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専門コラム 第18話 独自の提案で結果を出し、自分の価値の高さを認めてもらう。

妥協は許されないという覚悟があってこその闘争心

勝負ごとに闘争心は欠かせないものでしょう。

一般的にはスポーツの世界で闘争心を鼓舞するような叱咤激励をよく聞きます。

プロ野球で「闘将」と呼ばれたのが故星野仙一。

現役、監督時代を通じて武勇伝には事欠きませんが、こんな言葉も残しています。

迷ったら前へ。苦しかったら前へ。つらかったら前へ。


星野仙一

後悔するのはその後。ずっと後でいい。

星野仙一

「バスケットバールの神様」の異名をとったマイケル・ジョーダンはこう言っています。

10本連続でシュートを外しても僕はためらわない。

マイケル・ジョーダン

次の1本が成功すれば、100本連続の成功の始まりかもしれない。

闘争心とは積極的に闘おうとする強い気持ちであり、絶対に勝つ、絶対に負けないという究極の負けず嫌いという一面はもちろんあるのですが、2人の言葉から感じるのは、続けることの重要性です。

それもそのはずです。

練習においても闘争心をもって挑まなければ、限られた試合時間で闘争心あふれるプレーを見せようと思っても無理なことだからです。

闘争心はスポーツや物理的な闘いの場だけで必要なものとは限りません。

芸術の世界でも闘争心を求められることを示すのが、フランスの詩人、シャルル・ボードレールの次の言葉です。

美の探求とは、そこで打ち負かされるに先立って芸術家が恐怖の叫びをあげる、一つの決闘である。

シャルル・ボードレール

闘争心を持つということは、ときに命懸けの取り組みであるということです。

妥協は許されないものであることを自覚していなければ、闘争心などとても持ち続けられないものなのでしょう。

闘争心を持つということは、ときに命懸けの取り組みであるということです。

妥協は許されないものであることを自覚していなければ、闘争心などとても持ち続けられないものなのでしょう。

ライバルに差をつける――新聞記者の世界

闘争心が、絶対負けたくない、負けられないという強い気持ちであることは間違いありません。

ビジネスにおいては、狙ったお客様を他社に先んじて、あるいは他社との競合の中で勝ち取ることにつながるでしょう。

そのためには、他者と同じことをしていては勝てないことは、自明の理でしょう。

どこで差別化を図るか。

その方法は業界によってさまざまあると思います。

知人の新聞記者から聞いた話を紹介しましょう。

事件記者は特ダネ競争に明け暮れています。

毎日、朝刊と夕刊の2回試験があるようなものですから、一瞬たりとも手が抜けません。

この世界も、闘争心がなえると、たちまち「使えないやつ」の烙印を押されて、異動が待っています。

刑事の自宅を夜や早朝に訪ねる夜討ち朝駆けは、事件記者の基本です。

しかし、刑事には公務員としての守秘義務があるうえ、捜査情報が漏れることによって捜査に支障をきたす恐れがあるため、そう簡単にしゃべってくれません。

初めて訪れた場合など、何時間も待ったあげく、門前払いされることも再々です。

そこでどうするか。

とにかく自分を気に入ってもらわなければなりません。

そのためにはまず、けんもほろろな対応をされても通い続けることです。

刑事も捜査に入ると不規則な生活が続きます。

それだけに、睡眠時間も削って愚直に通い続ける記者に、次第に「ご苦労さんやな」という気持ちが湧いてくるのです。

すると、最初は無言だった刑事もあいさつ程度の言葉を返してくれるようになります。

「何もないよ」という一言でも、一歩前進です。

それが立ち話になり、最寄り駅から自宅までの間の会話になり、そして玄関先であっても自宅に入れてもらえるようになったら、大きな進展です。

一方で、通い続ける間に、刑事の家庭環境、特に奥さんの年齢や子どもの学年、誕生日などを調べ出して、節目の日にケーキや果物、中学に進学する子どものために英和辞典などを贈ることもあります。

まさか路上で手渡すわけにはいきませんから、自宅に入れてもらえるようになってからの話ですが。

刑事は近所の目をとても気にします。

ですから、夜回り車は絶対自宅近くには止めません。最低でも100メートル以上離れた人目に付きにくいところにエンジンを切って待機させ、自分はどんなに寒い日でも、帰ってくる刑事を見逃さない場所に立って、じっと待ち続けるのです。

そういう姿勢も、刑事の心を開かせる一助になります。

とはいえ、こんなことは大抵の記者はやっています。

そこから一歩抜け出せるかが勝負です。

一つの方法がスジ読みです。

スジ読みとは得られた情報から事件の見通しを立て、犯人に迫る試みです。

スジ読みしない捜査はありません。

記者も刑事と同じようにスジ読みをして刑事にぶつけるのです。

「何かありませんか」といった御用聞きの姿勢では、とても相手に食い込めません。

もちろん、記者の情報量は刑事が持っているそれよりはるかに少なく、とんちんかんなスジ読みになることはよくあります。

それでも一生懸命考えて疑問点などをぶつけていくと、「なかなか考えているな」と、評価されるポイントになるのです。

事件は非日常の世界ですから、常識的に考えるだけでは的をはずすこともあります。

スジ読みはセンスと経験が問われます。

それだけに、自分をアピールするかっこうの材料になるのです。

独創性が差をつける

営業の世界で言えば、新聞記者のスジ読みに近いのがお客様への提案ではないでしょうか。

どこの会社にも、一定の営業マニュアルがあると思います。

しかし、ファミレスでマニュアル通りの機械的な返答をしてもらっても何ら響いてこないように、型にはまった提案はお客様の心を開かせることはないでしょう。

ですから、そこに自分独自の視点や要素を加味することが必要になってくると思います。

もちろん、それが押し付けになってはいけません。

あくまでお客様の意向に沿ったもので、できたらお客様に、「あ、そんな手もあるのだ」と新しい気づきを得てもらえるようなものが望ましいでしょう。

新聞記者の世界では、特ダネが紙面を飾ったら、次の朝刊または夕刊までの半日間だけは「あんたが大将」なのです。

自分の価値が社内に認められ、満足感と優越感に浸れます。

しかし、あくまで半日間です。

抜かれたライバル社の記者は死に物狂いで失点を取り返そうとしますから、手を抜いてなどいられません。

ただ、自分なりの成功の法則を築ければ、その応用を駆使することで、リードは保てる確率が高くなります。

つまりは、独創性です。

そういうと、自分には独創的な考えなど浮かばないなどと悲観的になる人がいるかもしれません。

でも、ドイツの哲学者で古典文献学者のニーチェはこう言っています。

独創的――何か新しいものを初めて観察することではなく、古いもの、古くから知られていたもの、あるいは、誰の目にも触れていたが見逃されていたものを新しいもののように観察することが、真の独創的な頭脳の証拠である。

ニーチェ

視点を変えるだけで自分だけのものを生み出せる可能性はあるのです。

                               

あなたは、独自の提案で結果を出し、自分の価値の高さを認めてもらいたくはありませんか?