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専門コラム 第108話 『あなたの会社が90日で儲かる!』にまとめられた「情報誌(ニュースレター)」と営業の真実/【前編】

 

前回は、書籍『あなたの会社が90日で儲かる!』について、「営業マンが顧客から専門家と言われるには」というテーマでコラムを上げさせいただきました。

 

何の気なしにこの本を手に取ったところ、あらためてこの本が筆者にもたらした影響力に唖然としていまいました。

 

筆者がコラムに記述していることは、大きく言ってニュースレター(その他マーケティング・レター)の効能、住宅営業の進め方についてですが、これらのことについて、本書籍は実に具体的且つ克明に書かれています。

 

この本こそ、経営者に留まらず全てのセールスパーソンに読んでもらいたい—あらためてそういう感想を持ちました。

 

今回のコラムでは、特に情報誌(本書では「ニュースレター」とは言わず「情報誌」という言葉を用いている)の効能について、神田さんが詳しく解説しています。

今までニュースレターに興味はあっても、なかなか手につかなかった方。

この本を読むと、もう一歩前向きに、情報誌(ニュースレター)の役割を理解できるかもしれません。

(文中の参考ページ数は、初版単行本を参照しています)

  

    

『あなたの会社が90日で儲かる!』にまとめられた「情報誌(ニュースレター)」と営業の真実/【前編】

多くの営業マンは「そのうち客」を蔑ろにしがち

 

住宅営業をしていると、お客様は「今すぐ客」と「そのうち客」に分かれることは、実務を現在経験している皆さんなら、すでに分かっていることでしょう。

 

また「今すぐ客」と「そのうち客」を、「短期客」と「中長期客」という言葉で表す場合もあります。

これも周知のことだと思います。

ただ真っ先に刈り取らなければいけないのは「今すぐ客」(または「短期客」)方で、展示場でよく営業マン同士で話題になるのは、今日応対したお客さんが、「今すぐ客」なのか「そのうち客」なのかということだったりします。

 

つまり自分が応対したお客さんが「今すぐ客」ならlucky。

「そのうち客」ならunluckyということです。

 

ただ幸運か不運かを占うのは自由ですが、営業マンが気を付けなければいけないのは、「そのうち客」を蔑ろにすることです。

どういうことかというと、いい加減な顧客管理をしていると、いざ動こうにも「動きようがなくなる」ということです。

 

本コラムの前の記事で、筆者の先輩が「新築予定の新しいリストの収集を怠ったつけが重くのしかかっている」ことを書きました。

 

失礼な言い方かも知れませんが、これも言ってしまうと「今すぐ客」を追うあまり、「そのうち客」を育てなかった良くない例です。

  

    

多くの営業が群がる「今すぐ客」。いくら頑張っても徒労に終わることも

   

「今すぐ客」には多くの営業マンが訪問をかけます。

なぜなら「今すぐ客」は早く結果が出るからです。

そのためハウスメーカーによっては、ベテランの営業に担当替えすることもあると聞きますし、新人が担当する場合でも、キャリアの長い営業が必ず同行します。

 

こうして新人が担当する場合でも、なるべくチーム戦に持ち込み、勝率を上げるようにします。

 

なぜなら「今すぐ客」は顧客が望まなくても、最終的に価格(見積もり)の戦いになることが少なくありません。

しかもどんなにプランで引っ張ろうとしても、「今すぐ客」は価格になびく傾向があります。

つまり「今すぐ客」は、徹夜で提案書を仕上げても、徒労に終わることも多いのです。

 

受注営業に 2 位や 3 位はありません。

お客に選ばれるか否かだけです。

そのため戦いは熾烈を極めます。

とても新人だけに任せられる相手ではありません。

 

いっぽう「そのうち客」には営業マンも集まってきません。

 

いいところ始めにサンキューレターが届くだけです。

いいえ、それすら出さない営業マンも少なくないと聞きます。

 

そんな「そのうち客」でも地道に集め、育てていくと何が起きるでしょう?

 

一般的に「そのうち客」は 2 年後以降の計画の方が多く、ライバルとは無縁、つまり競合とは争わないお客となります。

 

かたや、ライバルが群がる「今すぐ客」。

 

大切に育てれば「そのうち客」は、他社に容易には浮気しません。

 

これとよく似た客層が「飛び込み」で出会ったお客様です。

こちらもほぼ他社へ浮気はしません。

 

ライバル不在で受注できる「そのうち客」。

しかし敢えてライバルを挙げるとすると、それは管理する自分自身です(P.146)。

もちろん、管理という言い方が適切でなければ「フォロー」といってもいいでしょう。

 

そして見込み客のフォローに使われるのが、信頼や感情的な結び付きを手軽に構築できる情報誌(ニュースレター)です。

 

そして自分との競争に勝てとき「住宅を建てることなったら、ここにお願いしよう」(P.147)と「そのうち客」に思ってもらえるのです。

これが「そのうち客」の特性です(どうしてそうなるかは【後編】で解説します)。

 

     

「そのうち客」は計画が早まることも少なくない!

   

さらに「そのうち客」は、適切且つ十分な情報を与えてあげると、計画が早まることもあります。

 

“その期間を短くする原因というのは、なんだろうか?

 

情報量の増加に伴う、選択基準の明確化なのである”(P.152)

 

通常、情報誌(ニュースレター)の発送期間はおよそ 3、4 週間のペースです。

そして「そのうち客」でも早い人になると、出会ってから 3週間から 1ヶ月半ほどで具体的な相談を持ちかけられることがあります。

 

出会った当初「そのうち客」だった方が、与えた情報量によって—適切な教育によって「今すぐ客」となる。

これは筆者も、何度となく経験しています。

 

“いますぐ購入する客じゃなくても、定期的に情報誌を送ったり、営業マンにコンタクトさせたりする。

そうして情報を絶えずインプットしていく。

「情報量は購買意欲を高める」という法則に従っているのである”(P.156-157)

 

そのため展示場で集客した見込み客は、「今すぐ客」と「そのうち客」はどちらも等しく扱う必要があります。

決して「そのうち客」を蔑ろにしてはいけません。

 

 

住宅ビジネスは展示場や見学会が最初の出会いの場となることが多いでしょうが、住宅以外のスモールビジネスでは、何らかのオフォー(例えば無料レポートなど)によって最初の出会いが作られます。

 

住宅以外のスモールビジネスも客層を区分けして集めるのではなく、「今すぐ客」と「そのうち客」を同時に集めるのが正解です(P.148)。

そうすることでライバル戦を避け、きわめてスマートに優良顧客とビジネスができます。

 

情報誌で育てた顧客は、もちろんコロナ不況に絶大な力を発揮します。

 

最近では 2013 年ごろ、住宅業界も久々の好景気に包まれた瞬間がありました。

ただし「今すぐ客」ばかり追ったために、きちんと顧客リストを作らなかった営業マンは今かなり焦っている状況かもしれません。

 

次のコラムでは営業の真実について解説します。