専門コラム 第49話 威厳を持って周りをリードし、人生をより充実させる。
AKB48の選抜総選挙が決める〝センター〟
中国の映像を見れば分かりますが、中国語では「〇〇センター」は「〇〇中心」と表記されます。
中心はセンター。
野球のセンターもライトとレフトの間にありますが、センターと言えば、AKB48グループの選抜総選挙を想い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
シングルの楽曲を歌うメンバーを選ぶ一種の人気投票で、1位になると前列中央、いわゆるセンターポジションを取れます。
AKBはメンバーが多く、いつも全員が出演することはできないため、楽曲ごとにプロデューサーの秋元康さんやスタッフがメンバーを決めていたそうです。
これに対して、「同じメンバーばかりが選ばれる」といった不満がメンバーやファンの間で募っていったため、ファンによる投票というスタイルが取られるようになったといいます。
投票結果は人気のバロメーターですから、メンバーの誰もが1位を獲得したいでしょう。
ファンはファンで、推しメンのランクを引き上げたくてあの手この手を使います。
そうした中で、不協和音が起きたり、1位のメンバーに対するやっかみが生まれたりするのは、半ば当然と言えるでしょう。
しかし、芸能界はあくまで人気商売ですから、センターを目指すのは当然ですし、ファンのあの手この手も含めて人気度の現れと考えると、1位はもとより新曲メンバーに選ばれなかった他のメンバーも従わざるを得ません。
これがチームで進める仕事だったらどうでしょう。
メンバーの中に、いつも自分が中心でないと嫌だ、納得できないなどという人がいれば・・・。
「自己チュー」の弊害
常に中心にいたい、一番になりたいという人には、共通する性質があります。
- プライドが高い
- 他人には厳しいが自分には甘い
- 周囲の目を気にしがち
- 視野が狭くわがまま
- 感情をコントロールするのが苦手
などです。
こうした性質が、
- 他人がほめられたら嫉妬し、他人からの注意を受け入れない
- 気配りができず自分の話ばかりする
- 他人の仕切りに文句をつける
- 間違いを指摘されると怒る
- 気分次第でなれなれしかったり無視したりする
といった態度を招きます。
仕事の面では、自分でやった方が速いと思って周りの人に任せられなかったり、こんな風に言えば相手が傷つくから言い方を変えようといった心配りを欠いた言動をとったりしがちです。
また、上には媚び、下に対しては自分の好みによって差別的扱いをするのも、よく見られる傾向です。
常に自分が中心でいたい人すべてに、ここに挙げた全部が該当するわけではありません。
また、無自覚のままこうした行動をとっている人も多いでしょう。
しかし、周りからは面倒くさい人、信用できない人、疲れさせられる人といったマイナス評価を受けやすいということは指摘しておかなければならないでしょう。
実は、ここに例示したことは、自己中心型人間、いわゆる「自己チュー」な人の特徴です。
常に自分が中心でありたいと思っている人は、大なり小なり、周りから自己チューな人と批判的に見られていることに気づかなければなりません。
自己チューな人を上司に持てば、部下は大変です。
気分次第、相手次第で態度や評価基準が変わり、優れた提案を検討もせずに却下するような上司と一緒に仕事をしたいとは思わないでしょう。
仮に、自己チューであっても優秀な成績を挙げている人がいれば、営業トークがうまいとか独自の人脈をもっているとか、マイナス面を補う以上のストロングポイントを持っているのでしょうが、チームでの仕事には向きません。
ですから、チームを任された途端に、こんなはずではなかったという事態を招くことが多いのです。
そんな時に、自分の欠点に気づければいいのですが、自己チューな人は往々にして、うまくいかないのはダメな部下のせいだと責任転嫁してしまうので、始末が悪いと言わざるを得ません。
自信が生むオーラ、威厳
心理学的に分析すると、常に自分が中心でありたい人、一番になりたい人というのは自分に自信がないのだそうです。
うまくいっているときに自信過剰なほどに見えるのも、その裏返しだといいます。
周囲の目を気にしたり、わがままであったり、感情をコントロールできなかったりするのは自信がないことの表れといわれれば、なるほどと思います。
虚勢を張っているのです。プライドが高いというのも同じことでしょう。
そう思えば、インド独立の父と称されるマハトマ・ガンジーの次の言葉は説得力があります。
弱い者ほど相手を許すことができない。許すということは強さの証しだ。
周りを見渡してみてください。
本当に仕事のできる人、チームリーダーとしてだれからも認められている人は、堂々としていませんか。
苦しい局面で試行錯誤はしても、その苦悩や苦労を心無い言動で部下にぶちまけるといったことはないでしょうし、やむを得ない御簾なら許す強さを持っているはずです。
彼らは、フォロワーがあってこそのリーダーであることを自覚しているのです。
AKBのセンターをファンというフォロワーが創り出すのと同じように、部下をはじめ周りに支えてもらって今の自分があることが分かっているのでしょう。
常に自分が中心でありたいのならば、自分の弱さに目を向けて、謙虚でありたいものです。
そうして初めて、周りの力をチームの力として一体化できるのだと思います。
AKB48と同じアイドルグループ、乃木坂46に「ジコチューで行こう!」という歌があります。
歌詞を見てみると、「自己チュー」とは微妙に違います。
こちらは、「人生はあっという間だから周りなど気にせず、やりたいことをやろう」という前向きの応援歌になっています。
だから、「嫌われたっていいじゃないか」というフレーズにも、物事を打開したいという欲求が感じられます。
常に自分が中心でありたいなら、「自己チュー」ではなく、これぐらいのポジティブさを持ちたいものです。
ドイツの文豪、ゲーテはこう言っています。
自分自身を信じてみるだけでいい。きっと生きる道が見えてくる。
センターに立つアイドルはオーラが感じられるといいます。
大人のビジネスの世界なら、威厳と言い換えてもいいかもしれません。
威厳を生むのは、謙虚さと努力、そして感謝に裏打ちされた自信なのでしょう。
あなたは、威厳を持って周りをリードし、自らの人生をより豊かで充実したものにしたくありませんか。