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専門コラム 第319話 【続編】『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』を読んで〜高性能住宅に全室暖房としての床暖房は不要

 

先回の記事で、ひと段落つけるつもりでした。ですが、断熱・エコハウスをテーマにした本書(『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』のこと)を前に、たったひと記事ではどうも収まりがつきません。

そこで今回はその【続編】として、『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』の感想を、また続けて書いてみたいと思います。

ただ、少しでも営業の皆さんの役に立つことを(?)と考え、今回はとくに「高性能住宅には床暖房が不必要」ということを主題にしています。

おそらく皆さんは、現在も一人勝ちを続けている「あるハウスメーカー」と、競合すること——最近では、それほど頻繁ではないのかも知れませんが——もあるでしょう。しかし住宅に関する確かな「知識」があれば、そのメーカーになびくお客様をさほど気にしなくなりますし、メーカーの仕様が立派とは思わなくなります。 なぜならば、その某ハウスメーカーが建てる人気の住宅は、断熱・エコハウスの観点からみると、皆が思うほど、優れた建物ではないからです。

  

【続編】『最高の断熱・エコハウスをつくる方法 令和の大改訂版』を読んで〜高性能住宅に全室暖房としての床暖房は不要

なぜ日本で床暖房を希望するお施主さまがあとを絶たないのか?

あまりハウスメーカーの話ばかりしていては、あからさまな批判と間違われても困ります。ただそのハウスメーカーに限ったことではありませんが、国内の住宅市場では床暖房を希望するお施主さまが——筆者が現役の頃から——非常に多かったのは確かです。

ではなぜ現在も、日本で床暖房がこれほど多くの方から求められるかですが、これはわが国の住宅は「むかしから断熱施工が下手くそ」だったからです。

もう少し分かりやすく説明すると、家を温かくするには家の性能を上げれば(高断熱化すれば)いいのですが、日本ではそれをせず、暖房設備に投資したからです。そしてその最たるものが「床暖房」というわけです。

たとえば断熱・エコハウスをつくる上で、全室暖房の考え方は避けて通れません。しかし床暖房ですが、実は全室暖房に向く暖房設備ではありません。

『最高の断熱・エコハウスをつくる方法』でも、著者の西方氏はこのように記しています。

高い断熱レベルの住宅では、暖房時に室温が 21°C の時は、天井面、壁面、床面の温度は 19°C で体感温度は 20°C と暖かいです。その点からいうと、現在わが国で大流行しており、最もニーズの高い床暖房は、輻射熱を利用しているものの、コスト高から限られた床面積にしか採用できず、全室暖房するには床面を高温にせざるを得ません。

そして西方氏は、こうも続けています。

しかし、住宅は床に座ったり、寝そべったりで、体が高温の床面に直接触れている状態となっていて、低温火傷や、リウマチなど関節にダメージが生じる可能性があります。かといって人体にダメージが少ない 25°C 以下にすると熱量が少なく、全室暖房にはなりません。そのため、床暖房はあくまで寒い家の補助暖房と考えたほうがよいのです。

第8章 エコハウスのための換気・冷暖房計画;「暖冷房システムを考える」より抜粋

しかし以前から床暖房に「憧れを抱く」お施主さまが多い日本の環境では、「床暖房神話」がどういうわけか深く根づきます。そしてこのことを知って、自社の標準設備に取り入れたのが、そのメーカーやこれに追随するビルダーです。 不勉強で申し訳ないですが、とあるメーカーでは太陽光パネルもセットで標準仕様としていたように記憶しています。そして床暖房は全室暖房に対応しようとしてでしょうが、おそらく 1 階部分のほぼ全面に施工していたと思います(現在はやめているかも知れませんが……)。

  

真の高性能住宅に床暖房は要らない!

しかしこのメーカーはチェーン展開しているハウスメーカーですから、断熱仕様は決して低いものではありません。もっと賢く違った暖房技術を使う方法もあったでしょう。それでも敢えて床暖房にこだわったところが、このメーカーやビルダーのいいところなのかも知れません。

いっぽう、西方氏は床暖房のところで、窓下のコールドドラフトについてこのように言及しています。

長所は、個別式の床暖房と同様で、さらに熱損失が少ない住宅では床面の温度を低くすることができます。ただし、窓下のコールドドラフトが解消しにくいことから、パネルヒーターを併用することが多いようです。

西方氏は暗にユーザーに対し、注意喚起しているのかも知れません。というのも、筆者も以前、某メーカーで家を建てた方が、「窓まわりの結露が半端ない」というような記事を、ネットで見たことがあったからです。

願わくば、その原因が床暖房と「コールドドラフトが解消しにくいこと」と、因果関係がないことを望むばかりです。

そして本の著者は、このように締めています。

短所はインシャルコストがかかるのと、建物本体との接合部も多くメンテナンスが必要という点です。また、温水式では水もれなどを起こす場合があります。断熱性がよい住宅では、安価な設備で家中を温めることができるため、必ずしも床暖房システムは必要ないでしょう。

第8章 エコハウスのための換気・冷暖房計画;「床暖房は高性能住宅には不要」より抜粋

ここで言っている「安価な設備」とは、西方設計を始め、多くの断熱設計者らが導入している床下エアコンを配した「床下暖房」、また寒冷地では昔から導入例が多い「FF式ストーブ」1 台による、ローコストな全室暖房です。

結論を言うと、断熱設計の第一人者から見ると、とくに断熱性がよい住宅で、床暖房システムは必ずしも必要なシステムではありません。またこれは前著『外断熱が危ない!』の頃ですから、20 年も前から言われていたことです。 高断熱住宅を売ってきたセールスマンにとって、これはある意味で「常識」なんです。

 

正しい「知識」の使い方とは?

このようにみると、何も某メーカーの標準仕様が優秀なわけではありません。その仕様自体は温かいのですが、何となれば、建築的にはお勧めできないもので、素人の潜在的志向を具現化しただけのものかもしれません。

このようなメーカーと競合した場合は——筆者もいまはもうお勧めしませんが——建築的見解を丁寧に説明してあげると、お客様の気持ちは変わる可能性が十分あります。

「気持ちが変わるのに、どうしてお勧めしない」のか?

それはお客様によって、すでに「心までそのメーカーに持っていかれている」場合があるからです。そのようなケースでは、むしろ別のお客様を追った方が効率的に営業が進みます。

ただ迷って居られる方に関しては、「当社以外にも良質な高性能住宅を作れる工務店がある」ことを説明します。そうして丁寧に説明すれば、ウチで検討してくれることも十分考えられます。

また実際そうやって、現役の頃、このようなメーカーやビルダーを度々ひっくり返してきました。自分が一生懸命学んだ「知識」は、そういう風に使います。でなければ、あまりにもったいないからです。

『最高の断熱・エコハウスをつくる方法』は、窓まわりの項目が複雑になり、一段と難解になっています。しかしそれに決してめげることなく、正しい建築知識をお客様に伝えてあげてください。その場合、先ほども申しましたが、説明が理解できる人だけで十分です。

皆さんの健闘をお祈りしています。

  

  

   

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

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また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。