専門コラム 第110話 住宅営業マンが習得した方が良い専門知識とは?
ここまでのコラムで、筆者は折に触れて幅広く「知識の仕入れ」に励むことを推奨してきました。
なぜかと言えば、筆者が新人営業の頃、先輩社員や支店長に同行をしてもらった際、愕然としたことが自分の知識不足だったからです(この辺の話は過去の記事にも書いています)。
帰りの車の中で、筆者とほぼ同年代の先輩営業や支店長に「住宅のことが全く分からなくてすみません」と、自分の知識不足を酷く嘆いた所、
〇〇君は新人だから、仕方がないよ。それより、こうして折衝できるお客様をつかまえてくるだけで今は十分。ただこの仕事で上を目指すのなら、現場の知識やいろんな専門知識は、客さんを納得させるためにどうしたって必要なんだよ
普段厳しいだけの支店長が筆者を軽く往なしたことを、今もはっきりと覚えています。
ただ皆さんの中には、何から始めたら良いか分からない方も多いと思います。
そのため「知識の仕入れ」の筋道を、このコラムで示せればと思います。
これから知識量を増やしたい方の参考になれば幸いです。
住宅営業マンが習得した方が良い専門知識とは?
「並の営業マンとは違う」と思われたければ
結論を言ってしまうと、営業マンにおすすめなのは建築現場の知識です。
そのため現場監督出身の営業マンは、知識面で非常に有利です。
ちなみに筆者のハウスメーカー時代の上司は現場監督出身で、支店長を任されている方でした。
営業にとって、工事現場というのは人によって心理的な距離がありそうでしょうが、それだけにベテランと新人営業でいちばん差がつくのも現場の知識です。
またお客様が最も関心があることも、工事現場の進め方・納め方ではないでしょうか。
自分の家がどのような材料を使い、組み立てられるのか、全く無関心な方は(中には居るでしょうが)現実的には少ないからです。
実際に、冒頭のエピソードにもあったように、新人時代に感じた先輩との歴然とした差こそ現場の知識でした。
この知識が備わると、自ずとお客様に響く言葉の力が違ってきます。
あなたが心底、お客様から「並の営業マンとは違う」と思って貰いたければ、筆者は真っ先に建築現場の知識を育て、そして増やすことをお勧めします。
他にも資金計画や建築基準法、都市計画なども身に付けないと、本格的な商談はできません。
しかしこれらのことは営業をやっている限り、自ずと身につくこと。
しかし建築現場の知識は、普通に営業していても、自動的には増えません。
じゃあ、どうすれば現場の知識がつくのでしょう。
筆者のおすすめは、最低でも週に2回は現場に入ってみることです。
ちなみに私の先輩は、何も無ければ午前中は稼働している現場に入ることをルーティンにしていました。
ただそれでは足らないという方は、書籍を読むしかありません。
というのもいつも書いていることですが、インターネットの情報は、大概が経験者ではない方が記述しているからです。
ただ筆者も専門の書籍や専門誌を、今年一気に断捨離したため、いまのところ推奨できる本が手元にありません。
ただそんな中で、比較的新しい『建築知識』を残していたので、それを上げておきます。
それは『建築知識2019年6月号—ぜんぶ絵で見て分かる建築現場—』(エクスナレッジ 2019/5/20)です。
ただアマゾンを見ると「無駄なマンガが多い」と、おそらく技術系の方が酷評しています。
なのでプロの目から見たら、大して役に立たない本という可能性もあります。
ただその分、営業職の方が読むのに、十分理解しやすくまとめてある回だと思います。
それで構わなければ買ってみても良いでしょう。
現場の理解に下地や寸法という概念は欠かせない
なお雑誌『建築知識』の使い方としては読むだけでは全くダメで、実際に稼働している現場に出向き、どうしても分からない所は、(仕事の邪魔にならないよう!)10時と3時の休憩中に職人さんから教えてもらいます。
その上で『建築知識』と照らしてみるというのが、この本の理想的な使い方です。
そうすると家づくりの順番というものが、どうやって組み立てられて行くかがまず分かります。
あと現場で大事なものの一つに下地があります。
専用の下地が必要な箇所は、早く物を決めておかなければいけません。
また現場の理解に、寸法という概念は欠かせません。
「寸法を制するものは商談を制する」といっても言い過ぎではないでしょう。
高さ・奥行きなどのほか、一般的な住宅に置くことになるもの(ソファやテーブルなどインテリア部材)の寸法にも強くなりたいものです。
例えば「この広さだと、〇〇掛けのソファを置くことは難しいですね」などのアドバイスが、何も見ずにサラッと言えるかということです。
他にもまだたくさんの注意するべきポイントが建築現場にはあります。
ただこれは義務ではなく、どちらかというと「面白い」から、また「興味がある」から、やめられずやっているという意識。
あなたにその感覚が理解できなければ、無理に「知識の仕入れ」に励んだりせず、建築現場の知識は技術系の社員(ハウスメーカーはこれが可能です)に任せておくというのも一つの選択です。
あまりこれも、あれもと言い過ぎては、些か食傷気味になるでしょう。
「知識の仕入れ」では「誤認」に注意!
またこの「知識の仕入れ」で注意したいことに、お客様に伝える際の「誤認」があります。
これは大きなものでは、発進者の信用に関わることにもなります。
例えば充填断熱と外張り断熱という表現があった場合、これを誤って内断熱と外断熱と書いてあったとしましょう。
内断熱や外断熱はRCに適用される断熱構造であって、戸建住宅は一般的に充填断熱、あるいは外張り断熱という表現を使います。
最近だとよくある間違いなので、営業は注意したいところですが、断熱に細かいお客様は、この程度の知識は持っています。
しかし間違ったとしても訂正できれば良いですが、そのまま放っておくと「この営業はその程度の知識しか持っていない」と、お客様から酷くガッカリされます。
なので不確かな知識は、何度も見直してみることも必要です。
知識と一括りに言っても、住宅営業が学ぶ知識は多岐に亘ります。
そして幅広く学ぼうとしたら、何年もかかることかもしれません。
それを続ける気が本当にあるか、営業の皆さんにおかれましては、いま一度その点を考えて欲しいと思います。