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専門コラム 第41話 住まいに関する意識に世代間格差はない?

20~30代でも8割近くが家を持ちたがっている・・・

日本人は「世代論」が好きな傾向があり、昭和はこんな時代、平成はこうだったと、よく総括されます。

令和も2年に入りましたが、終わるときにはどのように評価されるのでしょうか。

 

そんな世代別の「生活価値観・住まいに関する意識調査」結果を、カーディフ生命が発表しました。

調査対象の2156人を

  • 平成生まれ及び主にゆとり教育を受けた「平成世代」(25~34歳)
  • 主にバブル崩壊の影響を受けている「ロスジェネ世代」(35~49歳)
  • 主にバブル景気時に就職した「バブル世代」(50~59歳)

の3つの世代に分類して、その傾向を比較しています。

 

これから家を買ったり建てたりする中心層となる平成世代について見ると、「家を買う」「車を買う」はいずれも78%。

現在感じている不安で最も大きかったのは「老後資金」で86%を占め、次いで「自然災害」(83%)でした。

ただ、これらの項目は、ロスジェネ世代、バブル世代もほとんど同じ数字でした。

  

世代間で差が見られたのは、「住宅に関する価値観」を尋ねた項目で、「家族が団らんする場所」を挙げたのが、平成世代の53%に対して、ロスジェネ世代は43%、バブル世代は44%。

また、「家族が思い出を刻むもの」を選んだのも平成世代では40%に達し、ロスジェネ世代の29%、バブル世代の26%を大きく上回りました。

 

逆に、「老後も暮らせる安心感を持てるようにする」は38%で、バブル世代より15ポイントも少なく、「経済的な財産・資産」を挙げた人も25%で、バブル世代を6ポイント下回りました。

 

一方、住宅ローン返済への不安(住宅ローン利用者に限る)は平成世代から順に74%、70%、58%と、年齢が上がるとともに減っていきました。

おそらくローンの残余年数が少なくなっていくことに伴うものでしょう。

 

不安の理由として挙げたのが、「病気やけがによる収入減」が58%、「急な出費の発生」50%、「リストラや配置転換などによる収入減」35%などで、他の2つの世代と変わりはありませんでした。

 

老後や自然災害に対する不安をどう穴埋めするか

これらの調査結果をどう受け止めればいいのでしょうか。

 

最近の若者はモノを欲しがらなくなったと言われてきただけに、20代半ばから30代半ばのうち8割近くが家や車を買う気持ちを持っていることが意外でした。

また、家の価値観についても、平成世代に多かった「家族団らんの場」や「家族の思い出」という回答には、むしろ昭和に通じるノスタルジックな一面が感じられ、少し驚かされました。

 

また、現在感じている不安として、3世代ともに「老後の資金」(86~88%)、「自然災害」(80~83%)を上位に挙げたのは、昨年注目された「老後2000万円」問題や、台風や大雨などの自然災害の多発という昨今の傾向が強く影響していることをうかがわせます。

 

総じて、年齢による違いこそ一部にあるものの、住まいに関する意識としては世代間でそれほど差はないと言えそうです。

逆に言えば、家を持つというのは大きな買い物だけに、老後や自然災害に対する不安をどう穴埋めしていくかが問われるということです。

 

自然災害の多発と火災保険見直しの動き

この意識調査の発表と時を同じくして、損害保険大手グループ3社が、住宅火災保険の見直しを検討するというニュースが共同通信から配信されました。

背景にあるのはやはり、自然災害の多発です。それにより保険金支払額が増え、収支バランスが崩れていることに悲鳴をあげる損保会社が、背に腹を変えられなくなって見直しを決めたようです。

 

見直しの中身は、

  • 最長10年の契約期間を短縮し、保険金支払額に応じて保険料を柔軟に設定する
  • 現在でも都道府県別に差をつけている保険料率を、さらに個別の住宅に関して、河川や背後に急斜面があるなどの被災リスクを、加入者ごとの保険料に反映できるようにする。

ことが柱になると見られています。

 

火災保険とはいうものの、補償対象には火災だけでなく落雷や爆発、風や雪による被害などが含まれ、水害が対象になるものもあります。

確かに、これだけ毎年のように大規模な風水害が起こると、損保会社が何とかしないと、と考えるのは無理のないことでしょう。

 

ただ、契約者、すなわち家の持ち主にしてみれば、大半が負担増につながるでしょう。したがって、今後は火災保険の比較なども綿密に行うようになると思われます。

前述したように、仕事や自然災害などで将来不安がじわり広がっているだけに、住宅ローンに加えてのしかかる固定費の支出は少しでも抑えたいと考えるからです。

 

新築した場合、建築会社が窓口になって、提携している損保会社の火災保険に入るケースが多いでしょう。

しかし、これまでのように勧められるままに加入する人は減っていくことが予想されます。

ネットを使って自分で調べることも容易ですから。建築会社としてもこうした変化を念頭に置いておく必要があるでしょう。

 

家を持つことで前向きに変化できる

もう一度、カーディフ生命の意識調査に戻りましょう。

 

住宅購入者を対象にした「住宅購入後の意識の変化」という調査項目(複数回答)もありました。

この回答に、平成世代と他の2世代との間では大きな違いが見られます。

住宅購入を契機に、意識がとても前向きに変化した点です。

 

たとえば、「住宅ローン返済のため、仕事を頑張るようになった」はロスジェネ世代の49%、バブル世代の41%に対して、平成世代は68%。「会社や制度に対する知識が高まった」はそれぞれ51%、45%に対して66%を占めました。

 

このほか、「自宅に友人や家族を招くようになった」「外出が増えた」も、平成世代は他の2世代を大きく上回り、「地域イベントなどコミュニティに参加するようになった」は半数近くを占め、他の世代の倍かそれ以上にのぼっています。

 

これらの調査結果から見えてくるのは、経済格差の拡大や自然災害の多発といった、いわば自分の手ではどうしようもない課題に対する警戒心は抱きながらも、家を持つことで自分のライフスタイルや生き方そのものを変えたいという気持ちの強さです。

 

それは、ロスジェネ世代もバブル世代も、家を持った当時は同じように抱いていたものだったのではないでしょうか。

つまり、家が夢をもたらし、さらに育むためのバックボーンであるという点においては、平成世代の人たちもそれ以前の人たちと変わらないということです。

 

そんな家だからこそ、家を持つ方としては失敗したくはないでしょう。

そして、注文住宅に携わる我々は、全力を尽くしてその気持ちに応えることを肝に銘じなければなりません。