専門コラム 第217話 営業の「信用・信頼」の使い方と注意点
前回のコラムで、「信用・信頼」が営業活動にいかに重要か、分かったのではと思います。
そこで今回は「信用・信頼」の使い方について触れてみたいと思います。
「信用・信頼」はうまく使えば素晴らしい営業の武器となります。
しかし使い方を誤ると、詐欺につながることもあり得るものです。
人を信用させるとは、そのぐらいパワフルな行為です。
今日は、営業マンとして押さえておきたい「信用・信頼」の使い方についてまとめてみましょう。
営業の「信用・信頼」の使い方と注意点
1 「信頼」こそ全ての根源
先日読んだばかりの本ですが、村上むねつぐさんが書いた『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』という短い書籍があります。
いわゆるKindle本ですが、非常に魅力的な書籍でした。
しかし素人でもKindleというサービスを使うと本が出せるのですから、実に良い時代になったと思います。
ただ内容のほうは、行動心理学の分野でかなり有名な「4つの学習タイプ」を実践した話しです。
村上むねつぐさんのような文章家でなければ、ありきたりなウェブ記事と変わらないものに終わったかもしれません。
しかし、機会があれば自分でも実践したいと思わせるほど、読み応えがあります。
その意味では、とてもおすすめです。
ただこの本で筆者が共感したのは、ここ(「4つの学習タイプ」を実践した話)ではありません。
筆者がいたく同意した章は、この本の前半に書かれていること。
第一章「売れる文章を書けるようになるたった1つの『考え方』」です。
そして場所を特定すると、
あなたはビジネスで最も大切な事はなんだと思いますか?
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』(p.12). Kindle 版
と読者に問いかけるくだりです。
答えを出す前の所で、村上氏は「商品?」とか「コピーライティング?」とか「動画?」など、さまざまな返答を導いてきます。そして出てきた答えはそのいずれでもありません。
それは、『信頼』です、と答えます。
さすが、エルハウスの平氏[1]をメンターとする著者だけのことはあります。
言っていることはいたって的確です。
逆に言えば「信頼さえあれば無名でも稼げる」という事です。
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』(p.13). Kindle 版
信頼さえあれば、実績や知名度も必要ないと言います。
また「コピーライティング」も必要ないと言いますから、ニュースレターも恐らく同様のことなのでしょう。
村上むねつぐ氏は第一章の最後を次のように締めています。
究極にキレイなホームページを作ったとしても、権
威人からの推薦文をもらっても意味がありません。
『信頼してもらう事』
それこそが、ビジネスで最も難しく、
そして最も大切な事なのです。
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』(p.19). Kindle 版
あらためて「信用・信頼」の重要性、大事さを痛感する箇所です。
[1] 平秀信氏のこと。
情報起業家でありエルハウスの創業者としても有名。また神田昌典氏が主宰する初期の実践会のメンバーでもあります。
2 人は成功を体験させられると人に信頼を寄せるようになる
ただ注意したいことは、全てを可能にしてしまうほどパワフルな「信頼」ですが、これを悪用するとれっきとした詐欺にも変わります。
そうです。「信用・信頼」は詐欺の常套手段にも使われています。
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』では、冒頭の一節で次のように言っています。
冗談に聞こえるかもしれませんがコピーライティングを極めると
人の心を動かすことは簡単になります。
ですので…約束して下さい。
決して悪用しないでください。
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』(p.2). Kindle 版
この本で「信頼」という言葉は、「はじめに」の部分ではまだ出てきてません。
そして「信頼」の代わりに「コピーライティング」や「コンテンツ力」があることが、成功の可否の扉が開く鍵を握っています。そして「コピーライティング」と「コンテンツ力」があるかどうかで「人を惹きつける興味深い文章が書けるかどうか?」が決まってくると言います。
つまり「信用・信頼」を得るのに、「コピーライティング」と「コンテンツ力」がその鍵を握るのです。
そして村上氏は次のように続けています。
“あなたが他人を信頼するのはどんな時ですか?”
この問い掛けに、村上氏は以下のように答えています。
人が人を一番信頼する時…
それは、
成功を体験させられた時です。
成功体験をさせられる以上に、
人が人を信頼する事はありません。
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』(p.22). Kindle 版.
この意見に筆者はほぼ同意します。
それは筆者自身が、本コラムの直近のテーマに「信用・信頼」を選び、また実際にそう感じるからです。
もう一つ言うと、成功を体験させられる以外に、隠れたニーズを言い当てられたような時、
また広い意味で、何らかの共感を体験させられたと時も、あなたが他人を信頼する時と筆者は考えます。
3 「信用・信頼」が結果的にお客さまを失望させる?
しかし「信用・信頼」を生み出しておきながら、それに応えず逃げていけば、それは立派な詐欺に当たります。
ここでもう一度、先の引用部分を持ち出してみましょう。
冗談に聞こえるかもしれませんがコピーライティングを極めると
人の心を動かすことは簡単になります。
ですので…約束して下さい。
決して悪用しないでください。
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』(p.2). Kindle 版
すでにお気づきの方もいるでしょうが、詐欺に似た行為は、セールスの場面で頻繁に起きているのです。
「いやいや、自分には人に誇れるようなコピーライティングスキルはまだ備わっていないけれど……」と思う方もいるでしょう。
あなたのコピーライティングスキルはともかく、自分や会社のお客さまを見てください。
OB のなかには「せっかく家を建てたけれど、この部分は騙されたな……」という方が少なからず居ませんか?
また建てる前は「定期点検をしっかり行い、アフターには余念のない会社です」といいながら、引渡しから 3 ヶ月や半年も過ぎると営業マンは疎か、アフターの専門担当者すら来なくなる。
最近は少なくなったと思いますが、今もそんな会社がゴロゴロしてはいませんか?
『一瞬で人の心を操る「売れる」セールスライティング』では、投資で儲けさせた成功体験で人を簡単に騙せるとしています。これって近年でもヤられていますよね。
もちろん故意ではないにせよ、これと似たことが、注文住宅やリフォームの分野でも起きていませんか?
本日はこのぐらいにしておきますが、
このような悲しい結果に繋がらないよう、私たちは個々にもっと注意を払う必要があるでしょう。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。