専門コラム 第94話 売り込まなくても「トップ営業」になれる! ニュースレターの新たな使い方とは?
最近手にとった営業本でおすすめの一冊と言ったら、筆者は間違いなく山下義弘氏著の『売り込まなくても「トップ営業」になれる!』(大和出版 2008/9/1)[1]を上げます。
この本は、第93話 『サンキューレター「感謝の手紙を書く意味」を改めて考えてみよう』でご紹介したビリーさん(Billy Magazine)こと、山下義弘氏のデビュー作です。
ちなみに、ビリーさんとは、山下義弘氏のニックネームのようです。
山下氏のユニークなところは、プレッシャー度ナンバーワンの保険営業にあって、一度も保険(彼の場合は損害保険)の話を持ち出さず契約を呼び込んでしまう点です。
そして、その独自の営業方法は、同業他社はもちろん、異業種の営業にも使えるようです。
筆者は新築物件より、むしろリフォーム・リノベーションの市場で再現性があるのでは思っています。
それはさておき、このコラムで取り上げたかったことは、アフターフォローのステージで行うニュースレターの使い方です。
実は保険営業でも、営業マンによっては、ニュースレターを効果的に使っている方が多く、山下ビリーさんもその一人なのです。
今回はニュースレターに焦点を当てて、アフターフォローのステージ(本書では、トリプルA[2]の「サード・ステージ」と言っています)について見ていきましょう。
[1] 参考サイト:https://www.amazon.co.jp/売り込まなくても「トップ営業」になれる-―紹介・口コミだけで10年連続No-1-山下-義弘/dp/4804717250
[2] トリプルAとは山下ビリー氏が考案した営業システムの別称。
トリプルAはその名のとおりファーストステージ(市場作り)、セカンドステージ(保険契約)、サードステージ(アフター)の「3つのステージ」から構成され、ファーストステージが全体の70%の重要度を占める。
売り込まなくても「トップ営業」になれる!ニュースレターの新たな使い方とは?
逆転劇の秘密は「インタビュー」で蓄積されたノウハウや情報にあった
ここでニュースレターについて話す前に、山下ビリーさんがやっている営業方法(トリプルA)の触り部分を簡単に説明しましょう。
山下ビリーさんは、営業でいうところの「自分の市場」を、偶然のきっかけで作ってしまいました。
そして「自分の市場」を得たことで、クビ寸前の状態から初年度で契約件数 800 件、売上 4700 万円、その後も好調は継続し、3年目で売上 1 億円を達成。そして結果的に 10 年連続でトップセールスの地位を獲得します。
クビ寸前の山下ビリーさんを 10 年連続トップセールスに地位に押し上げたのは、保険の見込み客をたくさん知っていそうな友人・知人、また経営者や士業の方を中心に「声がけ」をし、その方から紹介された方(見込み客)に「インタビュー」を実施したからです。
ちなみに、ビリーさんの場合は「どうやって営業で成功したのか」「何が切っ掛けとなり成功できたのか」を中心にインタビューしたようです。
会う人の数が増えてくると、蓄積された「インタビュー」から、貴重なノウハウや情報が増えていきます。
このノウハウや情報を「インタビュー」の際に他の見込み客と共有しますが、するとここまで全く保険の話を伏せていたビリーさんのもとに、保険の紹介の話が自然発生します。
そして、あとは保険の契約をするだけです。
以上が、ビリーさんが構築した「自分の市場」の概要です。
なお、仕組みの全体像に興味を持たれた方は、本書を手にとって読んでみることをお薦めします。
繰り返しになりますが、山下ビリーさんは、契約に至る過程でまったく保険の話をしていません。
実に見事なセールスの仕組みです。
読まれるニュースレターとは何だろう?
では本題のニュースレターに進んで行きます。
山下ビリーさんが考案したトリプルAでニュースレターは、アフターフォローに当たるサード・ステージで登場します。
本書ではそれほどスペースを割いてはいませんが、ビリーさんの有料セミナーでは、相当力を入れてニュースレターの解説をしているような気がします。
これは本書に掲載された、会員様のニュースレターの出来を見ると分かります。
とくに評判が良かったと言われた対談形式のコンテンツは、筆者から見ても大変秀逸な出来映えです。
もちろん、隣のページに載せた自己開示を中心としたニュースレターだってなかなかなものです。
筆者が考えるにトリプルAのニュースレターは、さきほどの「インタビュー」で得られたネタを、レターに置き換えて表現したものでしょう。
やはりトリプルAの見込み客が求めているのは、「インタビュー」で共有される貴重なネタなのです。
それをニュースレターで発信したら、見込み客は黙っていても目を通したくなるはず。
ニュースレターの最低限のお約束は、読者に売り込みと感じさせる内容を載せないことです。
ただ、もう一歩進んで「どういうネタなら読者が読みたくなるだろう」と考えておくことは重要です。
アフターフォロー用のニュースレターについて考えさせられたこと
もう一つ、トリプルAのニュースレターで考えされたことがあります。
それはアフターフォロー用のニュースレターが、私たちの業界にも必要なのではということです。
もちろん、やっているところもあるでしょう。
しかし筆者の予測では、契約後もニュースレターを送っている営業マンや会社はきっと少ないはずです。
もちろんニュースレターを送るだけが、OB客との関係を良くするものではありません。
またこのご時世では難しいかもしれませんが、OB客との「集い」や「イベント」などを定期的に開催することも一つの方法です。
しかし、そんなことより経済的負担も少なくて済むのは、決められたアフター工事にすぐ出向き、OB客とのコミュニケーションを、ニュースレターを使って深めることです。
「集い」「イベント」の類は、余裕があればやれば良いのです。
私たちの業界はともすると、大事にしなければいけないOB客との繋がりを忘れてしまいがちです。
保険業界の営業マンが届けるニュースレターから、そんなことを考えさせられました。