専門コラム 第182話 「モノマネ」や「コピー」こそ、最高の学び
前々回の記事の最後のほうで、
ジャズの世界でも、譜面も理論も知らなくても、素晴らしいアイデアで聴衆を圧倒する、類稀なインプロバイザーがいます。そして彼ら多くは、先人が創造した作品のトランスクライブ(いわゆるコピー)によって、自分の音楽を形成しています。
音楽作品のトランスクライブは、本を繰り返し読むのと同じですね
『大事なのはセールスレターの型やオーダーではない!』 2022.01.13投稿
とういう非常に乱暴な(音楽という他ジャンルの)パラグラフを投げて、話を締めてしまいました。
先回の記事は大変失礼しました。
気分を害された方も多いと思います。
これについては、重々お詫びします。
思い上がってしまい、誠にすみませんでした。
ただ誤解のないよう強調しておきたいことは、文章も音楽も、いわゆるコピー、言い換えれば「モノマネ」によって上達することは確かです。
その辺りを今回、次回と、二度のコラムに分け説明しましょう。
「モノマネ」や「コピー」こそ、最高の学び
1 文章上達を簡単に諦めてしまうワケは?
高額なコピーライティングのセミナーに参加したのに、そのスキルを十分に活かしきれていない方の話をたまに聞きます。
なぜそういう事態に陥るのでしょう。
それは簡単にいうと、大抵の方が「セミナーに参加したのだから、文章が上手く書けるはず」と信じているからではないでしょうか。
ウソのようですが、本当にそう考えている人は意外に多いようです。
そうして日々の忙しさにかまけて、文章上達を諦めてしまう……
ではそれとは逆に、文章が上達する方の特徴といったら、どういうものなのでしょう。
概してそういう方は、高額なコピーライティング、文章上達のセミナーには参加しません。
なぜなら高額なセミナーの多くは、例外を除くと、ほとんどがお金儲けのために金額を設定しているからです。
もちろんセミナーでお金を儲けるのは、主催者の自由意志です。
もちろん、そのこと自体を問題とも言っていません。
ただ、本気で文章の上達を願う方は、代わりに本を読みます。
もちろん、はじめから自分に合った良書には、残念ながらめぐり逢うことはありません。
また同じ文章術でも、国内の作家が書いた文章読本から海外のコピーライターが書いた翻訳本もあります。
そして必然的に試行錯誤を繰り返すでしょう。
でも文章上達のための書物は、必要なときに必ず見つかります。
人はそれを——つまり文章を上手くなりたいと——決めると、最良のタイミングで、理想的な一冊に出会うことが約束されるからです。
また自分に合った良書にはめぐり逢うまでに、彼にとって必要な本にも出会うことになります。
これも出会うと決めた時点で、あらかじめ約束されています。
そして文章が上達のための本にめぐり逢ったとき、その本を先生として、肩身離さず、持ち歩く方もいることでしょう。
つまり、本棚にしまうことなく、鞄から開いで始終眺めるほど、この本を読み込みます。
こういうめぐり合わせが来たら、その人の書く文章は、人を惹きつけて止まなくなるはずです。
というのもこの方は、理想的な一冊に出会い、その書物に書かれた文章を無意識に真似し出したから。
なお本などの文章を真似するのに、いわゆる「写経」のように紙に書き写すという方法もあります。
しかし今回の場合は、ただ端に読むだけで十分です。
2 良書は何も一般書籍とは限らない!
また文章を上達したい方は、はじめに文章術についての良書を探すかもしれません。
もちろんそれも一つの方法ですが、一般の論説や営業に関するビジネス書が、最良の手本となることも十分あります。
またこんなことを書くと、かえって混乱するかもしませんが、良書というのは何も、一般書籍の限らなくてもいいでしょう。
最近のことは詳しくないですが、むかしは雑誌というメディアが、全盛をきわめた時代がありました。
私は前職が住宅関係ということもあり、相当なペースで当時の建築家の書籍を読んでいた時期があります。
特に住宅建築のエッセイストとしても知られる宮脇檀氏の大ファンでした。
おそらく営業マン時代のニュースレターや、このコラムのベースには、少なからずこの時期の乱読の影響があると感じます。
また、聞くところによると、広告代理店に勤務するコピーライターの中にも、マガジンハウスの雑誌や、のちにカタログハウス社から発刊される『通販生活』という雑誌を参考に、文章を構築された方も多いようです。
ですから書籍が苦手という方は、愛読する雑誌を持つのもおすすめです。
いまだと、朝日新聞の「AERA」、「Pen」などが、面白そうですよね。
またニュースレターが来ているということは、雑誌というカテゴリも再評価されるかもしれません。
3 『ダンス・ダンス・ダンス』と「ホンキー・トンク・ウィメン」
真似るとは「真似っ子」など、人を揶揄する表現ということもあります。
なので人によって、あまり良い印象はなかったりします。
しかし何かを学び、ゼロからイチを起こそうとするとき、既にある作品から真似ることは人間が常に通ってきた重要な過程です。
また学ぶとは真似ると同じ語源であって、やり方を「まねぶ」ことから始めるのは、学びの基本と言えます。
筆者は初期の村上作品のファンですが、『ダンス・ダンス・ダンス』には村上春樹氏が敬愛するレイモンド・チャンドラーが描く、孤独な私立探偵、フィリップ・マーロウを彷彿とさせるシーンが幾つも登場し、微笑ましく思います。
また中学、高校時代には、Yくんという、少し太ったギター好きの友人がいました。
その彼が高校に進学すると、ローリング・ストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」を完コピし、バンドで演奏。
そして太っていた頃には想像できないほど、イケている彼女をゲットしていました。
村上春樹氏にも友人のYくんにも、「コピーのたとえ」に使って申し訳ない気持ちでいっぱいです。
しかし、トランスクライブ(いわゆるコピー)は、そのぐらい微笑ましくもあり、時にはパワフルな行為なのです。
もしそれが素晴らしいと感じたら、つまらないセミナーにお金を捨てるのを止め、一冊でも多く自分の愛読書を持ちましょう。
コピーしたくなる文章——いわゆる勉強材料——は、世界に幾らでも転がっています。
(次回に続きます)
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。