専門コラム 第103話 【住宅版】 スモールビジネスがうまく行くために必要なこととは?
このコラムを読んで下さっている皆様の多くは、いわゆる「スモールビジネス」に属するのではないでしょうか。
「スモールビジネス」の明確な定義はありません。ただ一般的には、大手とは違う中小ベンチャーのほか、外注やパートナーはいても実質一人で経営するマイクロ工務店まで含みます。
もちろん、売上規模やスピード、量は圧倒的に大手ハウスメーカーには勝てません。
しかし営業マンのクオリティや対顧客との「関係性」という面で比較すると、「スモールビジネス」でも十分対抗することができます。
さらに効率の面では、大手とは違う戦い方がのぞめます。
ここでは、【住宅版】スモールビジネスが上手く行くために必要なことを整理してみましょう。
今回は大きく捉えて 3 つに区分けします。
【住宅版】 スモールビジネスがうまく行くために必要なこととは?
専門知識の取得、あるいは「仕入れ」はやはり大事
これはこのコラムでも「大事なこと」として、繰り返しお伝えしていることですが、最初に申し上げたいことが専門知識の取得です。
なお、勉強に終わりがありませんので、「取得」よりも「情報・知識の仕入れ」と考えた方がいいかも知れません。
たとえば対ハウスメーカーと競合になったとすると、大手の営業マンは一般的にみて、自社の商品(住宅)については、社内研修などで詳しく学んでいます。
またその際、メーカーは抜かりなく、競合対策についてもしっかり教育を受けています。
ただ個々の営業マンは社内の研修だけで勉強はやめてしまい、全般的な建築知識や建築のトレンドについては疎い場合があります。
さらにハウスメーカーの家は、作るうえで効率を重視する傾向があり、それが建築の常識と合致していないことが少なくありません。
そのため正しい知識があれば、「〇〇ルール」など、メーカーの常識を突くと、競合対策で考えられた戦術・理論が簡単に崩せます。
スモールビジネスの営業マンは、日々知識武装しておくといいでしょう。
しかし競合対策のためだけに、我々は専門知識を仕入れるのではありません。
最終的には、建築のことをよく知らないお客様を正しく導くためです。
このことをお忘れなく。
ちなみに他者と互角に戦うには、自社の建築を常に時代の要請に合わせ、グレードアップを怠ってはいけません。
建物の構造や仕様等を定期的に見直していない会社は、いつか時代に取り残されて行きますので注意しましょう。
営業はできればプラン力を鍛えておきたい!
次は人によって判断は違ってきますが、筆者は営業マンもプランを書けるようにしておくことをお勧めします。
なぜなら大手とは違い、スモールビジネスで工務店を動かす会社は、人員が少ない分、基本設計ができる営業マンの方が好まれるからです(逆もあります)。
営業はプランなど書かないで良いという考えもありますが、これはメーカークラスの営業に言えることではないでしょうか。
ただしプランを書くなら、最低でもお客様にお見せ出来るレベルが条件です。
ここを勘違いしてはいけません。
またプラン作成には建築法規のチェックが欠かせません。
そして営業も基本プランを書けるようにしておくと、メーカークラスの営業より、建築基準法を深く理解できます。
たまに営業がプランを作成していると、他の部署から余計な茶々が入る場合がありますが、これも書く前提でいながら、書かない選択も出来ることを基本スタンスとします。
こうすれば問題はないはずです。
なおプラン力は、必ずしも国家資格の有無に合致しません。
折衝経験と空間を把握するセンス、それとお客様の家づくりにどれだけコミットしているかでほとんど決まります(構造計算は構造設計建築士に見てもらう必要があります)。
そのため3階建てまでの戸建プランなら、訓練を積んでいる営業のほうが、通常の設計担当より、上手く線が書ける場合があります。
ただ最近は表向きの資格を重視するのが世の傾向です。
そのため営業も 2 級建築士ぐらいは取得しておいた方がいいかも知れません。
兎に角、スモールビジネスの住宅営業は、必要に迫れらた場合、いつでもプランを書けるようしておくといいでしょう。
「山が険しくて深い谷間」を求め「関係性」を構築すること
3つめは戦う場所を「見通しがよい平地」ではなく「山が険しくて深い谷間」を選択するということです。
つまり、小が大に勝つには「戦う場所を変える」というランチェスターの第1法則を使います。
人間は社会的動物ですから「関係性」は重要な意味を持ちます。
そしてスモールビジネスで成功しているところは皆、顧客との「関係性」の構築が上手く行っています。
筆者は「山が険しくて深い谷間」を求め、ニュースレターに行き当たりました。
ただ全ての人に、ニュースレターを強制するつもりはありません。
ニュースレター以外にも「関係性」を構築するマーケティング方法はたくさんあります。
「関係性(Relationship marketing)」は1983年にアメリカの学者、レナード・ベリーにより提唱され、90年代に発展しているようです。
株式会社ロードマップ様のブログ[1]で「顧客へのアプローチ例」として、以下のような例が紹介されています。
• 成約後、お礼状を出す
• 誕生日や記念日に、バースデーカードや特典渡す
• ポイントが貯まったら割引する
• お役立ち情報を定期配信する
• 不便がないか、利用状況を確認する
たとえばバースデーメッセージをハガキで届けたり、電話で伝えたりすることも顧客との「関係性」をホットにするでしょう。
またOB客訪問で利用状況を確認することでも、新たな見込み客を紹介してくれるかも知れません。
大手も近頃はOB客訪問に力を入れていますが、総合的に見るとこの辺りはまだまだ不十分です。
このように「関係性」の構築に力を注げば、【住宅版】スモールビジネスにまだ勝ち目はあります。
[1]参考サイト: [リレーションシップマーケティングとは?メリット・具体的な手法](https://www.roadmap.co.jp/blog/mktg0023)