専門コラム 第178話 サンキューレターで気づく営業レターの効能
今回から気分を変えて、このコラムでもよく登場するサンキューレターについて書こうと思います。
営業が書くレターといえば、本コラムの読者なら、ニュースレターが真っ先に思い浮かぶかもしれません。
でもニュースレターは、強くお勧めはするものの、本コラムでも「必須レター」とはいえません。
しかしサンキューレターは、営業なら必ず身に付けておきたい、いわば代表的なセールスレターです。
それでもサンキューレターの登場回数がニュースレターに比べて少ないのは、ただ単に書く内容が少ないから、ということもあるでしょう。
また営業マンの中には、ニュースレターを出しても、サンキューレターは出さないという方もいるかもしれません。
このように中途半端な位置にあるのが、サンキューレターという手紙なのかもしれません。
だから、あえてもう一度取り上げておきたかったというのが、正直な気持ちです。
サンキューレターで気づく営業レターの効能
1 サンキューレターとは「来展お礼の葉書」
あらためてサンキューレターとは、どういう手紙なのでしょう。
住宅ビジネスに展示場集客というスタイルが一般的になり、その中に組み込まれたのが「来展お礼の葉書」です。
これが、いわゆる「サンキューレター」の始まりと考えられます——このコラムでも初期の頃、サンキューレターではなく、「来展お礼の葉書」などと書いていたことを思い出します。
では、その役目といえば、
- 展示場来ていただいたお礼の気持ちを示す
- 家づくりに関することは「何でも手伝わせてほしい」との、営業の思いを伝える
- 今後もお客さまに役に立つ情報を知らせます
という、営業マンの決意表明のようなものが、いわゆるサンキューレターです。
もちろん会社によっては「来展お礼の葉書」は不要と指導しているところもあります。
そのため出身会社によって、手紙を書くクセを全く持たない——あるいは、習慣付けていない——営業マンも多く存在します。
しかし後で考えると、優秀な成績をおさめた営業マンは、ほぼ全員と言って良いほど、お客さまとの最初の出会いに、必ずサンキューレターを出しています。
しかも他業種でも、そういう傾向です。
このコラムではおなじみの保険営業の山下義弘氏(通称、ビリーさん)も、キーパーソンと出会ったら、サンキューレター——彼の場合は短かな文句で、必ず手製の絵葉書のもの——を即日送っています。
他にも、同じく知人の保険営業の方も——彼は毎年のように、生命保険の全国表彰を受けていました——、非常に達筆な手書きのサンキューレターを送っていました。
またメルマガを通じて知った不動産営業兼コンサルタントの方も、素晴らしいサンキューレターの使い手です。
そうしたことを考えると、自身の活動に手紙というツールを取り入れるクセを身に付けておくことは、自らの将来を考えた場合でも、得ることが大きいように思います。
サンキューレターのいいところは、ニュースレターとは違い、ハガキ 1 枚で事足りること。
そして書く文章も難しく考える必要はなく、あくまで平易な文章を心掛けれれば、それで十分です。
まだサンキューレターを出していない方は、書く習慣を身につけておくことをお勧めします。
2 サンキューレターの出すタイミングは?
サンキューレターの出すタイミングについてもお話ししておきましょう。
サンキューレターとは先ほども説明したとおり、当初は住宅業界の「来展お礼の葉書」と、大体同じ意味を持ちます。
そのため、展示場や現場見学会など、社内イベントでお会いした、あるいは担当したスタッフから引き継いだら即日、遅くとも翌日中にハガキを投函しましょう。
なぜ早く書くのか?
それは、お客さまは気づかないうちに、あたなのことを忘れてしまうからです。
またハガキはすぐ出せるよう、レターの文面などはあらかじめパソコンやスマホなどに、数パターンほど控えておくといいでしょう。
実はこれ以外にも、住宅営業がサンキューレターの出すタイミングがあります。
このコラムで度々登場している書籍に、三島俊介氏が書いた『セールスレターで「住宅」が売れる本〜誠意がこもった一通の手紙が顧客のこころに響く』(産能大学出版部 1999/03/30)という本があります。
これを見れば、土地の決済日、設計依頼や仮契約の取得時、地鎮祭や棟上げ日の後。
また無事、金融機関と金消契約が成立した後。
そして晴れてお引き渡しを済ませた後など、サンキューレターの出すタイミングが幾つもあることが分かります。
しかしはじめのうちは、お客さまと出会ったタイミングで、サンキューレターを出すだけで十分です。
ただしここで注意したいことは、サンキューレターに書いた「お役立ち」の気持ちが、「自分の売り込み」とならないこと。
言い換えれば、「お役立ち」の表明が、誘導の気持ちへとすり替わらないことです。
微妙な違いですが、人はその「下心」に気づくと、一気に冷めてしまうもの。
それを避けるため、営業はいつでもギバーの心を忘れずいてほしいと思います。
そして感謝というのはお客さまだけではなく、自分という存在にもかけてあげます。
自然な感謝の思いを綴れるようになったところで、サンキューレターを出すタイミングを、少しずつ増やしていけばいいでしょう——もちろん、出会ったタイミングだけでも結構です。
3 サンキューレターが教えてくれる営業レターの効能
実はこのサンキューレター、ハウスメーカー出身の営業なら、大抵の人が書いているものだと信じていました。
ただ大部分の方が書いていないことを知り、少なからず驚いたことを今も覚えています。
サンキューレターの効能は、何といっても、初回面談時のお客さまとの「壁とり」をスムーズにしてくれます。
また営業によっては、展示場より、むしろ飛び込みで出会った見込み客宅を、再訪問する際の「やり易すさ」を痛感する方もいるでしょう。
営業をやり易くするという点では、サンキューレターこそ、立派なマーケティングツールです。
またサンキューレター以外にも、折衝の初期段階で、様々なレターを書いている営業もいます。
そういうセールスマンは、営業レターの効能を、知らぬうちに経験しています。
サンキューレターをはじめとする手紙の効能は、営業の「やり易すさ」のほかに、日中ほとんどの御宅が不在という事実によくマッチします。
つまり手紙の持つ適切で簡潔な表現は、共稼ぎの御宅のお客さまにこそ、大いに喜んでいただけるのです。
コロナ禍で人との接触が制限される中、IT の力と手紙の持つ隠れたパワーを共に活用すれば、住宅営業はまだ捨てたものではないと考えるのですが、いかがでしょうか。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。