専門コラム 第10話 契約編 契約締結
契約締結
住宅営業の仕事は契約の締結で終了するものではありません。
お客様から最終時金をいただき、契約物件を無事引き渡ししなくてはなりません。
しかし工事請負契約を終えると朝礼等で発表があり、社内から労いの言葉を掛けてもらえることも事実で、営業は「また頑張ろう」と気持ちを新たに出来ます。
ここでは『工事請負契約の締結と「14項目の重要事項」について』と題し、契約書の基本構成と約款の説明について簡単に説明します。
工事請負契約の締結と「14項目の重要事項」
工事請負契約書の基本構成
そもそも工事請負契約とは何のために契約するのでしょう?
それは、建築工事を請け負った者は、1)期日までにお客様の住宅を完成させるため、そして発注者は、2)結果に対して報酬を支払うために、お互いが公平な立場で契約を締結します。
また工事請負契約は一定の重要事項を明示し、工事着工までに署名、あるいは記名捺印の上、相互に契約書を交付します。
そのため工事請負契約書は次のような基本構成を持ちます。
まず冒頭部分では、
- 工事名:(例)〇〇〇〇様邸新築工事 木造 カラー合板横葺 二階建 総床面積〇〇〇.〇〇平方メートル
- 工事場所:(住所地を記載)
- 工期:着工 令和元年〇月〇〇日 完成 令和元年〇月〇〇日
- 引き渡し時期:(例)〜関係法令に基づく竣工時の検査に合格した後〇〇日以内
- 請負代金額:〇〇,〇〇〇,〇〇〇円
- 支払方法:(例)第1回(この契約成立のとき)〇,〇〇〇,〇〇〇円、第2回、第3回、最終回
- その他:(例)施主支給材料/支払方法等
など、工事の概要を記載します。
そして契約書を締め括る巻末では、請負者(甲)、発注者(乙)両名が記名捺印する箇所があります。
そして冒頭と巻末の間にあるのが、いわゆる「契約約款」です。
契約約款の説明と「14項目の重要事項」
契約約款は以下に示す14項目の重要事項から構成されています。
このうち、最初の4項目や9から11番については、契約書の冒頭部分にも記載されていますが、これらの重要事項は基本的に約款の条文の中に網羅されています。
契約約款は慣れればそうでもありませんが、初契約の営業マンや客前で約款を読んだのがまだ2、3度の方は、約款を通しで読むだけでも苦労するのではないでしょうか。
特に会社独自で作製された契約約款は、敢えて会社に有利になるように書かれており、国交相から出ている「建設工事標準契約約款」より、自身の客前では読みにくいと感じる方もいるでしょう。
しかし約款というものに触れる機会が随分増えたこともあり、お客様の反応も以前と比べて驚かれることは少なくなっています。
【約款に網羅されている14項目の重要事項】
- 工事内容
- 請負代金
- 着工、完工の時期
- 前払い、出来高払いの時期、方法
- 設計変更、工事中止などの場合の工期変更、代金額変更、損害負担とその算定方法
- 天災その他不可抗力による工期の変更、損害負担とその算定方法
- 価格変動による代金額、工事内容の変更
- 第三者が損害を受けた場合の賠償額の負担
- 注文者からの支給材料、貸与品の内容、方法
- 工事完成検査の時期、方法、引渡し時期
- 完成後の代金支払い時期、方法
- 瑕疵担保責任、責任の履行に関する保証保険契約などの内容
- 債務不履行の場合の遅延利息などの損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
なお読み方について言えば、条文の幾つかは文面通り理解するしかないものもありますが、2、3度でも先輩社員に同行し読み方を学んでおけば、それほど苦労することはないでしょう。
契約約款の基本的な考え方は、甲乙双方が信義誠実の原則 (good faith)に則り、協議の上、解決を目指しましょうということなのです。
約款の読み方が上手くなりたければ、とにかく場数を増やすことですが、ヒマを見て14項目を復唱してみることでも随分違ってくるはずです。
今後のスケジュールについて
契約日には、今後のスケジュールについてもお客様と打ち合わせしておきます。
着工前に確認しておくこととして、建替新築の場合は解体工事がありますので、仮住まいの準備、引越・不用品処分の手配などを進めなくてはなりません。
また融資の仮審査は終了していても、本申し込みをする銀行を確定していない方には、金融機関の選定いただく必要があるでしょう。
細かなことですが、地鎮祭をする場合は、神社の手配をこちらで進めても良いか確認しておく必要もあります。
なお、工事請負契約時には契約時金として入金していただく会社と、着工時金として入金いただく場合があります。
特に決まりというものはありませんが、約款にもある通り、この点も事前にお客様と打ち合わせしておきましょう。