラクジュの本橋氏が「ホントのところ!断熱の終点ってどこ??家の断熱性能って?どこまでいくの??※2」という動画で、ある程度明らかにしてくれていますので参考になります。
動画を最後まで見ていただくと分かりますが、ラクジュが所在する横浜地区など、6地域でベストなのはUA値で0.3程度ではないかと数値をあげています。
また「【永久保存版】本橋・松尾・今泉・早田が徹底討論!みんなが納得できる住宅の性能基準はどのくらい?※3」という動画も参考になります。こちらでは、UA値で0.4程度と、本橋氏は答えています。
また同じ動画で答えている松尾氏(松尾設計室※4)の意見として、UA値0.46(HEAT20※5、G2グレード)も、ひとつの指針になるでしょう。
ただ共通していることは、民間の省エネ基準と比べて、一旦中止となった国の省エネ基準やZEH基準は、一様に緩い基準だと分かります。
もちろん、どのグレードを目指すのが良いかは「HEAT20」や実際に設計している業者の省エネ基準の方です。
そして最終的にどの断熱グレードを目指すかは、打ち合わせを進める設計者と施主ご自身です。
ここで大事なことは、予算をあまり掛けられないユーザーの中にも、自分たちが建てようとする住まいが、「どのグレードなのか具体的に知りたい」、また他の要素を諦めたとしても、「性能面だけはある程度のレベルを目指したい」という方が、今後は増えるだろうということです。
多くのお客様を抱えた住宅設計者が、これだけ熱心に討論をしています。
そんな中、これまで高性能住宅とは無縁だった方も、住宅の性能について「適切なアドバイスができる」ようにしておくことが、今後は避けられなくなるでしょう。
※2(参考サイト) ホントのところ!断熱の終点ってどこ??家の断熱性能って?どこまでいくの?? (https://www.youtube.com/watch?v=vfiNfLYzux0)
※3(参考サイト) 【永久保存版】本橋・松尾・今泉・早田が徹底討論!みんなが納得できる住宅の性能基準はどのくらい? (https://www.youtube.com/watch?v=DDF5pBAbshk)
※4(参考サイト) 松尾設計室 (https://matsuosekkei.com)
※5(参考サイト) HEAT20 (http://www.heat20.jp)