専門コラム 第104話 お洒落な家、コンセプトが明確な家ほど「集客」がしやすいのはなぜ?
マーケティング活動でいちばんコストが掛かり、且つ難しいと言われること。
それは「集客」です。
大手ハウスメーカーにお勤めの営業マンは、基本的に集客やマーケティングに営業リソースを割かずに済むような、さまざまな分業体制が整っています。
そのため集客やマーケティングは考えずとも、営業活動を進めていけるでしょう。
ところがスモールビジネスの工務店・ハウスビルダーに勤務する営業マンは、真面目に仕事する人ほど、集客という問題にぶつかります。
筆者もハウスメーカー在籍時から集客という言葉には馴染みがありました。
しかし地場工務店に転職した途端、「新規顧客を獲得するには、実際問題どうやればいいの?」という問題にぶつかりました。
スモールビジネスの工務店・ハウスビルダーの経営者の中には、集客という言葉を聞いたことはあってもやり方やコンセプトが分からないと仰る方も珍しくありません。
今回のコラムでは、一般的にコストをあまり掛けず、集客を達成するヒントをお伝えしようと思います。
というのもコロナの影響で、チラシを刷ればお客が集まるとの考えから、安易に集客コストをかける工務店もでていると聞くからです。
その意味で今回の記事は、営業を兼務する経営者の方にも読んでいただきたい内容であります。
それでは進めていきましょう。
お洒落な家、コンセプトが明確な家ほど「集客」がしやすいのはなぜ?
お洒落な家、コンセプトが明確な家ほど実は「集客」がラク
実はタイトルにもあるとおり、世に言うお洒落な家、またコンセプトが明確な家ほど、集客が比較的簡単に行えます。
これとは逆に集客が困難で一般にコストが掛かるのは、どこにもあるような一般的なデザインや性能基準を踏襲している家、これを提供する工務店です。—もちろん個別性はあります—
「普遍性が高いデザインの家のどこが悪いの?」と意見されそうですが、それが悪いとは決して言ってはいません。
ただ単純に考えると分かりますが、一般的なデザインや性能を踏襲している家は、他との差別化の段階で、家のコンセプト設定があまり考えられてはいません。
そのぶん「家のコンセプト決めも曖昧になった」と考えられます。
そして同じ成果を得ようとすると、曖昧になった分だけ、マーケティングコストは余計に掛かると言うわけです。
なおここでいうマーケティングコストとは、平たく言うと広告宣伝費です。
これにプラスして、住宅会社の集客力の突破口となるのが、ファン客や応援してくれるOB客の存在です。
ファン客や応援をくださるOB客は、何もお洒落な家づくりの工務店だけに集まるわけではありません。
しかし、これも一般的に考えると、私たちは平凡な家より他と違う何かがある家に惹かれます。
それゆえにお洒落な家、コンセプトが明確な家こそ、多少穿った見方かもしれませんが、特定のファンがつきやすいのはごく自然なことです。
お洒落な家をつくり、ファン客を大事にする工務店
お洒落な家をつくって、尚且つファン客を大事にする工務店は限られますが、確かに存在します。
例として、ある地方の工務店をご紹介します。
この工務店、あるメーカーの事業所だった部署が母体となっており、満を持するかたちで工務店として独立しました。
この工務店のつくる家は地元でも評判で、当時の住宅雑誌等にも頻繁に取材を受けていました。
具体的には、社長の作るプランが秀逸であり、家の設備や建材類は原則として既成の製品を一切使わないことをコンセプトにしていました。
また、社長を始めとする全スタッフが、OB客やファンの方を「ファミリー」と呼んでいいほど、とても大切にします。
同時に社長は社員教育に非常に厳しい方で、営業がお客様に提示する資料は、必ず社長のシビアなチェックが入ります。
そして、社長のチェックが入った提案資料は、誰の目から見ても完璧、なおかつ、見た目が「お洒落」です。
そんな資料の中でもっとも印象的でもあり、新規開拓の場面でいちばん活用されるツールは工務店のリーフレットです。
リーフレットの出来はこの工務店がつくる家と同じように、とにかくお洒落なつくりです。
しかも開くとA3で見られるリーフレットが、最終的に小さく畳んで提示できます。
訪問時に手渡されてもあまり威圧感がありません。
また文章も驚くほどしっかりした内容で、気密や断熱仕様のことも触れていました。
またこの工務店の家づくりのコンセプトについても、丁寧に書かれています。
まさに「どんな家なの?」と興味が湧いてくる構成です。
もちろん彼らが作り出すこれら販促ツールは、全て営業スタッフのオリジナルです。
経費を除くと全て実質無料です。
このほかにも、新たな展示場のオープンまでには、社長直々に「家づくりセミナー」が数度開催されました。
観客動員も外部に委託せず実質無料でやり切った背景には、スタッフの努力はもちろんのこと、OB客やファンの方々の応援・紹介があったことは言うまでもありません。
また、移動展示場のオープンによって、数としては記録的と言える、多くの新規客数を獲得しました。
もちろんオープン時の告知では、一般的なメディア広告を使いましたが、そこまでの半年間、広告の類は一切使っていません。
なお、広告の打ち合わせでは20代前半の若い営業スタッフが、広告の専門家に堂々と校正の注文を出します。
つまり、どのようなチラシが自社に最適かが分かっているということです。
これも日頃からの社長の教育が、行き渡っている証拠です。
住宅はコンセプトがはっきりしている方が売りやすい
この工務店から学べることは、大きく2つあります。
まずメディアの広告を無闇に使わないということです。
「家づくりセミナー」は、コロナ禍でもよく各地で行われたものです。
また完成現場が見せられない時期、「家づくりセミナー」は有効な集客手段として機能していたと思います。
ただしメディア広告を使うかどうかは、悩むところではないでしょうか。
しかし見せられる完成現場が控えているのなら、悩むことはありません。
つまり特別な事情が無ければ、わざわざ広告代理店を使ってメディア広告を打つのは控えるべきかもしれません。
その代わり、イベントの告知は、自社の手作りや人海戦術を活用します。
もちろんイベントの告知力は、自社が所有するリストの数と濃さに比例します。
またこの工務店のように、OB客やファンの方々の応援・紹介の後押しも欠かせません。
さらに今なら、ウェブサイトやSNSもフルに活用できます。
ちなみにこの工務店の「家づくりセミナー」はTOTOのショールーム、また駅ビルや公的施設の会場をお借りして、全部で 4、5 回は開催されたと思います。
結果は、各会場とも盛況のうち終わったと記憶しています。
そして数ヶ月後に控えた新たな展示場オープンの準備に邁進しました。
2つ目は、以上のことが可能なのは、お洒落であれ何であれ、住宅のコンセプトがはっきりしていること。
コンセプトがはっきりしているから、OB客やファンの方々の応援が得やすいのであり、営業も売る理屈が組み立てやすくなるのです。
また売る理屈が組み立てやすい工務店は、広告の力をそれほど必要とはしません。
それでも必要且つ十分な集客ができるのです(また余計なお客まで、引っ張り込まないようになる)。
この工務店のやり方や考え方には、多くの学びがあります。
また機会をみて、皆さんと情報をシェアできればと考えています。