専門コラム 第180話 大事なのはセールスレターの型やオーダーではない!
以前こちらのコラムに、
そして、
というタイトルの記事を上げました。
これらは主に特にセールスレターの書き方、その構成・オーダーの代表例を、書籍*1から抽出し、まとめたものです。
ただ、これらのセールスレターの雛形、あるいはテンプレートのようなものは、書いた自分が言うのもおかしな話ですが、それほど役立つものではありません。
というのは、実際のセールスの現場で「6 フレーム」や「PASONAの法則」が使える場面は、概して限定的です。
特に住宅の場合は、折衝期間が非常に長いこと。
そして商談ではなく、より「打ち合わせ」に近いニュアンスが繰り返されます。
また、書籍に登場するアウディジャパン販売の田中大樹氏も言われていますが、
お客様のベネフィットを想い続け、手紙を書いていると、成績が上がり、自然と手紙の技術が身に付いたのだ
『最強のコピーライティングバイブル[1]』より抜粋
といいます。
つまりアウディ車のセールスマン田中氏は、「6 フレーム」のことなどつゆ知らず、自身のセールスレターを仕上げていたのです。
[1] 神田 昌典、横田 伊佐男 (著)『最強のコピーライティングバイブル』(ダイヤモンド社 2016/4/14)
大事なのはセールスレターの型やオーダーではない!
1 やるべきなのは「お客様のベネフィットを想い続け、手紙を書く」こと
これは、田中氏ほどのトップセールスになると、特に意識せずとも、自然とセールスレターのオーダーどおりの文章が書けるという、典型的な好例です。
また多くの場合、セールスレターの型やオーダーが自分の商売の役に立つのは、マーケティングを生業としているマーケッターか、またはマーケティングブログ作っているサイト運営者がほとんどです。
なぜなら、彼らはそれらの知識をブログに掲載し、またアレンジしたものを無料オフファーとして使えるから。
しかし営業マンやセールスマンがこれをやり出すと、ロクなことがありません。
それは私たち営業のウリ——仕事といっても良い——は、知識や無料オフファーではなく、お客さまの信用そのものだから。
たしかに効果を示す場面も、在るにはあるでしょう。
しかしそれらは先も言ったとおり、非常に限定的です。
別の言葉を置き換えると、その知識を水平展開できるのは、非常に限られるということ。
じゃあ、営業マンやセールスマンが、やらなくてはいけないのは何か?
それは、いみじくもアウディのトップセールスの言った「お客様のベネフィットを想い続け、手紙を書く」こと。これに尽きます。
上記の四つの記事も、せっかく書いたものですから(笑)、知識として、ひととおりり目を通すぐらいはしていただきたいところ……
ただ繰り返すようですが、セールスマンが雛形やテンプレートなどに凝り出すことは、ある意味で非常に危険です。
それだったら、寧ろ、実際に効果の高かった文例集や、営業やマーケティングの古典に触れてみることをお勧めします。
そして繰り返し「お客様のベネフィットを想い続け、手紙を書く」ことを続けてください。
2 とにかく「営業は本を読め」
文章が上達するのは、喋るのと同じで、どれだけ多くの方に向けて書いたかに尽きます。
特に手紙は、届ける相手がいた時に本領が発揮されます。
そして、そのとき活きて来るのが、これまでどんな文章を読んできたかです。
読んだ本の数が少なくても、古典や一般に評価の高い本物に文章に何度も触れておく。
そうした人が書くものは、やはり出て来るものが自ずと違います。
今はどうか知りませんが、むかしはとにかく「営業は本を読め」と言われたものです。
たしか周りにも、読書家の営業は多かったと記憶しています。
ある月曜日のこと、会議の帰りの車中で、高校時代ボクシング部に所属していた、ある営業マンと二人だけになり、たまたま読んでいる本が一緒で意気投合し、随分と話が盛り上がったことがありました——この方は営業成績もそうですが、顔に似合わず字も大変綺麗で、それがとても羨ましかった。
文章が上手くなりたいことはよく分かります。
ただPREP法などは良いとしても、セールスレターで言うところの型やオーダーの類を追っているだけの営業では、どちらがお客さまの心に届く手紙を書けるか、営業なら気づきそうなもの。
3 型や技術的なことは一旦忘れる!
しかも今回取り上げている「6 フレーム」や「PASONAの法則」は、クロージング型のセールスレターの一種です。
しかし私たち普段使うレターは、クロージング型のレターではありません。
あえて言うと、「セールス色」を外した解説型のセールスレターと呼んだほうがいい。
特に折衝の初期段階でお客さまに送るのは、資金計画のセールスレターや業者選定についてのレターです。
だからと言うわけではありませんが、本人は「6 フレーム」や「PASONAの法則」は理解していますが、それら技術的なことは、一旦忘れるようにしています。
またクロージング型のレターを書く場合にも、同じです。
下手に技術的な面が際立つと、肝心なことがお客さまに伝わらないからです。
別のところでも書きましたが、音楽も文章も、理論というのは常に後付けで成り立っています。
「6 フレーム」や「PASONAの法則」があって文章ができたのではありません。はじめに心に響く文章があって、スタイルや理論が後から付いてきたということです。
ジャズの世界でも、譜面も理論も知らなくても、素晴らしいアイデアで聴衆を圧倒する、類稀なインプロバイザーがいます。
そして彼ら多くは、先人が創造した作品のトランスクライブ(いわゆるコピー)によって、自分の音楽を形成しています。
音楽作品のトランスクライブは、本を繰り返し読むのと同じですね。
もしあなたが、文章が本気で上手くなりたいと思うなら、自分の好きな本——文体と言ってもいい——に出会い、その本を何度も繰り返し読むことです。
そうすれば、一人でも多くの人に届く手紙が書けるようになるでしょう。
皆さんの健闘を祈っております。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。