専門コラム 第230話 「顧客を選び取る」とは戦略感を持った営業である
前のコラムでは、注文住宅の観点から「断る営業」「顧客を選び取る」ことの大切さに触れてコラムを締めています。
ただ「断る営業」や「顧客を選び取る」ことの重要性を、前記事のみで終わらすわけにはいきません。というのも「顧客を選び取る」ことで生じる「勝率 8 割の売れる営業」や「売らずに売る」という仕組みが、前記事のみでは伝えきれていません。
そこで今回は、別の観点から「断る営業」「顧客を選び取る」を語ってみようと思います。 その意味で、前記事は序章であり、本記事が本文です。
「顧客を選び取る」とは戦略感を持った営業である
1 「戦略感」を持つことの意味
冒頭のリードで「別の観点で」と言いましたが、別の観点とは記事のタイトルにもしているとおり、それは「戦略感」を持つということです。
ちなみに前回のコラム、最初のチャプターのところで、このようなくだりがあります。
なぜなら会社の代表者は、自分に来た仕事を自ら選んでいるからです。言い方を変えると、やって損になる仕事を自ら進んで選ぶことはないからです(このことは、多分、次のコラムで説明します)。その意味ではセールスマンも同じではないでしょうか?
(専門コラム 第229話「顧客を選び取る」ことの重要性とは?2022.11.13 より)
会社の代表者は、どんな方でも最低限の「戦略感」を持っています。
そしてどんな代表者も、自分で決めた戦略に則ってビジネスを進めています。従って「やって損になる仕事を自ら進んで選ぶことは」普通、ありません。
その意味ではセールスマンも同じなのです。
そしてこのことを知ると、必然的に経営と営業、さらに社員教育に関する事柄が、かなり変わってくるでしょう。
前記事で紹介した『営業マンは断ることを覚えなさい』の新装版(知的生きかた文庫)の説明で、著者の石原氏が
今回の文庫化に際して、私が提唱してきた「売れるしくみ」4 ステップマーケティングについて、
さらにつっこんだ解説を丸ごと一章加筆しましたので、超お徳版になっていると思います。
としています。
新装版の『営業マンは断ることを覚えなさい』を購入していないので分かりませんが、おそらくこれから明らかにすることは、これとも重なる部分があるかもしれません。
例をあげましょう。
住宅セールスでは、日常的によくあることですが、たとえばお客さまから、こちらの説明も大して聞かず「プランと見積もりを出して欲しいと」お願いされること。こういうことは、住宅営業なら誰でも経験しているでしょう。 ちょっと考えてください。この場合、あなたならどのように対応するでしょう?
2 戦略を持たない営業は遅かれ早かれ潰れていく
それでは、考えていただいたでしょうか?
答えはこうなります。
「安易な見積もり依頼には飛び付かず、場合によっては、そういうお客さまのオーダーを穏便に断り」ます。
そして新人営業や、できるなら事務スタッフにも、どうしてこれがダメなのかを説明し、また浸透させておきます。
その理由は、敢えてここでは説明はしません。
ただ、こうした要望に安易に応えていては、
あなた、そして会社にも、戦略というものが全くないことを意味します。
そして戦略というもの持たない営業は、遅かれ早かれ潰れていきます。また潰れなくても「勝率 8 割の売れる営業」や「売らずに売る」という仕組みから、大幅に遠退いてしまいます。
特に住宅や不動産といった、高額な案件を取引する営業なら尚更です。
戦略を持たない営業は、ただ忙しいだけの、ドタバタするセールスに成り下がります。また自社に備わっていない材料、資材にまで手を広げようとする、悪い意味で“フリープラン型営業”となってしまいます。
営業にとって戦略が何か分かりますか?
営業にとって戦略とは、とりあえず「何でも受けます」といった販売姿勢ではなく、
誰に、何を、どの程度、そしていつまでと決めて、顧客に商品・サービスを提供することです。 自分の戦略を知っていれば、こうした案件や、安直な値引きに惑わされることもなくなります。
そして駆け出しの営業マンにアドバイスですが、やたら値段ばかりを気にするお客さまを、自分のカスタマー(顧客)にしないことです。
3 悪い客を引き寄せるには、あなた自身にも責任がある!
皆さんの中には、注文住宅のお客さまは、値引きばかり要求する方が多いと思う方もいるでしょう。
しかし、そんなことはありません。
逆にあなた自身が、価格ばかり気にするお客さまを相手にしているから、そういうお客さまが寄ってくるのです。
言い方を変えると、悪い客を引き寄せる。
それはあなた自身にも、それを誘発するだけの隙があるということです。
巷には「プランと見積もり」をハウスメーカーや工務店などから引き出す広告のようなものもあるようです。しかし案の定、積水やダイワなどの一流メーカーは、そういう要望は応えないようにしています。
おそらく支店ごとに、そういう社員教育が生き届いているのでしょう。
同じように、僕らは悪い意味でのプライス・コンシャスなお客さまを、断らなければいけません。そのためにも、自分なりの戦略感を持つことが、どうしても必要です。
少しでも参考になれば嬉しく思います。
そして皆さまの健闘を祈っております。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。