専門コラム 第67話 なぜか住宅営業は煙たがられる?営業は技術的な情報をウェブに流さない方が良い
筆者は住宅会社での営業を経験していますが、住宅営業という仕事は、自分が関わった仕事の中でも、やりがいを持って取り組めた仕事の一つです。
もちろん業界の闇のようなことも全くないわけではありませので、100%満足しているわけではありません。
それでも学べることは実に多く、住宅を通じて多くの経験をできたことに後悔はしていません。
またこうして駆け出し営業マンに向けて、現在コラム記事を書いていることも、住宅営業を経験している故の賜物です。
ただその一方で、なぜか住宅営業は各方面から煙たがられる職業であるのも事実です。今回はそのことについて、記事を書いてみます。
なぜか住宅営業は煙たがられる?営業は技術的な情報をウェブに流さない方が良い
一体いつの時代の話と、建築士から呆れられる
営業も人間ですから間違ったことを言うことがあります。
その場合の対処方として、間違ったことを謝罪し、誤って出た情報は訂正する。よほど酷い間違いでなければ、これで大抵は許していただけるでしょう。
そんな中、あるブログ記事に出会いました。
そのブログ記事は、『元住宅営業マンが語る「住宅会社の見分け方」の様なサイトが、何やらいい加減な情報発信をしていることに甚く迷惑しているのだ』、と始まります。
このブログの運営者は某建築士の方。
また、他の記事を含めて文面から察するに、この建築士の方が営業という職業全般に対して“相当鼻持ちならない”気持ちであることが伝わってきます(怒りの矛先は建材メーカーの営業にも及んでいます)。
ブログの内容は高性能住宅について、非常に素晴らしいことが書かれています。
それだけに元住宅営業マンに対する怒りや批判は非常に残念です。
さらにブログを読み進めると、記事に登場する元住宅営業マンは、構造、断熱、気密に関して明らかに間違ったことを語ります。
そのとどめとして、C値は「東北エリアは2、温暖地は5が目安」と締めます。
そして、一体いつの時代の話をしているのかと、この建築士さんから呆れられる始末。
某建築士さんはYouTubeチャンネルも持っており、これを拝聴すると、さぞ穏やかな印象の方と思いました。しかしこの記事の文面からは、相当お怒りの事とうかがえます。
C値が2とか5ということは有り得ない
C値が2とか5というのは次世代省エネ基準で出てきた数値と記憶しますが、筆者が営業をしていた1990年代から2000年代初頭でも、営業の間では24時間換気の関係で、C値は最低でも1.0以下との認識です。
なので、元宅営業マンの知ったかぶりな発言に、某建築士さんがお怒りなのは、御もっともでしょう。
当時の競合関係を見ても、地元の工務店やビルダーの多くは、最低でもC値は1.0以下、大方は20年前でも0.6近辺(目標値)というのが一般的です。
それに比べ、C値が2とか5というのは、大手ハウスメーカーでしか通用しないもの。
そのぐらい大手メーカーの相当隙間面積に対する認識は、スウェーデンハウスを除くと当時から大甘でした。
(そしてどういう訳か、平成25年4月1日施行の改正省エネ基準で、気密に関する基準や文字は削除されます!)。
たしかに営業は、口八丁でいい加減な人間ばかりに映るかもしれません。
しかし少なくとも、当時の次世代省エネルギー基準のII地域で、C値が2という感覚は、営業にいた私たちでも決して無いこと。
またそんな呑気なことでは、住宅の性能に先鋭的な工務店に、軽くひっくり返されてしまいますし、それが当時の寒冷地の営業現場です。
営業は技術的な情報をウェブに流さないのがいちばん
またこうも考えられるでしょう。
元住宅営業マンというのは見せかけで、実は外部のライターにSEO記事を書かせていただけというもの。
つまりC値が2とか5との発信は元住宅営業マンではなく、住宅業界の経験がないウェブライターだったというのが筆者の見立てです。
いくら不勉強な営業でも住宅営業である以上、常時換気を取り付けた建物で、最低でもC値が1を切ることが当たり前なのは分かっているはず。
むしろ外部ライターなら、こういったもっともらしい記事を書きそうではありませんか。
結局、色んな可能性が考えられます。
ただ少なくとも、このブログの建築士さんは、我々営業によって、訳の分からない情報(筆者もそう思います)がネット上に拡散されることを住宅の専門家として本気で怒っています。
もちろんそのことで、営業が必要以上に卑屈にならなくてもいいことは分かります。
ただあえて言うなら、営業は今後、技術的な情報についてウェブに流さない方が良いでしょう。
またそんなことで心動かれては、営業は本来の仕事に集中できません。
これは何も建築の勉強を放棄しようということではありません。
ただ調べもせず、不確かな情報をウェブに流す必要はありません。
営業の場合、どうしても発信したいのならニュースレターに書き、顧客に届ければ十分です。
ハードコピーのニュースレターなら、余計な発信で技術系の仲間や建築士に迷惑を及ぼしませんよね。
筆者もできる限り、控えていきたいと考えています。
今回、コラムの新しい切り口として、かねてより懸案だった高性能住宅について色々情報を当たっていましたが、住宅のC値について、このようなことを考えさせられた一抹でした。