専門コラム 第90話 ランチェスターの法則とニュースレター戦略【後編】
筆者がランチェスターの法則を知ったのは、今から二十年ほど前になります。
ランチェスターの他にも様々なマーケティング理論を面白いと感じ、まさにビジネス書を浴びるように読んでいました。
ランチェスターの法則で気付いたことは、「戦場をずらすこと」で上位に食い込める可能性があるという事。
また、不安定になりがちな受注実績が、ある程度読めるようになるという事です。
これは大きな気付きとして、筆者の心に焼きついています。
【後編】ではその辺りのことを、自身の体験も交えて解説しています。
ランチェスターの法則とニュースレター戦略【後編】
理論より差し当たっての「見込み客の確保」が営業には重要!
ランチェスターの法則を知った当時の筆者は、少なくともランチェスターの第1法則を使えば、その分野で 1 位になれるかも知れないと考えていました。
そして、以前から気になっていたニュースレターを、実行に移すことに決めました。
ただ、実行に移すことに決めたのは、特段、ランチェスターの法則が素晴らしい理論と思ったからではありません。
もちろんランチェスターの法則が、大変示唆に溢れた興味深い理論であることは承知していました。
しかし、ニュースレターを営業活動に生かすことを思いついたのは、何としても営業成績を飛躍的に高めたいと思ったからです。
営業にとって大事なことは法則や理論ではなく、差し当たっての見込み客の確保にあります。
学者なら理論体系について考えることでお金になりますが、営業は重点見込み客を探さなければ仕事になりません。
そのため、ニュースレターの威力の本当のところを、実際にこの手で試してみたくなったのです。
そしてニュースレターを実際に使ってみて、初めて「戦場をずらすことの効果」を実感し、こんなにも楽に折衝が進むのかと驚かされました。
考えてばかりではダメです。試せることは実行に移す。これが大切なのです。
「根性営業の世界」で生きてきた方の中にも『ニュースレターの使い手』は存在する
ニュースレターの効果は予想外に大きく、ここで社名は伏せますが、最近では大手がミート戦略[1]により、弱者との同質化を図っている例も見受けられます。
またニュースレターやサンキューレターについて言えば、内向的な性格の方ばかりに向くのではなく、典型的な営業マンタイプの方にも向いています。
筆者の知人に生損保の代理店業務をされている方がいます。
この方は年代的にも「根性営業の世界」でどっぷり浸かって生きていた方です。
そんな彼の使うサンキューレターは、自作のちぎり絵で飾ったオリジナルな手書きのハガキです。
また、ニュースレターは月例物と戦略的なものを、場面に応じて使い分けておられます。
もちろん営業成績は抜群で、保険販売では毎年のように全国表彰を受けておられました。
そんな快活な営業マンタイプの方でも、一方で繊細かつ大胆な文章の書き手でもあるのです。
このことは覚えておくと良いと思います。
レター戦略は、実はまだブルーオーシャン
ランチェスターの法則に話を戻すと、どんなに大手がミート戦略を駆使してきたところで、 少なくとも当分の間はレター戦略が大手に乗っ取られる心配は、ないと思われます。
なぜなら、文章を書くことができる営業マンは、実際には多くないようだからです。
言葉を変えるなら、レター戦略で戦う気があれば、勝てる可能性は十分残されているということです。
特に新型コロナですが、当分の間、収束することはないと思われます。
したがって積極的な文章の書き手は、これからますます活躍の場が残されているでしょう。
つまりニュースレター戦略は、弱者の戦場でもまだブルーオーシャンだということです。
ライバル(大手)にとっては、営業弱者に「最もやってもらいたくはない戦略のひとつ」がレター戦略なのかも知れません。
[1] 「ミート戦略」とはランチェスターの法則では強者の戦略のひとつ。
弱者が戦場をずらした場合でも、強者はこれを真似て弱者と同じ戦場で戦うこと。この例では、ニュースレター戦略を大手でも採用するということ。