専門コラム 第93話 サンキューレター「感謝の手紙を書く意味」を改めて考えてみよう
最近、新たなビジネス書(営業本)を手に取り、何冊か読んでみました。
近頃のトップセールスマンが書いた営業本には、ある共通点がうかがえます。それは、彼らの多くが非常に筆まめだということです。
今回、私が手に取った書籍は、保険営業の凄腕が書いたものばかりです。
おそらく、たいていの方は、保険営業の凄腕と聞くと、「どちらかと言えば手紙など書かず、ひたすらお客様にアプローチする」という印象をお持ちではないでしょうか?
ずいぶん前に読んだフランク・ベドガーやトニー・ゴードンも、週にどれだけアポを詰め込むかといった、ひたすら活動量を増やすことに懸命だったと記憶しています。
また、当然ながら、顧客に対する書簡についての記載はなかったと記憶しています。
しかし、筆者が手にしたジャパニーズの猛者たち[1]は、一様にサンキューレター、お客様宛の感謝の手紙をマメに書き、そしてこれをお客様と接点があった当日中に(でなければ、遅くとも3日以内に)出すことを自分に課しています。
筆者も営業マン時代は、かなり筆まめなほうでしたが、そんな自分から見ても驚くほど、彼らはとにかく感謝の気持ちをハガキ(または名刺)に綴ります。
そういう意味で、彼らの手記から学ぶ点は非常に多く、かつ大いに楽しめました。
今回は久々にサンキューレターにテーマを絞り、営業マンが感謝の手紙を書く意味について考えてみましょう。
[1] 参考サイト: [山下ビリーの公式サイト−Billy Magazine−](https://www.yamashita-billy.com)
参考サイト: [YUJI OTSUBO](http://大坪勇二.com/)
サンキューレター「感謝の手紙を書く意味」を改めて考えてみよう
サンキューレターは一度出せば終わりではありません
そもそもお客様への感謝の手紙、サンキューレターの役割は何だと思いますか?
感謝の手紙、サンキューレターは言葉で伝えにくい「ありがとう」という思いを、文字に換えて伝えるものです。
大袈裟にいえば、サンキューレターは楽曲の歌詞にも相当するような、営業にとって極めて大事なものと筆者は捉えています。
このコラムを継続して読んで下さっている方は、サンキューレターを「住宅展示場など、顧客と最初に接点があった際に、すぐに出す手紙(ハガキ)」と認識しているでしょう。
これは、間違いではありません。
頻繁に出すことが想定されるレターですから、便箋による書簡ではやや重すぎます。
形式的には、ハガキと捉えて間違いありません。
出す場面についても、概ねこれで良いでしょう。
ただ新人の方は、レターを出すタイミングが今ひとつ分からないという面もあろうかと思います。
そのため、このコラムでは「展示場や現場見学会に来場されたら即日」サンキューレターを出すように最低限、推奨しています。
実際にサンキューレターを出すと、お客様の反応が変わってくるのが分かります。
そしてそれを感じ取ったら、今度は口頭では伝えにくい営業マンの感謝の気持ちを、どのタイミングで伝えたら良いか、またいつなら2通目、3通目のレターを出して良いかを探ります。
みんなそうやって、次のレターを出すタイミングを覚えていきます。
ですから、サンキューレターは一度出せば終わりではありません。
ここで取り上げた保険営業の達人らも、自らの営業スタイルに合わせ、サンキューレターの出すタイミングを関わる事案によって変化させています。
つまり、お客様の気持ちの変化を感じ取り、その都度出すタイミングが変わると言うことです。
なおサンキューレターには、引っ込み思案な営業がアポ電を入れる際、事前に投函して思いを伝える役割もあります。
これもサンキューレターのひとつに加えられるでしょう。
サンキューレターが 1 通で終わるなら、はじめから出さない方がマシ?
余談になりますが、特に注文住宅の営業では、顧客と接する期間が 1 年以上に及ぶことが少なくありません。
そのため顧客につき、最初のサンキューレターで終わるケースの方が、不思議というか、にわかには有り得ないことです。
筆者の経験では、サンキューレターだけで少なくとも 5 通は出していたと思います。
仮に住宅営業でサンキューレターが 1 通で終わるなら、かえって「手紙を出さないスタイル」を保持した方が良いかもしれません。
ただ私たちの業界は、平然とお客様に紹介を依頼する業界です。
しかし営業に紹介を望む前に、お客様に関わった他部門の社員も、感謝の気持ちを表す手紙を 1 通でも書くべきではないでしょうか(これは筆者が勝手に思っていることですが…)。
サンキューレターは「〇〇を狙って」書くものではありません。
しかし設計や現場監督、インテリアコーディネーターや事務の女性までが、物件のお引渡しまでに、それぞれの思いを手紙に綴って送ったら、よほどの問題がないかぎり、紹介を下さる土壌ができてくるのではないでしょうか。
それを考えたら、営業が「手紙を出さないスタイル」を堅持するなど、とても考えられません。
保険営業でも紹介の多くは、中だってくれた方への感謝の手紙が、次の紹介を生んでいます。
営業たるもの、サンキューレターを軽く考えてはいけません。
サンキューレターを揶揄する方が気付かない事実
営業マンとして手紙を書くことを「営業として腰が引けている」と考える方もいるようです。
ただ「腰が引けている」ことを恥ずかしいと思う必要はどこにもありません。
かえってまともな人間こそ、初めての営業活動を「怖い」と感じたり、「断られたらどうしよう」とビクビクするのです。
そしてまともな人間は、文字の力を使い、拒絶の恐怖を和らげるのです(もちろん、その必要がないスーパー営業マンもいます)。
これを何度も繰り返すことで、やがて営業に対する耐性が備わってきます。
またサンキューレターは「書くのが面倒」「今どき手書きのハガキはいくら何でも古すぎる…」と唱える方もいるようです。
しかし、サンキューレターをもらった本人の身になれば、肉筆でお礼のハガキをいただくことを、悪く受け取る方は少ないのではと、筆者はかねてから実感しています。
特に年上の方にサンキューレターを出すと「わざわざ手書きでお手紙をいただいた」「手紙なんて、いまどき珍しい!」と、一様に良い印象を残してくれます。
またそれがきっかけで、レターがあなたと顧客との関係を、一層強固なものにする可能性もあります。
時代がデジタルに傾くと、その反動から手紙などのヒューマンタッチな道具が、人々に求められるのです。
少なくとも日本において、サンキューレターは保険業界のトップランナーにも使われ、現在も顧客との距離を縮めるのに役立っています。