専門コラム 第8話 概算見積もり
概算見積もり
設計がまとまったら、次はいよいよプラン内容に合わせて概算見積もりを提示します。
しかし、概算見積もりの意味や状況をお客様に伝わっていなければ、以降、仮契約に無事進んだ場合でも、お互いに違和感や不全感を残してしまいます。
ここでは概算見積もりの正しい意味や、他の見積書との違いについて解説しましょう。
「概算見積もり」の正しい意味と違いについて
建築見積書には大きくは2種類の見積書がある
建築見積書には大きく分けて、2種類の見積書があります。
それは、お客様から会社決定の了解をいただく「概算見積もり」と、仮契約以降、詳細な図面をもとに作る「詳細見積もり(工事費内訳明細書)」です。
■ 概算見積もり
・・・提案プランをもとに作成。
- 素人が見ても分かりすく記載されています。
- ただし、仕様などは未決事項も多く、追加工事によって見積もり金額が変わる可能性もまだあります。
■ 詳細見積もり(工事費内訳明細書)
・・・仮契約以降、詳細な図面・仕様書・仕上げ表をもとに作成。
- 概算見積もりより内容は詳細ですが、そのぶん素人にはやや見慣れない建築用語が多用されています。
- 仕様については未決事項もありますが、社内スタッフを交え、打ち合わせの方はほぼ完了しています。
つまり概算見積もりとは、契約を前提に仮契約(設計依頼)する会社を選択するために提示される見積もりです。
また概算見積もりは、詳細設計(仮契約)に進む前の見積もりですから、金額はまだ動く可能性があります。
この辺りのことも再度、お客様に理解を促しましょう。
概算見積もりの提示は、営業なら誰もが緊張する場面です。
しかし金額の説明したら、しっかり自分の言葉で「〇〇さまの住まいづくりを、私どもの会社にお任せください」と告げてみましょう。
折衝の進め方が大きく間違っていなければ、前向きな返事が貰えるはずです。
なお資金計画で確認した予算と概算見積もりの金額が大きく異なる場合は、プランが過剰提案に陥った可能性があります。
営業は予算との見積もり金額の乖離に注意を払い、打ち合わせの流れ・方向性をコントロールしましょう。
概算見積もりは大きく3つに分類できる
なお概算見積もりを細かく分けると、1)ハウスメーカーなどで使われる見積もり、2)部位別見積もり、そして、3)工種別見積もりに分かれます。
■1) ハウスメーカーなどで使われる見積もり
概算見積もりを最も単純化したのが、大手プレハブメーカーやハウスメーカーで使われる見積書です。
見積項目も建物本体工事価格、設備工事価格、附帯工事価格などで構成されており、素人でも分かりやすいのが特徴です。
またメーカーからの転職者からか、一部、地域ビルダーにも使用が広がっています。
概算見積もりと言えば、これをイメージする方が多いかもしれません。
■2) 部位別見積もり
自由設計を特徴としたハウスメーカーの他、地域ビルダーの大半が使うのが「部位別見積もり」です。
躯体や屋根、建具(室内ドア)など、建物の部位ごとに費用を算出するため、素人でも比較的分かりやすい見積書です。
■3) 工種別見積もり
設計事務所の仕事を請負う工務店の大半が使っているのが「工種別見積もり」です。
「工種別見積もり」は、工種別に下地から仕上げまでの材料や面積を、図面を見ながら拾い出すため、どちらかと言うとプロ仕様の見積書です。
そのため、概算見積もりと言うより詳細見積もりに近い側面があります。
言うまでもなく、最も使われているのが1)2)の見積書でしょう。
見積書の正しい説明ができることも営業マンの大事なスキル
なお概算見積もりに限らず、見積書の正しい説明をできることも営業にとっては大事なスキルです。
基本を理解している先輩営業を手本に、正しい見積もり説明ができる営業を目指してください。
たとえば、見積書の項目に「諸経費」とあることは、営業なら誰でも知っているはずですが、それがどのような意味を持つのか、正確に知っている方は少ないかもしれません。
「諸経費」とは、現場監督の給料や通信交通費といった「現場経費」と「一般管理費」、それと「営業利益」で構成されるもの。
また「諸経費」の見積り合計額の10%が目安となります。
そのため「諸経費」があまりにも低いと、他の項目に金額が割り振られていることを疑われます。
このように、見積書の各項目には正しい意味があります。
営業が説明する概算見積もりには、理解が難しい項目は見ませんが、工種別見積もりや詳細見積もり(工事費内訳明細書)には、見慣れない建築用語も出てきます。
分からない用語はその都度でも良いので、少しずつ憶えていく習慣をつけてください。