専門コラム 第288話 営業はテクニックではなく「人柄」で差がつくという話
筆者はあまり営業の動画を見ないことにしています。
理由は簡単です。大抵の動画はテクニック論を伝える内容だからです。
ただ偶然、おすすめに上がっていた営業の動画をたまたま開きましたら、この動画[1]は違っていたんですね。
動画のタイトルは『【一流の営業コツ】トップ営業と売れない営業の差はここ(元リクルート 全国営業一位 研修講師直伝)』とあります。タイトルからすると「また、お定まりのテクニック論か」と思いましたが、「営業はテクニックではなく人柄で差がつく」という内容。 思わず引き込まれて、筆者はこの動画を最後まで一気に見ていました。
[1] [【一流の営業コツ】トップ営業と売れない営業の差はここ](https://www.youtube.com/watch?v=C2nKW-4BTZQ)
営業はテクニックではなく「人柄」で差がつくという話
1 いつまで住宅業界は自分たちを「クレーム産業」と言ってられる?
あらためて紹介すると、動画のナビゲーター役を務めるのは元リクルートの営業マン。
現在は研修トレーナーとして活躍している伊庭政康さんという方です。
内容は「トップ営業と売れない営業の差」について論じています。
伊庭さん曰く、トップ営業と売れない営業の差はどこにあるかと言うと、「営業はテクニックではなく人柄で差がつく」のだと言います——ぜひ動画も、一度ご覧になることをおすすめします。
とても言いにくいことを、ここまで気持ちよく語っている点を筆者は大いに評価するとともに、もちろんこの意見に強く同感します。
なぜ「人柄」と言いにくいのか。
それは営業という仕事は未だにズルい人、人を平気で騙す狡猾な人が勝つ世界だと、暗黙のうちに決めていることろがあるからです。
またそうじゃなくても、人のため、世のためという思いで営業続けていることを揶揄する人もいます。
確かに従事する業界によって、そういう世界もあるとは思います。
それを筆者も否定はしません。
神田昌典氏も初期の著作で、創業時はとにかく数字を積み上げることに徹するべきと言っています。
かつては神田氏を敬愛していた人間です。それもじゅうぶん分かるつもりです。
ただ拙い経験から言えることは、稼ぐことに躊躇して、正規の対価をお客さまに請求しない(つまり値引きばかりする)ということでないければ、営業はやはり人柄、人間性で差がつくのだと思います。 特に我々が関わる注文住宅(新築・リノベーション)は、引き渡し後のアフターも深く関わってきます。売りっぱなし・工事しっぱなしでとても身が保ちません。
また、いつまでも自分たちが関わる業界を「クレーム産業」とふんぞり返っていては、他の業界からバカにされてしまうでしょう。
2 仕事は「我」を手放す修行
この動画は、伊庭さんご自身が現役営業時代に研修で見たという、映画『てんびんの詩』をモチーフに展開されていきます。
なお映画『てんびんの詩』は、イエローハットの創業者、鍵山秀三郎氏の資金援助を得て作られた「(かの「三方良し」で有名な)近江商人」の映画だそう。そして企業研修や営業研修などでもよく使われているようです。
筆者はこの映画を見たことがなかったのですが、ブログを検索し作品をイメージすると、どこかオグ・マンディーノの『世界最強の商人』に通ずるものを感じました。
ただ作品は見ていませんので、もちろん映画について細かく言及はできません。
それでも動画で伊庭さんが指摘した、つまり、大作(近江商人のご子息)が洗い場で商品の鍋蓋を磨きながら「堪忍して下さい。わし悪いやつです。売れんかったんやないんです。物を売る気持ちもできてなかったんです」(映画『てんびんの詩』公式サイト[1]からの抜粋)と吐露する場面で、不覚にも涙をこぼしてしまいました。
そしてあるブログには、下記のような素晴らしい意見が書かれていましたの、皆さんと共有したいと思います。
私がこの映画を見て感じるのは、まず第一に仕事は「我」を手放す修行だということです。
商いは大作少年のお父さんの言葉にあるように、売り手と買い手の思いが釣り合った時に成立するのですが、ともすれば売り手は自分の都合を優先して売ろうとする。 しかし、それでは物は売れません。
買い手の立場に立てて、初めて物を買っていただくことが出来る。
その立場に立てるようになるためには、売り手は自分の都合、即ち「我」を手放なす過程が必要なのです。
その過程が修行なのです”
(映画「てんびんの詩」に学ぶこと[1]|社長ブログ|森長工務店より抜粋)
このブログはそれ以下にも、人間的成長や「愛」についての深い洞察が、驚くような高い波動で書かれています。
筆者は、別の意味で森長工務店様にも、興味が出てしまいました。
[1] [映画『てんびんの詩』公式サイト](http://tenbinnouta.ciao.jp/)
3 人間的成長とは何か
筆者は以前から、波動を高く保つには「相手の立場に立つことが重要」と説いてきました。
上記に引用させていただいたブログ記事には、まさにその深い意味が書かれています。
つまり
その立場に立てるようになるためには、売り手は自分の都合、即ち「我」を手放なす過程が必要なのです。
その過程が修行なのです。
と。
そしてこのブログでは、こうも言っています。
相手の立場に立てるようになるということは、自分のことしか分からない「おめでたさ」を削りとることであり、これこそが人間的成長なのです。
(映画「てんびんの詩」に学ぶこと|社長ブログ|森長工務店より抜粋)
大作は鍋蓋を抱えて行商に出ますが、人間的にはまだ幼いため、どんなにあがいてもモノ一つも売れない現実を知ります。
そして「物を売る気持ちもできてなかった」自分の甘さを認め、ある農家の女性(この方がこの行商で得た初めてのお客さま)の目の前で泣き崩れます。
そうすると不思議なもので、今までピクリとも動かなかったモノが自然と動き出します。
このことを教えるため、営業は初めの一棟を、飛び込みで掴んでこさせる会社(積水ハウスなど)があるのです。
営業の人としての成長は人柄に反映されます。
だから営業は、テクニカルなトーク術より人柄を見られるのです。
「営業はテクニックではなく人柄で差がつく」とは、そういうことです。
久々に、見応えのある動画(そしてブログ)に出会いました。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。