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専門コラム 第144話 営業マンもオンリーワンの「ポジショニング」が設定できる

 

先日の投稿[1]で、「基本仕様や家の特徴をまとめたレターは、あなたの会社の経営理念を表す」といったことを述べました。

これはとりも直さず、マーケティング用語でいうポジショニングについても、同時に言及しています。

 

ポジショニングとは、ターゲットである顧客・見込み客に、自社製品——ここでは、家そのものやリフォームなどの建築工事全般——が、いかに魅力的であるかを認知させるための行動です。

 

またポジショニングは、顧客の「購買決定要因」にも——「KBF:Key Buying Factor」ともいいます——深く関係しています。

 

そのいっぽうで、一般的にポジショニングというと、業界における企業の「立ち位置」といった認識が強く、私たち営業には縁遠いものと考えられがちです。

 

ここでは、マーケティングにおけるポジショニングという概念が、個々の営業マンにも設定できるかについて見ていきましょう。

  


 

[1] 『来場者フォローはニュースレターで十分!』

  

  

営業マンもオンリーワンの「ポジショニング」が設定できる

優秀な工務店はポジショニングを知らなくても十分な差別化ができている

  

あらためてポジショニングとは、“自社の家づくりの魅力”を、顧客に理解しやすくまとめたものという冒頭の一節だけで、マーケティングにおける非常に大切な概念と分かります。

 

またこれをまとめた小冊子、あるいはニュースレターが、見込み客のアプローチに使えたなら、その会社は競合に対し大きなアドバンテージを有することになります。

これは何を隠そう、ポジショニングを明確にできる会社が、圧倒的に少ないことを意味します。

 

そのため、拙記事でも「基本仕様や家の特徴をまとめたレター」がない場合は、自己紹介のレターだけでも十分としました。

 

ただ起業の際、ポジショニングを明確にしていなかったとしても、必要に応じポジショニングを整備しておくことが望ましいと言えます。

そうすればたったそれだけで、いとも容易くトップ 20% の仲間入りが果たせるからです。

 

経験から言うと、経営者がポジショニングのことを全く知らなくても、能力のある営業マンを擁している会社は、営業マンが「基本仕様や家の特徴をまとめたレター」を自前で用意しています。

 

そのため、いわゆる「尖った工務店」は、経営コンサルタントやマーケティングの専門家の力を借りることなくポジショニングが整備できています。

 

別の言い方をするなら、ポジショニングなど特に知らなくても、超優秀な工務店はそのユニークなコンセプトにより、業界の競合マップで「オンリーワンの居場所」を確立しています。

もちろんポジショニングの設定などで、慌てることもありません。

  

  

ポジショニングは個々の営業マンにも設定可能か?

 

今回の記事の趣旨は「ポジショニングの深掘り」ではありませんので、この話はここぐらいにしておきましょう。

しかし企業にとって、ポジショニングの明確化が大事ということは、何となくお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

ただポジショニングが企業ごとに整備できても、個々の営業マンにも設定可能かという疑問はどうしても残ります。

 

マーケティングの世界で、一般的に営業マンとポジショニングが同時に語られることはまずありません。

しかし法人と個人との若干の違いはあるものの、考えようによって、ポジショニングらしきものは営業マンにも設定できます。

 

典型的な例をあげると、神田昌典氏の名著『非常識な成功法則[2]』の中の、「やりたくないことを探す」などは大いに参考になります。

 

ちなみにこの本については、昨年度も当コラムに記事を書いています。

もし興味があれば、実際に手に取って読まれても良いでしょう——約 20 年前の書籍ですが、書いてあることは今も十分に伝わります——。

 

本の前半部分で「やりたいこと」を明確にする方法として「やりたくないこと」を探すこと。

そして「やりたくないこと」と「やりたいこと」の決着をつける方法にも言及しています。

「やりたくないこと」と「やりたいこと」の決着については、今も難解な部分が残ります。

しかし「やりたいこと」を探す方法として「やりたくないこと」を見つけることについては、多くの「神田フォロワー」たちがこれを実践しています。

 


 

[2] 『非常識な成功法則〜お金と自由をもたらす 8 つの習慣〜』神田昌典著

  

   

営業マンのポジショニングは「やりたくないこと」を書き出すだけ!

  

もちろん神田氏は、営業マンのアイデンティティやポジショニングに、「やりたくないこと」をわざわざ書き出そうと言ってはいません。

 

ただ「やりたくないこと」を明確にすることで、営業マンとして「やりたいこと」がハッキリすると言っているのです。

このことは会社のポジショニングにも大いに役立ちます。

 

また神田氏は「やりたくないこと」を書き出すと、結果的に人生のミッション(目的意識)も考え始めると言っています。

本書が手元にない方でも、「やりたくないこと」を書き出してみてほしいと思います。

 

ちなみに本書の中で、神田氏は「やりたくないこと」を以下のように設定しています。

 

  • お客にへこへこしない。
  • 在庫を持たない。
  • アフターサービスが必要なものは売らない。
  • 正社員は採用しない。
  • 身をすり減らすような仕事はしない。
  • いやな会社や、人とは取引しない。
  • コールドコールはしない。
  • 無料でアドバイスはしない。
  • 下請はしない。

 

もちろん上記は、マーケティングでいう所のポジショニングではありません。

 

しかし「やりたくないこと」を明確にしなければ、本当のポジショニングにはなかなか到達できません。

 

『非常識な成功法則』で出てくるベティ・エドワーズという美術教師は

「親指を描きたいなら、親指を描こうとしてはいけません」

「親指を描くなら、親指の周りの空間を描きなさい」

と言ったようです。

 

そしてこのプロセスは

「やりたいことを見つけたいなら、やりたいことを見つけようとしていけません」

「やりたいことを見つけるなら、やりたくないことを見つけなさい」

とも言い換えられます。

(『非常識な成功法則〜お金と自由をもたらす8つの習慣〜』より一部抜粋)

 

それと同様に、自分自身のユニークさを分かりやすく伝える場合も、まず「やりたくないこと」を見つけることが真実に近づきます。

 

こうすることで、顧客にとっても価値があり、なおかつオンリーワンなポジションを、個人でも会社でも設定できるでしょう。

 

少し長くなりましたが、何かの参考になれば幸いです。

   

  

 

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。