専門コラム 第48話 業界内外から圧倒的支持を受けるようなヒーローになる。
十五少年漂流記に見るリーダー像
子どもの頃に読んだ「十五少年漂流記」は、当時の私のお気に入りの1冊でした。
ジュール・ベルヌ作の冒険小説で、8歳から14歳の米英仏など出身の少年15人と愛犬だけが乗った帆船が南太平洋を漂流して無人島に漂着。
子どもたちは知恵を絞って生き抜いた末、2年ぶりに故郷の土を踏み、驚きと歓喜をもって迎えられます。
ストーリーは断片的にしか覚えていませんが、今も強く印象に残っているのが、2人のリーダーのスタイルの違いです。
無人島を自分たちが通っていた学校名と同じ「チェアマン島」と名付けた子供たちは、それぞれの役割分担を決めたうえ、午前と午後の各2時間、年上の子供が小さい子供に勉強を教えるなど、規律正しい生活を送ります。
それに先立って決めたのが「大統領」です。
初代には最年長のゴードンが、1年後には1歳年下のブリアンが2代目に選ばれます。
ゴードンはまじめで沈着冷静。仲間同士のトラブルに仲裁に入るなど年下の子供たちの信頼を得ていました。
ただ、几帳面なあまり決まりにうるさく、やや融通が利かない点が下の子どもたちから、時にうっとうしがられます。
一方のブリアンは勉強嫌いだけれど頭の回転は速く心豊かで、下級生を助けるためには上級生とけんかすることもある熱い面を持つタイプで、みんなに慕われています。
2人とも、責任感があって下級生=弱い立場の人を思いやれるという共通点はありますが、まじめ一辺倒でも下はついてこないんだな、と思ったことを覚えています。信頼されることと慕われることは別なんだ、とも。
ゴードンとブリアンの、どちらがリーダーにふさわしいかを論じるのは意味がありません。
置かれた状況によって求められるリーダー像は異なるのですから。ただ、人は自分にないものに憧れるものです。
あなたはどちらのタイプでしょうか。
米大統領が指摘するリーダーの資質
世界のリーダーと言えば、アメリカ大統領はいつの時代でも外せないでしょう。
トランプさんには疑問符がつける人もいるかもしれませんが。
歴代の大統領はリーダーシップについて、含蓄のある言葉を残しています。
リーダーとボスの違いは何かと問われれば、リーダーの仕事は開かれているが、ボスの仕事は隠されている。リーダーは導くが、ボスは強いる。
これは、前任者の暗殺により、現在でも最年少の42歳という若さで第26代大統領に就任したセオドア・ルーズベルトの言葉です。
日露戦争の停戦を仲介し、その功績でノーベル平和賞を受賞しています。
今でも歴代の中で偉大な大統領の一人に位置付けられています。
中間管理職と真のリーダーシップとの微妙な半歩の違いは、プレッシャーの下で優雅さを保てるかどうかだろう。
こう言ったのは、第35代大統領のジョン・F・ケネディです。
ダラスで暗殺された悲劇の主人公として、「JFK」の名前は歴史から消えることはありませんが、「優雅」という言葉を使うところなどは、祖父から続く政治家の家系に生まれた、いわばサラブレッドらしさを感じさせます。
ケネディの前任者、第34代大統領のドワイト・アイゼンハワーにはこんな言葉があります。
ユーモアのセンスはリーダーシップに必要なものであり、処世術であり、物事をうまく運ばせる方法である。
3人の言葉ともに堅苦しさはなく、どこかにユーモアや皮肉っぽさが漂うあたりは日本人と違うと思わせられますが、それも当然と言えば当然です。
リーダーシップはその人が属する集団によっても、求められるものが異なるのですから。
国民性や宗教、道徳観をはじめ風土や歴史によっても違ってくるものなのです。
ただ、アップル社の創業者、スティーブ・ジョブズの次の言葉は、どんなリーダーにも共通するのではないでしょうか。
優れた人材には束ねる重力のようなものが必要だ。
その「重力のようなもの」に当てはまるピースはたくさんあるでしょう。
ビジョン、想像力、洞察力、実行力、責任感・・・。
それらとともに、私はブリアンに感じる包容力と明るさが欠かせないと思っています。
「ミスター」こと長嶋茂雄さんはこう言いました。
チームコンダクターっていうのは、いつも顔色をよくしとかんといかんのですよ。
コンダクターが暗い顔をしていたんじゃしようがない。
体調をよくして、いつも元気いっぱいなところを見せないと、選手たちはついてこないし、チームも元気がなくなるもんです。
苦労の一つ一つが、より華やかな成功を呼び寄せている
組織にリーダーが必要なことは言うまでもありません。
会社の中でもチームごとにリーダーはいます。
しかし、必ずしも望んでリーダーになる人ばかりではないでしょう。
年次や役職が上、経験豊富、あるいは敵をつくらないタイプとか見た目でリーダーに祭り上げられることもあります。
ある程度責任感のある人なら、そんな場合でも、何とかみんなをまとめて一つの目的に進むべく努力をするでしょう。
ただ、リーダーに就いたからといって、だれもがリーダーの資質を完璧に備えているとは限りません。
ですから、苦労します。
周りのできる人と比べて、自分の力の至らなさに落ち込んだ経験のある人は多いのではないでしょうか。
しかし、マイクロソフト社の創業者、ビル・ゲイツはこう言っています。
自分のことを、この世の誰とも比べてはいけない。
それは自分自身を侮辱する行為だ。
自分がその器でないと思いながらリーダーのポジションにい続けるのはつらいものでしょう。
でも、そうした状況下で全力を尽くして経験を積むことで、リーダーとしての資質が磨かれ、自信もつきます。
そうなると、活動のステージが広がってきます。
と同時に、発想も広がり、自分がより大きな成功を遂げる姿も描けるようになってくると思います。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズは世界が認める成功者です。
だれもがそんな存在になれるはずはありませんが、身近な世界や自分が属する業界内で認められる成果を挙げることなら、可能でしょう。
その手段はいろいろあるはずです。
スティーブ・ジョブズはこう言っています。
「優れた芸術家はまねをし、偉大な芸術家は盗む」とピカソは言った。だから、すごいと思ってきたさまざまなアイデアをいつも盗んできた。
こう言ってもらえると、少しは肩の力が抜けるのではないでしょうか。
もちろん、盗むためにもアンテナを張り巡らし、常に未来を洞察する目を持たなければなりませんが、あなたにも気付かないうちにそうした力が備わっているはずです。
リーダーのポジションで奮闘してきたあなたにこそ言いましょう。
これまでの苦労の蓄積は、より大きな成功をすぐ近くまで呼び寄せています。
あなたは、もうひと踏ん張りして、業界内外から圧倒的支持を受けるようなヒーローになりたくありませんか。