専門コラム 第140話 優秀な営業ほど自分の顧客を選んでいる
もう少し先のことと想像しますが、営業も淘汰される時代が来ると、各方面で耳にします。
ただこれは営業職に限ったことではありません。
現状では、医療従事者を除くほぼ全ての業種で「人材の淘汰」が始まるでしょう。
ただそうした流れに関係なく生じそうなのが、肝心な時に営業がいないことで、優良顧客が被る不利益です。
特にこれが顕著に表れそうなのが、保険、金融、住宅、不動産など、一般に購入が難しいとされる分野です。
優良顧客の定義について、ここで詳しく説明はしませんが、一般に良い顧客を多く抱える営業に定年はありません。
当然、淘汰の煽りを受ける心配もないでしょう。
しかし相変わらず売り込むだけの営業、間違ったやり方を続ける方に、未来は微笑んではくれません。
あなたなら、どちらを選びますか?
優秀な営業ほど自分の顧客を選んでいる
「営業しないこと」というのが職業選択の一番の理由に
ただ概して日本人(もちろん欧米でも同様なのですが)は、営業という職業を遠ざけたがります。
先日も朝のテレビで、教職員のメリットとして「営業しないこと」というのが、トップに上がっていました。
この番組は「教職員の危機」を伝えようとするもので、内容は「土日返上でプライベートがない」など、様々な隠れた仕事環境の現状が、職員の声として暴かれる(?)仕立てです。
まあ、いかにもテレビらしい切り口ですが、その教職員のメリットが「営業しないこと」となっていたのを、なんとも不甲斐なく感じました。
それと同時に「やはりそう来たか……」という思いで番組を眺めていました。
ただこのコラムを読んでくださっている方は分かると思いますが、ここで一貫して伝えていることこそ、いわゆる「営業しないこと」なのです。
ただ実際の営業現場は、いまだに売り込むことが営業の主流なのでしょう。
どうやらそう考えた方が良さそうなのと、この分では、早晩営業という仕事はなくなる日も近いと、あらためて考えさせられる一件でした。
優秀な営業は分野を問わずその道の「コンシェルジュ」
ただ真実は、優秀な営業ほど、顧客に対し決して売り込んでいません。
また自分の顧客にする相手を、冷静に選んでいます。
そしてこのことは、今も昔も全く変わりません。
ですから、先程の教職員の話で出て来る営業は、正確には売上のプレッシャーに怯える「冴えない営業」のことを指している可能性があります。
また冒頭のところでも触れましたが、優秀な営業は「保険、金融、住宅、不動産など」に必ずしも限定されません。
以前紹介した『GIVE & TAKE: 「与える人」こそ成功する時代』に登場するキルデア・エスコートという女性「ギバー」は、眼鏡店の販売スタッフです。
彼女はインタビューの中で「自分の仕事を販売員として捉えていない」と言い、自分が販売員である前に「眼鏡士(つまり眼鏡の専門家)だと思っている」と語っています。
このような優秀な営業、またコンシェルジュのような立場を担う方は、これまでどおり、仕事がなくて困ることはありません。
ここから言えるアドバイスがあるとすれば、意欲のある方、また営業という仕事に誇りを持つ方は、彼女のような領域を目指したほう得ということです。
なぜ優秀な営業ほど自分にとっての優良顧客を選ぶのか?
では、どうして優秀な営業は、何故優良顧客を選ぶのでしょう?
どんな営業にも駆け出しの時期があります。
そしてはじめは誰もゼロスタートですから、モラルに反しない方なら、人を選ぶことなく見込み客として契約します。
そしてある時点まで行くと、お客様からのクレームやトラブルに巻き込まれ、売り上げ不振に陥ります。
これは誰もが一度は通る道です。
中にはそれが原因で、会社を去っていく人もいます。
これが営業という仕事の「難しさ」です。
そしてこの時、営業は考え、決断します。
「営業を長く続けるため、顧客を選んで契約しよう」と。
これは企業の運営を考えれば分かります。
会社も自社にとって危険な相手とは取引しません。
営業も同じです。
限られた数行ではとても書き切れないので、多くのステップは端折りました。
しかし、多かれ少なかれ、営業経験者なら理解できるのではと想像します。
これって、最初のテレビの情報番組であがっていた、営業のイメージとかけ離れていませんか?
駆け出しの頃のように、お客様を追いたい気持ちは、営業なら十分理解できます。
しかしいつまでもその調子では、営業という仕事も放浪者と大して変わりません。
皆さんの健闘を祈っております。
記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇
弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。
営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。
また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。