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専門コラム 第139話 展示場を中心とした営業の進め方【まとめ編】

 

少し長くなりますが、「振り返り」の意味を込めて、前回投稿した後半の一節を再度取り上げます。

 

“「アポが取れる着座」とは、お客様が営業に聞きたいこと(確認したいこと)を抱えて座ってもらう。

 

また、そのような心理状態で座って話を聞くから、次回アポが堅くなるのです。

 

これを可能にするのが、着座前の会話と見学客との関係性です。

 

また「アポが取れる着座」に至らなかったケースを分析すると、次回の展示場案内の課題が見えてきます。

 

お客様が着座できず帰られた原因は、

  • こちらが圧倒的に喋っていた。
  • お客様から質問を引き出せなかった。

ケースが圧倒的です。

 

キーワードは「お客様からの質問」です。

 

しかしアポが取れる着座となっても、必ずしもアポが成立するとは限りません。

 

ここが展示場案内の泣き所です。

 

「展示場を中心とした営業の進め方【応用編】」より

 

詰まるところ、どんなに有効と思える着座に持ち込めたとしても、またどんなに場が盛り上がっても、必ずしも即アポが成立するとは限りません。

 

そして多くの営業は日々の展示場案内で、展示場アポを取得しにくくなったことを、痛切に実感しています。

 

唯一アポ取得に苦しんでいないのは、基本性能重視、または設計力に富む人気ビルダーなどでしょう。

 

今日はここからスタートします。

  

 

展示場を中心とした営業の進め方【まとめ編】

展示場案内を制するのは「売らない」こと

  

展示場で「即アポが取れなくなった」と言われ出したのは、1997 年、消費税率が 3% から 5% に変わった頃(実質的には 2000 年前後)まで遡ります。

 

その後もこの傾向は続きます。

それでも現在は、以前に比べて環境的には恵まれています。

 

具体的には長引く低金利傾向など、業界にプラスの要因が働いています——最悪だったリーマンショック後の数年は、銀行融資が普段どおり下りないなど、資金計画的にみても、かなり難しい時期も続きました——。

 

ただ家を建てる人にとってはプラスでも、住宅会社にとって競合環境はますます厳しさを増しています。

言うまでもなく、展示場のアポ率も低下傾向にあるのが、平均的な住宅会社の実情でしょう。

 

では、そんななかにあって営業マンは、一体どういう姿勢で展示場案内に向き合うのが本当なのでしょう。

 

ここで再び出てくるのが売れる営業の鉄則です。

 

そうです。

 

展示場案内を制するのは「売らない」ことに他ありません。

 

ただし、これには条件があります。

 

  1. 展示場案内を実施した件数、即アポが取れた件数、展示場由来で受注成約件数等を自分で記録しておく。
  2. お客様に再訪の了解を得ておく。

 

(1.)については、自分の行動量の記録ですから、Excelなどを使って表化しても結構ですし、面倒なら手帳にメモするだけでも構いません。

おそらく営業なら、皆やっていることです。

 

(2)については、あからさまに「近いうちに訪問します」と言っては、嫌がられます。

そこで「お役立ちレター、またミニかわらばんみたいなものをお届け(または郵送)したいので」ということで、住所と名前だけを貰っておくだけでも構いません。

 

もちろん「広告を打たない、ユーザー限定のオープンハウスにも招待します」なども、アンケートの記入の有効な手段です。

 

この辺りは、各自で工夫してください。

 

ようは、展示場や見学会でアポが取れないからと言って、説得型営業を仕掛けては、営業は失敗です。

これは業種や顧客のタイプを問わず、どの営業にも言えることです。

 

売るプレッシャーから解放されると、人は表情が柔和になる

 

それでは「売らない」と決めると何が起きるか?

 

まず(1)の行動量をいつも記録している人ならすぐ分かることですが、「売らない」と決めてからのほうが、即アポ率が上がります。

 

また多くの場合、トータルの受注成績も改善していきます。

 

どうしてそうなるのでしょう。

 

ひとつは、営業が「売る・アポを取る」プレッシャーから解放されます。

プレッシャーから解放されると、表情が柔和で穏やかになります。

これは、身だしなみや第一印象と重なり、相乗効果を生み出します。

 

また技術的なことで言えば、展示場案内をより楽しめるようになります。

 

つまりアポを取得すべく考えられた案内行程が、家づくりの楽しさ、また興味深さを伝える案内に変わっていきます。

 

あなたがお客様の立場なら、自ずと分かるでしょう。

「売る・アポを取る」プレッシャーで、鬼気迫る形相の営業と、柔和で穏やかな表情をして接する営業がいたら、どちらから話を聞きたいかを。

 

次回の案内について課題を分析しても良いのですが、それよりもむしろ、営業スタイルを根本から見直してみることです。

それが新しいスタイルの——「新しいスタイルの」と言っていますが、売れている営業は、もう何年も前からやっています——展示場営業です。

 

たとえアポが成立しなくても、その場で何らかの好印象を残せた営業には、そのお客様を見込み客にできるチャンスが十分に残されています。

そして、それは次の「レター営業」に繋がっていきます。

 

そしてこのコラム記事も、そろそろ佳境に入らせていただきます。

 

「脱感作」について

 

実は、「売らない」と決めると何が起きるかですが、もうひとつ大事なことを言い忘れるところでした。

それは展示場案内の件数を愚直に伸ばし、それを「淡々と繰り返すこと」です。

 

「淡々と繰り返すこと」と聞いて、もうひとつ思い出すことがあります。

 

それは新人時代の飛び込み訪問です。

 

飛び込み訪問は、展示場案内とは全く別のものと考えられがちですが、両者共々「淡々と繰り返すこと」という意味では似ています。

 

そしてここで言う「淡々と」とは、断りの言葉を受けても心にダメージを受けないことです。

これは医学用語の「脱感作」の状態と、しばしば比較されます。

 

「脱感作」、また「脱感作療法」とは、過敏反応を抑制する方法のひとつで、一般的には抗原を少しずつ投与し、過敏反応を徐々になくしていきます。

 

ただ「脱感作」と同じ状態を、我々がいつも作れるかどうかは分かりません。

自分では「脱感作」ができた思っても、知らぬうちに心にダメージを受けるのが人間の心だからです。

 

でも「脱感作」のスタートラインは、「売らない」営業方法に取り掛かることから始まります。

 

あなたの営業スタイルも「売らない」と決めたときから、必ず何かが変わります。

そして何が変わるかは、前チャプターを再読してください。

 

ひとまず「展示場を中心とした営業の進め方」を、これで一旦終えさせていただきます。

言葉が足らずの面があることを、どうかご容赦ください。

 

そして皆さまのご健闘を祈っております。

  

  

  

記事提供:経営ビジネス相談センター(株) 代表取締役 中川 義崇

 

弊社は、日本で唯一の『営業マンのための人事考課制度』を専門的に指導するアドバイザリー機関です。

営業マンの業績アップを目的とした人事考課制度を構築するための指導、教育・助言を行っています。

また、人事考課制度を戦略的に活用し、高確率で新規顧客を獲得するための方法論を日々研究しています。