専門コラム 第231話 あなたの実績を写真で取っておくことの意味とは?
最近のコラムで、五十棲 剛史氏が書いた『営業引力の法則[1]』を取り上げました。
この頃に出たビジネス書は、今も評価されるものが多いのですが、この本も間違いなく「営業の真実」を明らかにした良書の一つでしょう。筆者も久々に読み耽ってしまいました。
そして本書を読むにつれて、あることを思い出しました。
それは筆者が営業道具として必携をしていた、自分の現場の写真集です。 今日のコラムは、この写真集のことについて書いてみようと思います。
[1] 『営業引力の法則』五十棲 剛史著(徳間書店 2003/11/21)
あなたの実績を写真で取っておくことの意味とは?
1 筆者が所有していた現場写真集とは?
筆者が所有していた現場の写真集は、ファイルの大きさでいうと「A1 短冊」に近い大きさになるのでしょうか? 厚みは確か 4 センチ程度に膨らんだと記憶しています。
そして表紙はオレンジと黄緑色ものを 2 冊使っていました。
また現場によって若干の違いはありますが、地鎮祭から竣工時まで、なるべく時系列に沿ってで写真を集めていました。理由は現場の流れを、写真を見て覚えるためです。
そのため基礎の配筋なども、写真でチェックできます。
また外壁下地にも通気胴縁が使ってあるのが分かるように工夫してあったと思います。
もちろんですが、竣工時の綺麗な写真も取っていますので、その家がどのような考えで設計されたのかがよく分かります。
この写真集は、自分の現場が増え始めた年から撮り溜めていた写真で作りました。またその頃は、ニュースレターにも出会う前だったこともあって、この写真集は筆者のメインの営業ツールとして活躍します。
確か最初の頃は、ファイルにするほど写真がなく、カメラ屋さんが無料でくれるキティのミニファイルを代用していました。そんなことで、同僚からそのミニファイルのキティの絵柄を、若干変な目で見られていたと思います。
しかし時が経つにつれて、量的にも内容的にも充実し、キティのミニファイルから先ほどの専用ファイルに、バージョンアップしました。 そしてこのファイルは現役の間、常に筆者の手元で活躍しました。
期間という意味では、ニュースレターよりも長かったと思います。
2 現場写真集を常に携行していたのはなぜ?
という訳で、筆者にとってこの現場写真集は、筆者独自の営業ツールとして、また自己紹介ツールとしても、さまざまな場面で活躍しました。
よく自己紹介ツールに「自分史」を薦める方もいるようです。
ただ実際に「自分史」を作って、客前で説明したこともある筆者だから言えるのですが、
「自分史」を作る手間と“虚しさ”を味わう暇があるのなら、現場写真集を持つことを、筆者ならおすすめします。
またこの写真集は、他の営業マンからも、思いのほか、この写真集は好評でした。
また筆者は気が向くと、リストを増やすために時々飛び込みをするのですが、たまに飛び込みにも、この写真集を携行することもありました。この写真集があると、何故か安心できたのでしょう。
では何故この写真集のことを思い出したかというと、『営業引力の法則』という本の中で、五十棲氏自身が「アトラクティブセールス」で大事なのは、営業マンの実績を分かりやすく伝えることだと唱えていたからです。
現場写真集には全現場を収めていた訳でありません。ただ、私自身の仕事の実績をコンパクトに集約したのがこの写真集です。つまり、私自身の仕事をもっとも分かりやすく伝えるモノだということです。
『営業引力の法則』の中で、このような一節があります。
結果としては名誉会長の船井や社長の小山と同じコンサルティング内容になるかもしれないが、自分自身からこ出てくる言葉や事例には、誰にも真似のできない強さがあるはずだ、と思いました……
……これはスピーチテクニックの問題ではありません。話の内容そのものに迫力が出てきているのだと思います。ノウハウが自分のモノになっている。受け売りではなく本当の経験談の方が聞いてもらえるのです。
『営業引力の法則』p53 より抜粋
これは五十棲氏が船井総研に中途入社したばかりの頃、先輩にあたる当時のトップコンサルタントが書いた本や理論をベースに、学習塾向けにセミナーの内容を組み立てたところ、参加者からクレームがついた一件があったそうです。
クレームの内容は「我々が知りたいのはチラシの作り方ではなく、当たったチラシの事例なの!」と。
このクレームに対応するため、翌日現地に舞い戻ります。
そして最終的には「当たるチラシ」を、何とかして作ることになりました。
これには後日談があります。
数週間後、そのクレームを出した社長から「五十棲さん、この前作ってくれたチラシ、今までて最高の反響だったよ!」。「今度はお金を払うからさ、また来月のチラシのコンサルティングに来てくれないか」と……
この経験から、五十棲氏はこれまで薄々感じていたことに気づきます。 商談を左右するのは、徹夜で作る資料でもスピーチでもありません。
セミナーでも個別コンサルティングでも、自分の経験から作り上げたものを提供するしかない。
それには「自分にしかないものを作ること」です。
3 手作りの現場写真集は、家づくりで成功したケーススタディ集
筆者が『営業引力の法則』に出会ったのは、自分の現場写真集を持ってからですから、あらためて自分だけの営業ツールを備えたことに、我が意を得たりと感じました。
なかには自分の現場写真集を持つことを、どこかで「危険では」と思う方もいるでしょう。
しかしながら筆者のお客さまは、どういう訳か、何処か一捻りした間取りやデザインの工夫を求める方が多く、そういう建築が可能かどうか、最初に見ていただく必要があると考えていました。
言い換えると、筆者とともにモノづくりをしていただける方かを、判断しなければなりません。それを助けてくれるのが、この手作りの現場写真集です。または、家づくりで成功している方のケーススタディ集と言ってもいいでしょう。
もちろんこれは全ての営業マンに薦めるものではありません。
ただ自分の場合はこの現場写真集や、今であれば画像のストックした端末のようなものが必要なのかもしれません。
一部の限られた営業にも、同じようなものがないと困る方がいるのではないでしょうか? ふと、そんなことを感じながら、オレンジと黄緑の 2 冊の写真集ことを思い出していました。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。