専門コラム 第167話 「売らない営業」とは顧客から「選ばれる営業」のこと
前回の投稿[1]では「売らない営業」について、おおよそさわりの部分についてのみ触れてみました。
今回の記事は前回の続編として、「売らない営業」のより本質の部分に迫っていければと思います。
[1] 『「売る営業」から「売らない営業」への変化と本質』(2021年12月7日に投稿)
「売らない営業」とは顧客から「選ばれる営業」のこと
1 「売らない営業」では営業で必要とされる“壁取り”も不要
ここで簡単に復習です。
営業という仕事を大別すると、「売る営業」と「売らない営業」に二分することが考えられます。
そしていずれの営業スタイルをとっても、あたまから「売り」を匂わせて、お客さまに臨もうとする営業はいません。
つまり従来「売る営業」でも、最低でもアイスブレイク、またお客さまが抱える問題点等の聞き出し経ながら、徐々に「売り」に入っていくのが普通です。
しかし「売らない営業」は違います。
「売らない営業」では「売る営業」に存在するアイスブレイクすら取らない場合もあります。
なぜこのような一見すると奇妙なことが起こるのでしょう。
それは「売らない営業」が、初めからお客さまから「選ばれている」からです。
そのため「売らない営業」とは「選ばれる営業」とも言えます。
「選ばれる営業」というのは、程度の差こそあれ、見込み客に教育を施す行程が挟まれます。
そして教育行程を通じて関係性を深めていくのが「選ばれる営業」です。
不動産業界での話ですが、先日もメルマガを見ていると、 あるクライアントの不動産会社が 4 億数千万もの土地の仲介をお願いされたと言います。
実はこの土地、専任媒介ではないようで、他からも話が入っていたようです。
でもどうせお願いするのであれば、「いつもニュースレターを下さっている〇〇さんにぜひ依頼したい」ということがあったというのです。
こうしたことが実際に起こるのが「選ばれる営業」です。
2 「売らない営業」は説得もプッシュ型営業も必要としない
営業は売る物により、売る場面がさまざまに変わっていきます。
ただどの場面でも共通していることは、売れている営業マンのほとんどが、初めから見込み客に選ばれていることです。
そしてこれも見落としがちなのは、「選ばれる営業」イコール「売らない営業」――つまり売れている営業マン――という事実です。
トップセールスマンたちは、会社が用意している売り手発想の営業ツールを全く利用していないケースが多く見られます。
独自のやり方で好成績を上げている、とよく新聞記事になったりしますが、訪問販売の会社にいながら訪問なんてしない。
紹介だけで数字を上げている。本社が一生懸命用意した販促キャンペーンなどどこ吹く風で、ちゃんと実績を上げているのです。
彼らはすでに売り上げを上げるための本当のやり方を知ってしまっているので、それを知らない会社が何をやろうと関係ありません。着々と我が道を行くのみです。
『営業引力の法則』第 1 章より抜粋
もちろん人によって「売れている営業マン」にも捉え方の違いもあり、なかには従来型の「売る営業」を指す方もいるでしょう。
ただ「選ばれる営業」イコール「売らない営業」のイメージは、「売る営業」に欠かせない説得型営業とは全く無縁の営業スタイルです。
我々住宅営業の場合は、契約する前に比較的長い「プラン折衝」というのもがあります。
そのため否応なく、どのプランが良いかといった商品についての話が出てきます。
しかし細かな折衝を挟まない営業では、極端に言えば金額が予算通りなら、そのまますぐ契約に進むケースもあります。
つまり「売らない営業」では、お客さまは商品ではなく、人を信頼して選んでいるということ。
だから説得もプッシュ型営業も必要としません。
3 どうすれば顧客から選ばれるかを問い直してみる
また捻くれた見方かもしれませんが、「またニュースレターを勧めているだけじゃないの?」と思う方もいるでしょう。
もちろん「売らない営業」「選ばれる営業」を実践するのに手っ取り早いのは、ニュースレターを用いることです。
なぜならニュースレターは、お客さまとの信頼関係を構築するのに最も適したツールだからです。
ただレターを書かなくても、「売らない営業」は成立します。
以前もこちらの記事で書いたように、
“「自分の仕事を販売員として捉えていない」と言い、自分が販売員である前に「眼鏡士(つまり眼鏡の専門家)だと思っている」”
と語ったキルデア・エスコート。
彼女のように、単なる「売り子」ではなくコンシェルジュのような立場で営業という仕事を捉えれば、「売らない営業」または「選ばれる営業」という働き方は十分に成立します。
住宅営業のコンシェルジュとは、建築分野、またファイナンス関連に精通した人といえば良いでしょうか。
どうすれば顧客から選ばれるか。
このことを真剣に問い直す価値は十分にあります。
またその問い掛けはあなたの人生にとって、決して無駄な時間にはなりません。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。