専門コラム 第102話 営業がイヤになる前にあなたに考えて欲しいこと
今回のコラムでは、かつて優秀な住宅建築の営業マンとして活躍していた知人(以下、A氏)に、営業という仕事について思うことをインタビューしたので、みなさんと共有したいと思います。
まず、筆者はこのインタビューの冒頭でA氏に、『なぜ、こんなにも快く自分が運営する「新人営業を応援するコラム」のインタビューに協力してくれるのか』と、お聞きしました。
すると、A氏は「単純に営業という仕事が好きだから」と答えてくれました。
A氏らしく、端的で、かつ「なるほど」と思う回答です。
ただ、プライベート(特に若い頃)の彼を知る者は、「彼が営業という仕事に好意を持っている」と聞いたら、間違いなく全員が耳を疑うでしょう。
なぜなら、彼と営業という仕事が、全く結び付かないからです。
いったいどのぐらいかけ離れているのかという話は、とても長くなるので止めておきます。
しかし、実は話すのを止めておくほど、「A氏」と「営業」はお互いに結び付かない間柄なのです。
その一方で、筆者は、営業という仕事をイヤになって「できることなら辞めたい」と考えている人が多いことも知っています。
調べたわけではありませんが、おそらく「辞めたい仕事」の上位に営業は入るはず。
今回は、A氏へのインタビューを通して、自分の仕事としての営業職について考えてみましょう。
営業がイヤになる前にあなたに考えて欲しいこと
住宅営業は簡単に辞めるべき仕事ではない
筆者:Aさんは、現役時代に転職されたご経験がありますが、営業がイヤになり辞める若者を見てどのように思いますか?
A氏:私は、転職を繰り返した世代のため、基本的に辞めたい仕事を無理に続けなくても良いと考えています。
ただ、どういうわけか、営業については、簡単に辞めるべきではないと思います。
筆者:ご自身も営業を辞めたいと思ったことは、ありますか?
A氏:もちろん自分も、営業をやっていて辞めたいと思ったことはあります。
ただ住宅営業に関しては、最終的に続けてみようと思いました。
筆者:住宅営業と他業種の営業は、何が違ったのですか?
A氏:住宅営業の場合、実際に建った家を目の前にした時の感動は、他の営業とは違う魅力があります。
これは経験した人が、皆感じていることではないでしょうか。
筆者:住宅営業を長く続けられた、一番の理由は何ですか?
A氏:注文住宅の仕事は、何もないところから図面を元に作り上げていきます。
モノづくりという観点では、家づくりには様々な職人さんが関わっています。
私が初めて入社した住宅会社は、特に現場に関わる職人さんや業者さんとの繋がりのようなものを大切にしていました。
そのような職人さんとの繋がりの中で、「この方たちの為に仕事を取らなければいけない」という気概のようなものも芽生えました。
辞めようと思えば、営業はいつでも仕事を投げ出すことができます。
でも住宅業界には、簡単にそうはできない「他者との繋がり」のようなものがあります。
そんなこんなで、結果的に他の業界より、長くこの仕事を続けてきました。
それと同時に「営業は簡単に辞めるべき仕事ではない」と思うようになりました。
営業を続けていくと次第に専門性が高まる
筆者:住宅営業を長く続けた結果、自分自身はどのように変わりましたか?
A氏:営業という仕事を続けていくと、専門性が高まるという魅力があります。
ある程度、売れて来ると、営業から専門家に変わる瞬間があるのです。
私の場合、気づいてみたら家の中は、建築関係の本や雑誌で一杯になっていました。
またビジネス書や自己啓発の本も同時に増えていきました。
全て自分の為に買ったものですが、お客様に良い情報を届ける為に必要だったから購入したものです。
先日の引っ越しを機に、思いっきり断捨離をしましたが、それは凄まじい物量でした。
住宅営業を引退した今も、住宅建設に関わる仕事を続けています。
本がなくても、仕事ができる自信は、かつて多くの経験を積んだこと、そして、あの時(住宅営業をしていた時期)に必要な知識を専門書で得たからです。
筆者: 「専門性が高まる」という事は、他のあらゆる営業にも、共通して言えることですね。
当コラムでも、ソニー生命の林正孝氏の書籍をもとに「仕入れ(知識や情報)の大切さ」について語ったことがあります。(コラム第91話)
A氏:そうです。「専門性が高まること」、また、「専門性を高めなければならないこと」は、住宅営業に限ったことではありません。
国家資格の取得なども専門性を高めることに寄与します。
しかし、営業を続けることも、専門性を高め、同時に幅ひろい知識を習得できます。
これは自分にとっても良いことです。
営業は向き・不向きが存在するというのは誤解
筆者:営業に対して、向き・不向きは存在すると思いますか?
A氏:営業は向き・不向きが存在するというのが一般的な認識です。
しかし私は、そうは思いません。
確かに多くの実績を上げるには、多少なりとも営業に対する適性が関与するでしょう。
ただ普通で良ければ、向き・不向きは関係のない仕事だと思います。
筆者:どのような考えから、営業には向き・不向きがないと思われるのですか?
A氏: 営業が不向きと言われる人に限って、とても正攻法とは言えない「独自の営業手法」を見つけ出します。それらは、たくさんの営業本の中で紹介されています。
そして 営業が不向きと言われる営業マンは、 「独自の営業手法」 を使うことによって、ある程度の数字を残します。
私が今も営業本が好きなのは、営業が不向きと目される方のイマジネーションに驚かされるからです。
筆者:ご自身は、どのような「独自の営業手法」を活用されたのですか?
A氏:当コラムで推奨されているニュースレターは、よく使った営業手法のひとつです。
私にとってのニュースレターは、自分が営業に対する適性が著しく低いことが関与し、その末に出会った戦略です。
そして、ニュースレターのおかげで営業で成績を残すことができたことは、まぎれもない事実です。
筆者:最後に、今まさに頑張っている「新人営業のみなさん」に一言エールをお願いします。
A氏:考えてみれば、営業を仕事にすることは、結果的に人生を豊かにすることに繋がっていると思います。
自分の弱点を受け入れ、どのように挽回できるか試行錯誤の上に、他人にはマネできない独自の道が開きます。
繰り返しになりますが、営業に向き・不向きはありません。
自分のやり方で進んでいけば、それで良いのです。
「営業って案外良い仕事かも」ということが、少しでも伝われば本望です。
今回は短いインタビューでしたが、 営業がイヤになったときに一歩立ち止まり、ちょっと違う角度から営業を見つめていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。