専門コラム 第105話 住宅営業の真骨頂は初回面談の集中力にあり
筆者の昔の仲間に、第一線で工務店を経営している方がいます。
工務店といっても、数名を外注しており、実質的に1人だけで営業から引き渡しまでをやり繰りするマイクロ経営です。
この体制で創業から十数年、相当数の現場を回してきた訳ですから、立派というしかありません。
筆者も開業当初、事務所にお邪魔させて頂いたことを思い出します。
筆者は新人社員の頃、この元同僚に多くのことを学ばせてもらいました。
もしかしたら、営業という仕事の上で最も影響を受けた人かも知れません。
ただ、昨年久しぶりに筆者からメールで連絡をとった際、業務的に上手く回っていないことを聞きました。
今年はコロナの影響で、なお営業不振が長引いている様子です。
話をよく聞いてみると、現在ご実家のとある施設の経営も、彼一人の肩にのしかかっているようです。
今回は、彼とのメールを通して、思い出した過去のことを皆さんとシェアできればと思います。
住宅営業の真骨頂は初回面談の集中力にあり
2018年夏に飲食店を開業。しかし……
工務店を営んでいる元同僚ですが、改めて話を聞くと、2018年の夏に「実家に併設した蔵を改装して飲食店を開業」したそうです。
そして当初ここからリフォーム需要を延ばせると見越していたようですが、いま「新築予定の新しいリスト収集を怠った」つけが重くのしかかっているようです。
もちろん住宅実務に携わる身として、少しでもフレッシュな名簿の方が、いいのは痛いほど分かります。
かと言って、古い名簿が完全に死んでいることはありえません。
またメールのやり取りでわかったことには、元同僚の見込み客がある中古物件(土地+中古住宅)のリノベーションを検討しているとのことです。
傷みの度合いがかなり進んでいる中古住宅ということで、予算的に落ち着くかはわかりません。
筆者は、こちらのリノベーション案件についてGo / no-Goの判断基準や進めるとした場合に抑えるべき損益の考え方など自分の見解を伝えるとともに、経営立て直しのためには、重点リストだけでもニュースレターを仕込むようにアドバイスしました。
先輩の世代の営業マンが持つ初回面談時の集中力の高さ
ここまでは、本コラムでも推しているニュースレター戦略。
よく分からない方は関連記事を読んでいただければと思います。
それよりも今回、筆者が皆さんと共有したかったことは、一世代前の営業マンが持つ、初回面談時の集中力の高さです。
はっきり言って、この元同僚を含むハウスメーカー出身の営業マンは、初回面談に費やす集中の度合いが並大抵ではありません。
筆者はある時から、ニュースレターを武器に自分の営業スタイルを組み立てたため、ガードが強いお客様が来場した場合は、お客様のペースを崩したり、乱したりしない対応を心掛けていたように思います。
それは後からいくらでも、レターで必要なお客様を呼び戻す自信のようなものがあったからです。
ところが一世代前の好成績を残す営業マンは、このお客様は自分のお客様と判断したら、是が非でも次回面談の約束を取り付けます。
これには批判があるにせよ、住宅営業の真面目と筆者は思います。
それもあって、このコラムでも「初回面談だけは集中を切らさないよう」に唱えてきたつもりです。
そしてひとしきり、メールを閉じて考えました。彼は自分の工務店を持った後、どうやって集客していたのか。
多分、忙しい彼のこと。
事務所や住宅展示場での初回面談に、その全てのパワーを使って臨んだのではないか。
その思いに至ったとき、なんとも懐かしい気分でいっぱいになりました。
住宅営業の本領は初回面談で相手の心にどれだけ爪痕を残せるかにある
この元同僚は、先述のとおり面談時の集中が非常に高い方です。
加えて、他の営業マンとは異なり、話の内容が常に面白く、何とも人を惹きつけるところがあります。
その面で、大いに他社との差別化もできてしまう方です。
彼が退職した当時、社内での彼の評価は、まさに独立するべくして独立したというものでした。
筆者も新人の頃、この元同僚とお客様訪問をしたことがありますが、同行時の話題がとてもユニークで楽しく、期せずしてお客様のお宅に長居したことを覚えています。
とにかく会話に引き込まれてしまうのは彼の天性でしょう。
また、今後の経営を左右するであろう「お客様との関係性」を構築する上でも、彼の最大の武器は会話力となるはずです。
もし、会話力が普通レベルの営業マンだったら、休眠客を見込み客に変える力があるのは、やはりニュースレターが一番です。
ただその場合でも、初回面談でどれだけ相手の心に爪痕を残せるかが、住宅営業の腕の見せどころではないでしょうか。
今回、この大事なことを改めて気づかされた、彼とのやりとりでした。
駄文を弄してしまいましたが、何か参考になるところがあれば嬉しい限りです。