専門コラム 第132話 Aランク以外の見込み客にセールスレターを送っても効果が期待できない理由とは?
このコラムでは、前回の記事[1]で「このことについては、記事を改める」とした、見込み客のランクによって営業の売り方が違うことを取り上げてみます。
そもそもの話は、AランクとB、Cランクでは、攻め方が異なると言うことです。
このテーマ、実は基本的なことなので「ああ、このことならもう分かっている」という方もいらっしゃるでしょう。
こういう方は軽く読み流すか、飛ばしてもらって構いません。
ただ、どんなタイプのお客様にも全力投球してしまう方は、その進め方が正しいか一度に見直してほしいのです。
実はいまでこそ偉そうに言っていますが、筆者がこの違いに気付いたのは、住宅営業を始めてから 4 年目のことです。
4 年目と言ったらもう立派な中堅どころです。
そしてきっかけとなったのが、五十棲剛史という若手のコンサルが書いた『営業引力の法則––何がお客さまを引きつけるのか?––』(徳間書店 2003/11/30)という本との出会いです。
実はこの本、初期のコラムで初めて書評のような記事[2]を書いた記念すべき一冊です。
いまとなってはただの古びたビジネス書に過ぎませんが、書かれている内容は、いまも十分通用するものばかりです。
特に前半部分の「追客はするな」のくだりは、いまでも折に触れて目を通します。
そういう意味では前回の続編として、コラムを楽しんでいただけるかもしれません。
[1] 仮タイトル:新しいテクニックやノウハウに出会ったら、まずやってみるべきこと
[2] 専門コラム 第19話 営業引力の法則
Aランク以外の見込み客にセールスレターを送っても効果が期待できない理由とは?
そもそもA、B、Cランクとは?
AランクとB、Cランクでは、攻め方が違うことを説明する前に、A、B、Cランクの定義について簡単に説明しておきます。
A、B、Cランクとは、ハウスメーカー等で支店ごとの営業会議や、見込み客の進捗度合いを図る際のランク付けのことを言います。
そして通常は、成約する見込みが高い順から、A、B、Cとランク付けされるのが一般的です。
たとえば会議でCランク客とは、ホワイトボードに浮上したばかりの見込み客のことを指しますが、Bランクになると折衝活動が順調に進んでいて、問題点もほとんど解消されている状態です。
そしてAランクとなると、文字どおり“あと一押しする”ことで、無事成約まで引っ張っていける状態の見込み客を指します。
大体こんな解釈で間違いないでしょう。
ただCランクはさておき、見込み度の濃いBランクでも、成約まであと一押しのAランクとは歴然とした違いがあります。
それは『営業引力の法則』でも指摘している“ホットな状態か否か”の差です。
ここで言う“ホットな状態”とは、必要な情報がほぼすべて集まり、見込み客の購買意欲が高まっている状態です。
A、B、CではAランクが“ホットな状態”です。場面が“ホットな状態”なら、セールスレターに込められた想いはちゃんと伝わります。
ところが“ホットな状態”でなければ、幾らランク客でもセールスレターは役目を果たせません。
B、Cランクがこれに当たります。特に時期を誤って、早目に送ったレターの場合は尚更です。
B、Cランクの見込み客にセールスレターを送っても効果がない理由は?
ではどうしてB、Cランクの見込み客に、セールスレターを送っても効果がないのでしょう。
ひとつ言えることは、Aランクに達しいなければ、見込み客はまだ、十分に売り込める態勢が整っていないということ。
態勢が整っていない相手に売り急いだところで、営業は煙たがられるだけです。
これは営業の基本の「キ」なので間違わないように。
そして二つ目は、B、Cランクはまだ教育段階の見込み客だからです。
B、CランクはAランクとは違い、まだ必要な情報がすべて顧客のもとに集まっていません。
必要な情報とは「施さなくてはいけない教育」です。
ただ厄介なことに「施さなくてはいけない教育」は、見込み客自身も気付いていないケースが多いのです。
BランクとAランクの違いは、この「施さなくてはいけない教育」が伝わっているか・いないかの違いです。
優秀な営業は「その教育が何かを」的確に察知しています。
前の記事で紹介した「質問力」のくだりが、丁度これに当たります。大切な部分なのでぜひ参考にして下さい。
Aにランクアップした見込み客は、大体すべての情報が集まり、今回家を建てるのに至った動機等が明確になっているものです。
トドメのセールスレターが効果を示すのは––つまり「売り込み」が効くのは––こうした理由が明確になったときです。
注文住宅のお客様の難しさは、プラン折衝に進む段階でまずひと山、最終的に成約までにもうひと山(計ふた山)超えなければいけません。
そして幾多の情報や家を建てる動機というのは、プロが作成した図面を見ることで、次第に明らかになっていきます。
ただひとつ例外があるとすれば、それは一定期間、営業マンのニュースレターで教育課程を卒業した見込み客です。
ニュースレターで管理した見込み客は、プラン折衝に進んでも、他社との相見積もりをするケースはきわめてまれです。
たとえ相見積もりをする場合でも、便宜上そうするのであって、顧客の本命はほぼあなた一本と心に決まっています。
この場合だけは、カタチはCランクでも、中身はAランクと変わりません。
そう考えると、本コラムがニュースレターを推す理由が分かるでしょう。
文章を書くことが苦でなければニュースレターを推したい!
またこれは推測レベルの話ですが、住宅営業はほかのセールスと比べ、顧客への教育は大きな割合を占めるようになると思います。
ないしは、セールスする場面は非常に限定的になっていくと感じます。
筆者が特殊なのかも知れませんが、特にニュースレターを使うようになってから、いわゆるセールス職らしい言葉を発した記憶がほとんどありません。
またサンキューレター以外で、セールスレターを書いて出すこともなくなりましたです。
何しろ、ニュースレターを使うと、セールスレターに頼る必要がなくなります。
これは先にも書いたとおり、顧客があなた特命で支持してくれるからです。
だからと言うわけではありませんが、文章を書くことが苦にならなければ、ニュースレターを使ってみることを勧めます。
ただニュースレターを用いなくても、リストをフォローすることはできますし、能動的な姿勢でセールスに取り組んでいる方の多くは、セールスの新たな側面に光を当てようとしています。
最近上げたコラムにある「質問力」を駆使する『GIVE & TAKE』のキルデアさんも、その好例と言えるでしょう。
皆さまの健闘をお祈り申し上げます。