専門コラム 第51話 なりたい自分(営業)を明確に思い描こう
本コラムは駆け出し営業マンの応援のため書かれたコラムでもあり、「目標設定についての記事も、どこかで触れる必要がある」と常々考えていました。
そんな折、古いビジネス書を断捨離しようと、神田昌典氏著の『非常識な成功法則』を手に取って読んでみたら、本コラムで紹介したい記述に幾つか遭遇。
そんなことから『非常識な成功法則』を改めてザッと再読してしまいました。
この本の奥付を見ると2002年に初版が発行されていますから、すでに20年弱の時が経過しています。
それでも再読して思うことは、書かれている内容は全く古さを感じません。
氏の数ある著作の中でも人気の高い本書を用いて、営業マンにとって目標設定の大切さに言及したいと思います。
なりたい自分(営業)を明確に思い描こう
伝説のマーケッター、神田昌典氏とは?
神田氏は筆者の世代では、有名な経営コンサルタント/マーケッターと認識している方がほとんどかと思います。
ただ若い営業マンの中には「神田昌典」と聞いても、ピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
神田昌典氏の略歴を紹介すると、上智大学外国語学部卒業後(すでに4年次には外務省経済部に勤務)、アメリカに渡りペンシルバニア大学ウォートンスクールに留学。
同大学でMBA(経営学修士)を取得し、1998年には経営コンサルタントとして独立します。
そして独立までの数年間を米国家電メーカーの日本代表として活躍しますが、このときの苦い営業体験は、その後のマーケッターとしての仕事、また作家としての活動に大いに生かされることとなります。
なお初期に出された書籍のタイトルなどには、“引きを狙った”エキセントリックなネーミングを多用しています。
ただ中身は至って真面目な内容で、リズム感のある文体や「語り口」は、かえって「分かりやすさ」「親しみやすさ」を上手く演出しています。その意味で、それまで一般に分かりにくいとされたビジネス書の間口を広げたことも、功績のひとつと言えるのではないでしょうか。
なお神田氏はマインドマップや速読の技法を日本国内に広めたことでも知られており、またアメリカ発の「コピーライティング」という概念を日本に広めたのも神田氏の偉業のひとつです。
また現在も、氏が監修している(そしてメンタリストDaiGoさんが帯を飾っている)『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケーブルス著)は、新しい古典として若い読者にも親しまれています。
「やりたいこと」「やりたくないこと」の明確化
営業マンである多くの読者にとって、目標設定の大切さはすでに分かっていることかも知れません。
しかし数字の目標は設定出来ても、「自分がこの先どんな営業を目指しているか」をイメージして、仕事をしている方は少数派ではないでしょうか。
(そもそも「どんな営業を目指しているか」など、考えたことも無い人の方が大多数だったり…)
しかし「どんな営業を目指しているか」がすぐ答えられない方は、自分との会話ができていないことの証拠です。
良い機会ですから、一度「自分が目指す営業像」をあぶり出してみましょう。
また「自分が目指す営業像」が具体化できなければ、逆に「これだけはしたくない」「やりたくない」営業像に焦点を当ててみることです。
実は『非常識な成功法則』でも、神田氏は「やりたいことを見つけるなら、やりたくないことを見つけなさい」と説いています。
• お客にへこへこしない。
• 在庫は持たない。
• アフターサービスが必要なものは売らない
• 正社員は採用しない。
• 身をすり減らすような仕事はしない。
• いやな会社や、人とは取引しない。
• コールド・コールはしない。
• 無料でアドバイスはしない。
• 下請はしない。
(以上、『非常識な成功法則』より抜粋)
上記はコンサルタントとして独立する際、実際に神田氏がノートに書き留めた「やりたくないこと」リストです。
当時これを読んだ時「これは営業にも絶対参考になる!」と思い、筆者も自分なりの「やりたくないこと」リストを作りました。
(本書にも自由に書き込める「リスト」ページが用意されています)
営業という仕事が「やりたくないこと」だった場合は?
本書では「親指を描きたければ、親指ではなく、親指の周辺を克明に描く」のようなことが書いてあります。
営業マンとして「やりたくないこと」を明確にするメリットとはまさにこれで、「やりたいこと」が何かが、より具体的に分かることです。
これは神田氏の出身大学が上智ということも関係していることかも知れません(上智大は「潜在意識」で有名なジョセフ・マーフィーを日本で最初に広めた渡部昇一先生が、学び、そして教えた大学です)。
確かに「やりたくないこと」を明確にすることは、私たちの潜在的な願望に光を当てることにつながっているようです。
また、人によっては営業職自体が「やりたくないこと」という場合もあるでしょう。
『非常識な成功法則』の中にも、「営業を辞めたい」とした二人の社長を取りあげ、リフォーム会社を部下に譲った社長の例や、逆に“超高飛車な”工務店に方向転換し、みごと「地域ナンバーワン」となった工務店の例が紹介されています。
つまり、「やりたくないこと」の決着の付け方は「人それぞれ」だということを説いています。
詳しくは本書をお読みいただくと良いでしょう。
久々に手にしてみましたが、『非常識な成功法則』から新しい発見がこの他にも出てきそうです。